Sightsong

自縄自縛日記

張芸謀『上海ルージュ』

2013-05-25 19:04:42 | 中国・台湾

張芸謀『上海ルージュ』(1995年)を観る。

1930年の上海。田舎から叔父を頼って出てきた少年は、顔役の家で、その愛人(コン・リー)の家来となる。気の利いたことができない田舎者。やがて抗争があり、顔役は、近くの小さな島に愛人や少年を引き連れて逃れる。愛情に飢えている愛人は、顔役の部下と関係し、少年や島の少女に歪んだ愛情を注ぐ。

張芸謀(チャン・イーモウ)の作品としては、さしたる傑作にも感じられない。それでも、少年がビビりながら上海に蠢く妖怪たちの姿を凝視し、覗き見する繊細な描写は、さすがである。

コン・リーには、このように心の安寧が得られない薄幸な役が与えられることが多いような気がする。観ていてまたかと思い、ちょっと苦しい。

それにしても、1930年の魔都。この都市で、J・G・バラードが生まれた年である。まさに、尾崎秀樹『上海1930年』(>> リンク)で描かれたように、尾崎秀実や、リヒャルト・ゾルゲや、魯迅や、アグネス・スメドレーや、川島芳子といった怪人奇人たちが跋扈した時代。そして、映画にも出てきたように、快楽を求めて夜の文化やファッションが爛熟する時代。

今の上海でも、夜歩くと気圧されるものがあるが、きっと比べものにならないほどの猥雑な力が溢れ出ていたのだろうと想像する。

●張芸謀
『紅いコーリャン』
(1987年)
『紅夢』(1991年)
『初恋のきた道』(1999年)
『HERO』(2002年)
『LOVERS』(2004年)
『単騎、千里を走る。』(2006年)
北京五輪開会式(張芸謀+蔡國強)(2008年)

●上海
尾崎秀樹『上海1930年』
ジョセフ・フォン・スタンバーグ『上海特急』(同時代の上海を描く)
J・G・バラード自伝『人生の奇跡』(バラードは30年に生まれ上海で育った)
海野弘『千のチャイナタウン』
『チャイナ・ガールの1世紀』 流行と社会とのシンクロ(魔都上海とファッション)
ミカエル・ハフストローム『諜海風雲 Shanghai』(40年代の上海)
伴野朗『上海伝説』、『中国歴史散歩』
海原修平写真展『遠い記憶 上海』
海原修平『消逝的老街』 パノラマの眼、90年代後半の上海
陸元敏『上海人』
2010年5月、上海の社交ダンス
上海の夜と朝
上海、77mm
上海の麺と小籠包(とリニア)
『上海の雲の上へ』(上海環球金融中心のエレベーター)
魯迅の家(3) 上海の晩年の家、魯迅紀念館、内山書店跡
井上ひさし『シャンハイムーン』 魯迅と内山書店
太田尚樹『伝説の日中文化サロン 上海・内山書店』


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。