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しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

虚無への供物 中井英夫著 講談社文庫

2016-08-10 | 日本ミステリ
いずれは再読しなきゃと思っていた作品で、これまた本棚で目が合い(笑)手に取りました。

私が中学生時代(35年くらい前)から日本ミステリーの伝説的な作品となっていましたが、近年でも人気なようで'12年週刊文春東西ミステリーベストでは日本ミステリーとしてなんと2位にランクインしていました。
もはや神格化されている作品ですねぇ...。

1964年刊ですが、原案は1954年の洞爺丸転覆事故辺りに得ているようで、作品舞台もその後の1955年辺りになっています。

小栗虫太郎「黒死館殺人事件」夢野久作「ドグラ・マグラ」と並ぶ日本推理小説 三大奇書としても有名です。
「黒死館殺人事件」は未読なのでいずれと思っているのですがいろんな意味で難物な作品のようなので手が出にくいです…。
「ドグラ・マグラ」は同じ文春のベストで4位になっております。
推理小説というより幻想小説の名作で、小説としては「虚無への供物」より上の日本小説誌に残る名作であると思っています。

さて本書、初読は中学生頃、当時乱歩賞を受賞した「写楽殺人事件」を読んで面白くて江戸川乱歩賞受賞作品をできるだけ読もうとしていた時期があり、その流れで幻の乱歩賞受賞作品(2章までで応募していた)としても名高い本書を読んだ記憶があります。

今回読んだ本もその頃から持っているものですが、当時古本屋で入手したものなので古いです…。

何回となく繰り返し読んだ記憶があるのでかなり好きな作品だったのだと思います。

内容紹介(裏表紙記載)
戦後の推理小説ベスト3に数えられ、闇の世界にひときわ孤高な光芒を放ち屹立する巨篇ついにその姿を現す!
井戸の底に潜む三人の兄弟。薔薇と不動と犯罪の神秘な妖かしに彩られた四つの密室殺人は、魂を震撼させる終章の悲劇の完成とともに。漆黒の翼に読者を乗せ、めくるめく反世界へと飛翔する。

細かいトリックは覚えていませんでしたが、さすがに何回も読んだ作品なので内容は結構覚えていました。
2章までで乱歩賞に応募され、江戸川乱歩先生が完成作と勘違いしていたというだけあって「2章で終わった方がまとまりがよかったかもしれない」などと「伝説的作品」に対して不謹慎なことを思いながら、ほぼ30年ぶりの再読をしました。

2章までの推理小説のパロディ的素人探偵4人の推理合戦や目黒、目白、目青、目黄、目赤 五色の不動尊を「謎」として使うところ、麻雀をつかった犯人探索など楽しく読めました。
2章終わりで藤木田老の謎めいた示唆や、なんともしゃっきりしないところもまぁこれはこれで終わりとしてありな気がします。

対して後半は全体的に間延びしていたように感じました。
特にアパートで死んだ(殺された?)鴻巣玄次の事件のなんとも中途半端な扱いは最後まで読んでもはぐらかされたようでどうにも納得できませんでした。(30年前も同じ感想もったことを思い出した。)

名探偵役にあたる牟礼田が書いた作中作としての「解決編」もはぐらかしている感満載なので基本後半は読者の推理小説的期待を徹底的にはぐらかすことに主題があったのかもしれませんが…。(この辺は前半も共通なのかもしれない)

思わせぶりに謎的なものを提示しながらもはぐらかし、しゃっきりしない結論で読者を含む「推理小説」的世界に喧嘩を売るラストなどは当時としては斬新だったのでしょうが、今の読者から見たらそれほど目新しさはないような気もします。

おどろおどろしい内容紹介や三大奇書という言葉に騙されますが、基本的には推理小説の枠組みを使って少しいじっただけで、全体的構造としてはそれほど突飛な作品ではないかと思います。

戦後急速に復興していき変容しつつある1955年辺りの社会の雰因気・空気感や独特なおどろどろしさと実験性をもった時代を代表する作品ではあり、忘れ去られるのは惜しい作品だとは思いますが本作がいまだに日本ミステリーの2位にランクインしているのはどうなんでしょうかねぇ。

私個人としては今回読み返して本作を読んでいた中高生時代に感じたことやなにやかやを思い返したり「当時は今と違い戦後も近かったよなぁ…」などと感慨にふけったりしたりで楽しめたのは事実ですが、その分客観的に評価できていないところもあるかもしれません。

意外と今の若い読者が読んだら新鮮なのかもしれませんね。

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ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち 三上 延著 メディアワークス文庫

2012-09-25 | 日本ミステリ
職場近くの本屋にちらりと寄ったら、このシリースが平積みにされており(現在3まで出ているようです)とりあえず1からということで本書を購入。

著者も作品もそれまで全く知りませんでしたが、表紙からして古本、読書家のお姉さんミステリーと割と本好きな人にはたまらない「記号」がならんでいてついつい買ってしまいます。
あざといといえばあざといなぁ....。

割と保守的な方なので馴染まない本はどうも読む気にならず、買ってから2ケ月くらい経ってやっと読み出しました。
(ブログを書き出したのも影響してます)

読み出したらとても読みやすく、通勤行き帰り2回(3時間弱かなぁ)で読み終わりました。

なんだか「ライトノベル風だなぁ」と思って読んでいたのですが、このメディアワークス文庫はライトノベルの文庫なんですね。
最近の出版事情に疎いので知りませんでした。

ライトノベルにしてはよくできていると思いますが、「小説」「ミステリー」として素直に評価すると安直感は否めないように感じました。
そういう風に書いているのかもしれませんが...。


冒頭でも書きましたが、「古本屋」「本好きなおとなしい女性」「名探偵とワトソン役」「ほのかな恋愛」「事件」とちょっとしたミステリ・小説好きを喜ばせる要素をこれでもかと並べています。
それらの要素を安心感のある、裏を返せば意外感のない手法で処理して「おもしろいでしょ、ねぇ」という感じで提示されているような気がしました。

日常の謎に古書をからめる辺りは北村薫氏の「円紫師匠と私」シリーズ辺りを下敷きにしていそうですが、本家の方が練られており人物描写もはるかに上です。

ミステリとしても伏線の張り方が単純なのでミステリをある程度読みなれている人であれば途中で落ちは大体想像できるとは思います。

と、難点ばかり書いてしまいましたがそんなに「ものすごい作品」ということを期待しなければ楽しめる作品です。
予定調和的展開なので安心して読めますし、やっぱり私のような平凡な本好きは定番的要素に弱いです....。
だから売れているんでしょうねぇ(初版2011年3月で2012年6月ですでに23版)

本書に出てくる絶版本(少し高いことになっている)の中に「講談社学芸文庫 百魔 杉山 茂丸著」などが出てきたり(持っているのでちょっとうれしい、88年に出ていてたようですね、高校か大学の頃買ったんだろうなぁ)その他サンリオSF文庫などという私くらいには(42歳)懐かしいものが出てきてその辺も楽しめました。

安直といえば安直ですが気楽に読むにはいいですね、そのうち2、3も購入して読んでみたいです。
この作品残念ながら時代の荒波は乗り越えられないような気がするので10年後には絶版で入手できなくなりそうな気がする...。
そういう本ほど手に入れておきたい性分なので。

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