先日大阪のSさんからいきなり吉田隆一さんの音源をいただいた(たまたま隣に座ってライヴを観ていたのだ)。これが大阪T-BONEでのバリトンサックス完全ソロ(2018/9/23)。勝手に売りさえしなければ良いというご本人のお墨付き音源である。ありがとうございます。
Ryuichi Yoshida 吉田隆一 (bs)
そんなわけで3度繰り返し聴いてみた。なるほど。って、全然なるほどではない。これは何をやっているのだろうという3曲。
1曲目。意外にも音の流れがなめらかである(わたしの印象はもっとゴツゴツした感じ)。それだけに低音に下りてきたときはうまく着地したかのような快感がある。やがて倍音がゆっくりと様々な形であらわれる。裏声のような高音が出て消えて、同時に鼓膜が痒くなるような低音、間をうねる中音。3つの山だけでもない。耳をどれに貼りつければ良いのか、全部を同時に追いかけてゆくとこちらが周波数の間であちらこちらに漂うようだ。このゆったりとしたペースが他の楽器との共演時にも出てきたなら、また面白い展開になるかもしれないなと思った。
2曲目。タンポでリズムを取り始め、一転して小刻みな音塊が次々に飛び出てくる。タンギングとタンポの運指と息の吹き込みと声の吹き込みがちょっとずれたりシンクロしたりして、複雑な流れが出来ている。なんだか吉田氏が叫びながら脚だけで奇妙なダンスを踊っているようである。(もの凄くエネルギーを消費するのではないのだろうか。)
3曲目。ゆったりと始まるのだが、ずいぶんと強く息を吹き込んでいる。こうなると管は変に共鳴するのだろうか。それとも口蓋から喉までの空間も楽器の一部として使っているということなのか。まるで残響やうなりやハウリングのような音が付いてきて、それと声とが重なって、世界の終わりみたいである。バリトンのアイラーか。ひとしきりの叫びが沈静化し、ヴィブラートとともに、低音で「We Shall Overcome」のメロディとなった。
なんでも対バンのアクセル・ドゥナーも、吉田氏が吹いているところを凝視していたらしい。
●吉田隆一
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
藤井郷子オーケストラ東京@新宿ピットイン(2018年)
MoGoToYoYo@新宿ピットイン(2017年)
秘宝感とblacksheep@新宿ピットイン(2012年)
『blacksheep 2』(2011年)
吉田隆一+石田幹雄『霞』(2009年)