チコ・フリーマン『Spoken Into Existence』(Jive Music、2015年)を聴く。
Chico Freeman (ts, ss)
Heiri Kanzig (b)
Michael Baker (ds)
Antonio Farao (p)
特に何かが野心的であったり尖っていたりするでもない。特筆すべきことも見当たらない。それにも関わらず、いまだにチコの新作をこのように追い続けている人が、他にもたくさんいることを信じたい。
父親のヴォン・フリーマンと比べるとチコはダメだと言ったのは、スティーヴ・コールマンだったように記憶している。確かに、匂いにむせかえるようなシカゴ・テナーのヴォンに比べると、強烈さは希薄である。若いころはそれでも苛烈なプレイを見せてもいたのだが、いまやどっしりと落ち着いて、手癖と音色とソロの組み立ての個性だけが残っている。聴けばチコとわかる音なのであり、それでいいではないですか(誰に言っている)。
「Seven Steps to Heaven」を録音するのは『Project Terra Nova』(1996年)以来か、どちらもまったく尖っていないが。あとは、5人の娘に捧げた曲など、しっとりしたものである。『The Arrival』(2014年)に続き一緒に演奏しているハイリ・ケンツィヒの柔らかなベースも、このサウンドにはまっている。
●参照
ジョージ・フリーマン+チコ・フリーマン『All in the Family』(2014-15年)
チコ・フリーマン+ハイリ・ケンツィヒ『The Arrival』(2014年)
チコ・フリーマン『Elvin』(2011年)
チコ・フリーマン『The Essence of Silence』(2010年)
最近のチコ・フリーマン(1996, 98, 2001, 2006年)
サム・リヴァースをしのんで ルーツ『Salute to the Saxophone』、『Porttait』(1992年)
チコ・フリーマンの16年(1979, 95年)
ヘンリー・スレッギル(4) チコ・フリーマンと(1976年)