Sightsong

自縄自縛日記

ネッド・ローゼンバーグ@神保町視聴室

2014-08-31 22:38:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

久しぶりに来日するネッド・ローゼンバーグ(8年ぶりだそうだ)のプレイを観るため、神保町の視聴室というところに足を運んだ(2014/8/31)。わたしにとっては、1996年頃に六本木のロマーニッシェス・カフェでサインホとのデュオを観て以来。

Ned Rothenberg (bcl, cl, as, 尺八)
高良久美子 (vib,perc)
芳垣安洋 (ds)

これまで無機質だなという印象が強かったネッドさんだが、自分がそのような一面だけで視ていたことが勿体ない。かれのソロは、とくに長い循環呼吸のときに、顕著に多声・多音・多層的。そのような音のフローが次第に生命を持っていくようで、耳福だった。

芳垣さんは、玩具のような音からマーチのようなソロまで。高良さんのヴァイブも多彩で(弓で鍵を擦るなどはじめて観た)、3人による音の拡がりもまた快感。

第2セットは、かつてメールス・ジャズ祭で試したという、光を遮断したなかでの演奏(つまり真っ暗)。こうなると音もまた別の色を持つのだった。奇妙な体験だった。

※撮影はNikon V1、30-110mmF3.8-5.6

●参照
ネッド・ローゼンバーグの音って無機質だよな(という、昔の感想)


永田浩三『NHKと政治権力』

2014-08-31 15:01:06 | 政治

永田浩三『NHKと政治権力 番組改変事件当事者の証言』(岩波現代文庫、2014年)を読む。

永田浩三さん(現・武蔵大学)は、NHKのプロデューサーとして、2000年から翌年にかけて、『ETV2001』枠において従軍慰安婦問題に焦点を当てたドキュメンタリーを制作していた。しかし、制作の終盤に、番組の内容を改変するよう極めて強い圧力がかけられる。その結果、番組からは、慰安婦のかたがたの生の声や、元日本兵の証言が削除され、ドキュメンタリーが根本から骨抜きにされてしまう。

圧力は、主に日本会議(特に現首相や故・中川昭一氏)による政治的かつイデオロギーに基づくものであった。NHKは、それに過剰反応したばかりか、解決ではなくトカゲのしっぽ切りを選んだ。

永田さんは、当事者のひとりとして、実際に起きたことを可能な限り検証しようとしている(ご本人も改変に加担してしまったことさえ、反省とともに書いているのである)。本書を読むと、NHKというメディアが、形の上では国営放送ではないとはいえ、実際には、歴史的にも政権の顔色をうかがいながら運営されてきたことが実感される。

そして、この傾向はまたエスカレートしている。いま読まれるべき本だろう。 

●参照
永田浩三さん講演会「3・11までなぜ書けなかったのか メディアの責任とフクシマ原発事故」
金平茂紀・永田浩三・水島宏明・五十嵐仁『テレビはなぜおかしくなったのか』
安世鴻『重重 中国に残された朝鮮人元日本軍「慰安婦」の女性たち』
安世鴻『重重 中国に残された朝鮮人元日本軍「慰安婦」の女性たち』第2弾、安世鴻×鄭南求×李康澤
新藤健一編『検証・ニコン慰安婦写真展中止事件』