Sightsong

自縄自縛日記

トリスタン・ホンジンガー『From the Broken World』、『Sketches of Probability』

2015-01-09 00:28:41 | アヴァンギャルド・ジャズ

トリスタン・ホンジンガーの音楽にはえも言われぬ魅力があって、聴く人によってその理由は違うのだと思うのだが、それはたとえば、チェロの音のなめらかさや深さであったり、幽玄さであったり、手作り感であったり、遊び心や祝祭感覚であったりに違いない。最大の魅力はそれらの混在と混沌かもしれない。そんなわけで、次の2枚をときどき取り出して聴いている。

■ 『From the Broken World』(東芝EMI、1991年)

Tristan Honsinger (cello)
渋谷毅 (p, org)
近藤等則 (el-tp)

浅川マキがプロデュースした「ゼロアワー」シリーズ3枚のうち1枚(他には、宮澤昭『野百合』という大傑作もある)。

近藤等則は「飛び入り」であって、主役はソロと渋谷毅とのデュオである。しかも、弦の多重録音を行っている。

これは、ホンジンガーの魅力のうち「幽玄」か。実ははじめて聴いたとき、つかみどころが無くて、何が面白いのかよくわからなかった。実際、これはそのつかみどころのない音楽でもあって、聴くほどに味わいが増してくる。渋谷さんのピアノやオルガンも「幽玄」である。「Jazz Life」誌の1995年9月号(浅川マキ特集号)には、ホンジンガーへのインタビューもあり、まさに次のようなやり取りがある。しかし、わたしなどにはその「瞬間」がわからない。

「―――ところで、『From the Broken World』では、渋谷毅さんとも共演されていますが、どうでしたか?
TH: 彼のピアノは、まるで幽霊のようだった。そこにあるようで、ないようで、現れたと思うと消えたり、不思議な音なんだ。だけど、私はこのセッションの中で、1度だけ彼を捕まえた瞬間があったんだ(笑)。」

■ 『Sketches of Probability』(AIAI、1996年)

Katie Duck (dance, voice)
Rick Parets (actor, voice)
Peggy Larson (voice)
Sean Bergin (as, fl, voice)
Tobias Delius (ts, voice)
Augusto Forti (cl, voice)
Tristan Honsinger (cello, voice)
Joe Williamson (b)
Alan 'Gunga' Purves (perc, voice)

こちらは、室内楽と演劇と祝祭、その混沌である。

「ボッティチェリを探しているんだ!」「おお、かれはもう死んでいるよ!」などといった戯言と浮かれ話、歌、演奏。人数が少なくてもホンジンガーを捕捉できないが、大人数でのお祭りでもやはり捕捉は無理だ。奇妙な躁状態に連れていかれる面白さがある。


トリスタン・ホンジンガー(2010年) Leica M3、Elmarit 90mmF2.8(初代)、PRESTO 400(+2)、ケントメアRC、3号フィルタ


トリスタン・ホンジンガー(2007年) Leica M3、Elmarit 90mm(初代Mマウント)、TMAX400(+2)、フォルテ・ポリウォームトーンプラスRC、2号フィルタ使用

●参照
「KAIBUTSU LIVEs!」をエルマリート90mmで撮る
「KAIBUTSU LIVEs!」をエルマリート90mmで撮る(2)
1988年、ベルリンのセシル・テイラー


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