銀座ニコンサロンにて、桑原史成の写真展『不知火海』を観る。昨年11月にも開かれたばかりだが、今回、桑原氏が土門拳賞を受賞した記念での再度の開催である。構成や個々の写真は、前回と少し変えてあるようだ。
5歳で水俣病を発病し、23歳で亡くなった少女は、その美しさから「生ける人形」と呼ばれた。また、石牟礼道子『苦界浄土』に登場する杢太郎少年のモデルとなったと言われる少年の写真もある。
桑原氏は、「生ける人形」を、できるだけ美しく撮りたかった、と述べている。それだけでなく、白黒プリントが非常に巧く、さすがである。それだけに、なお、水俣病を発生させ、放置し、さらには別の公害病を生んだ罪が、重いものとして迫ってくる。
ニコンサロンは、この写真展の次に、石川文洋氏のベトナム戦争の写真展を予定している。福島の原発事故も、これまでテーマとしてきている。この姿勢を貫くならば、安世鴻氏による慰安婦の写真展を中止したことの理由も明確にすべきである。
●参照
桑原史成写真展『不知火海』
工藤敏樹『祈りの画譜 もう一つの日本』
土本典昭『水俣―患者さんとその世界―』
土本典昭さんが亡くなった
原田正純『豊かさと棄民たち―水俣学事始め』
石牟礼道子『苦海浄土 わが水俣病』
『花を奉る 石牟礼道子の世界』
鎌田慧『ルポ 戦後日本 50年の現場』