Sightsong

自縄自縛日記

『なぜ日本人が・・・ ~アルジェリア 人質事件の真相~』

2013-04-25 08:04:50 | 中東・アフリカ

今年(2013年)の1月に、アルジェリアの天然ガス精製プラントにおいて起きた人質拘束事件について、「NHKスペシャル」枠で、『なぜ日本人が・・・ ~アルジェリア 人質事件の真相~』(2013/2/17)というドキュメンタリーが放送されていた。(なぜ今頃観ているのかといえば、「痛い」からだ。)

イスラーム系の武装集団による攻撃であり、日揮の日本人職員(派遣社員を含む)10人をあわせて、37人が亡くなっている。武装集団も、30人くらいがアルジェリア軍によって殺害されている。

番組によれば、武装集団のリーダーはモフタール・ベルモフタールというアルジェリア人。親族がアルジェリア戦争(1954-62年)に参加し、その功績により、「ベルモフタール通り」なる道も存在する。そのため、支配国のフランス、ひいては欧米に対する憎悪を、幼少時から持っていたのだ、というわけである。

実際に、ベルモフタールは、アル・カーイダにも参加し、このような戦いを聖戦(ジハード)だと外部に発信していた。資金源は、外国人の誘拐によるものであった。50人程を誘拐し、80億円もの身代金を得ており、これはオサマ・ビン・ラディンを超える活動費であったという。そして、カダフィ政権の崩壊(2011年)以来、リビアにおいて余剰となった武器を運ぶ「密輸のネットワーク」を構築していた。

活動の参加者は、貧困な若者である。おそらくは、タリバンやアル・カーイダでも見られる共通の構造的なものだろう。番組では、武装集団のひとりの両親をチュニジアに訪ね、貧しい家を写し、「なぜ善良な息子があのようなことをしたのかわからない」とのコメントを引き出している。下品なやり方である。それだけで、「テロリスト」が「テロ活動」に至った背景を示し、ドキュメンタリーとしてのバランスを取ったつもりなのだろうか。

武装集団は、「日本人」ではなく、「外国人」を標的にしていたのだという。それでは、なぜ「外国人」、あるいは、日本も含む西側が狙われたのか。番組はそこにまったく踏み込もうとしない。アルジェリア戦争も、「9・11」に至った経緯も、アフガニスタン紛争も、イラク戦争も、何も取り上げない。勿論、「テロリスト」は「テロリスト」であり、逆側の立場から視ようとすることはない。

番組の最後では、アナウンサーが、深刻な顔を装って、重要なことは「目をそむけることなく、見続けることではないでしょうか」といった発言を行う。何が問題か、ではなく、誠実に向き合うポーズを取ることのほうが重要なわけである。まるで贖罪のような映画を乱発するアメリカ帝国だ。

思考停止、知的後退、欺瞞に満ちた日本を象徴するような番組だった。 

●参照
番組サイト 


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