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Maintenance SHIOHOUSE

■SHIOブログ■
「店主の独断と偏見でつづる個人的な日誌」

ガソリンは生もの

2020-01-07 12:43:00 | ノンジャンル
新年初めての仕事はエンジン不調のCB400F
昨年から不調は訴えており
たまたま時折家族で出かけるお店の近所なので
出掛けたついでに立ち寄って診れればと考えていた。
それまでメールでやり取りはしていたのだが
昨今店主にまったく余裕がなくなってしまい
年末の買出しすら行けなく昨年は訪問できずじまい
当店の正月休み中に行く用事を作りやっと訪問

果たして現場でキャブのガソリンをドレンから抜くと異臭を発している
ドレンの穴も塞がっていて外さないとガソリンが抜けない状態だった。
その場で持っていった外部タンクからフレッシュガソリンを送るが#2、#3に火が入らない
この場合点火系も疑われるが状況からキャブと判断しその場でキャブを外した。
フロートチャンバーを開けると案の定スロー、メインとも詰まっている。
ガソリンを腐らせてしまったということ

ドレンからガソリンを抜く際にオーナーさんが
「へぇ~そうやって抜くんですね」の一言
また、ガソリンの劣化は前回車検でお預かりした際にもやらかしており
口頭注意して、ガソリン添加剤を入れてお渡ししてあった。
しかし、今回話ししていてガソリンの劣化に対してかなり無頓着に感じた。
そんなことだろうと目の前でキャブをばらして惨状を直接見てもらった。
口頭で注意しても危機感が薄い
目の当たりにして、においを嗅いでもらったほうがさらに良いだろう



これまでのやり取りは


8/12 お客様からのメール
「私のCB400FOURですが、久しぶりにエンジンに火をいれたところ、
なかなかエンジンがかからず、5月以来ですから無理はありませんが、
バッテリー充電を15時間かけて行い本日かかりした。
ただ、エンジンの出力が上がりません。アイドリングではすぐに停止
してしまうので、何かアドバイスがあればご指導下さい。」


5月以来と書かれているのでガソリンを疑うのが普通だろう
返答は
「3ヶ月経過してれば
フロートチャンバー内のガソリンは劣化しています
コックをONにしても継ぎ足しでだめですから
一度キャブのドレンから抜いて新しいガソリンをタンクから供給し
プラグの掃除をしてから再度トライ願います
また、タンクのガソリンも満タン状態ならまだ良いですが
中途半端だと劣化が進んでいると思われます
いずれにせよフレッシュガソリンに交換してください」


8/13 お客様より
「こんばんは。アドバイスありがとうございます。
一度やってみます」



8/23 お客様より
「塩畑さん
先般、エンジンのかかりが悪いとご連絡しましたが、
結論から言いますと、かかりました。
ただパワーがでないところ見ると、プラグが調子が
悪いのだと思います。
そこで、プラグを変えることにしました。
現在ついているプラグから、サービスマニュアルで指示
してあのますNGK D8ESL D7ES か、日本電装X24ES
X22ESと指摘してありますが、どれでもよいでしょうか
ご指導ください。」



この時点で自分的にはオーナーさん自身がドレンからガソリンを抜いて、ガソリンを入れ替えてエンジンが掛かり、悪いガソリンでプラグが死んでいたのかなと解釈
返答
「プラグはD8EAまたはD7EA
後者のほうが良いでしょう
外したプラグは拭き取らず今度見せてください」


9/1 お客様より
「それとCB400FOURの調子ですが、プラグは全部新品に
しましたが、やはりエンジンのパワーが上がりません。
あまり、いじることは得意ではないので、また、他の
方に見てもらうのも気が進みませんから、無理をせず、
時間をかけて様子を見ることとします。」


キャブ以外に不調になってしまったか?
直接診ないとダメかなと思い
返答
「車両は折を見て診に伺います
日程調整してご連絡いたします。」


失敗したのはこの時点で陸送手配して
土日のタイミングで預かれれば車検のスケジュールにも影響なく診れたのだが
店主のバタバタによりそこまで頭が回らなかった。
結局、忙しく動けないまま12月に入り

12/19  このブログ冒頭の車検依頼メールの項目
「④ 現時点でのトラブル  エンジンのパワーが出ない。すぐにエンジンが止まる。(人間でいえば風邪をひいているような感じ) プラグは新品にしたが、変化なし。キャブレターなのかとの疑問。」


年が明け
1/4(土)やっと車両と対面できたが上記の有様
お客様自身ではガソリンを抜いてはいなかったということ

昨年5月の状態で何時入れたガソリンだったか?
屋内保管で3ヶ月でそこまで調子が悪いということは
もっと古いガソリンだったということ
店主が突っ込んで確認すればよかったが
そのまま年を越したということは
半年以上前のガソリンということ
確かに抜いたガソリンの匂いは長期熟成そのもの

そのキャブレターがこれ



フロートチャンバー底には緑色のガソリンの変質した堆積物

スロージェット(右から#1~#4)

メインジェット(同)

ニードルジェット(同)

こんなことだとジェットニードル先端にも付着が見られる



これがさらに酷くなるとジェットニードルとニードルジェットが固着する
スロットルを回しても動かないなんてことになる
こんなときに外したキャブのスロットルバルブをマイナスドライバーでこじ開けようとする浅はかな人がいるが傷をつけてしまうだけ
時間を掛けてキャブクリーナーで溶かすか
急ぐならキャブ全体を暖めてしまう、どうせフルO/H前提だろうからお湯にどぼんと漬ければ動くようになる
温まっているうちに分解すればよい


さて、キャブレターのつづき
フロートチャンバーのOリングを見てもまだ弾力があり全バラする必要はない
フロートチャンバー内部のみの洗浄で良いだろう
スロージェットとメインジェットは金額的にみても新品に換えたほうがベターだろう
掃除しても完全に取りきれないと意味がなく掃除の手間のほうが掛かってしまう
ジェットリーマなるものがあるがエッジが立っていて汚れを削りとるもの、しかしよっぽど注意しないとジェット自体を削ってしまうため穴が拡大し不調の原因となる
またキャブクリーナーで洗浄するがゴム部品には極力付着させたくない
というのはゴム部品に対して攻撃性がある
(ダストプレートA、Cがカチカチになってるのが時折あるが漬け置きタイプのキャブクリーナーに丸ごと漬けたかスプレータイプのキャブクリーナーで丸ごと洗浄したかだろう)
そんなこともありキャブレターを横にして細心の注意を払いフロートチャンバー内だけを洗浄

逆さにしてやるとメインジェットの刺さる穴内部を洗浄する際にキャブクリーナーがスロットルバルブに落ちてキャブ上部のリンク室へと入り込んでしまう
またダストプレートA,Cにも掛かってしまうだろう

ニードルジェットは混ざらないよう各チャンバー内で洗浄

一応、メイン、スロージェットもキャブクリーナー漬けにはするが詰まった穴は簡単には溶けない

ドレンボルト、見事に詰まっています。


洗浄完了

さぁ組み立て

(中略)

組み立て完了


オーバーフローのテストをしてから車体に装着します。


とりあえず始動しましょう
一発で掛かりました。


ちなみにメーターは9132km

前回の車検(2018/7)では8974km
調子が悪くなるまで1年間で158km
普段どれくらいのペースかがうかがい知れるというもの

「もっと乗らなければダメですね」
店主がエンジンのメタルの保護のために
「定期的にエンジンを掛けて欲しいとか町内を1周するだけもして欲しい」などといっていますが
ガソリンは別問題
継ぎ足しでは時間が経てばどんどん悪くなっていく
2~3ヶ月で全量が入れ替わるようにして欲しい
四輪をお持ちなら移し変えれば良い
お持ちでないなら普段給油するガソリンスタンドを決めておき処分してもらう
(いまどきはやってくれるかは不明)
知り合いで欲しい人の車に入れてあげるのも良いだろう
(完全に腐って異臭を放っているのはダメよ)

また保管状況でも劣化スピードは違う
炎天下のコンテナガレージであっという間に劣化した事例もある
これもオーナーさんはガソリンの劣化を信用していなかった。

乗るのに1ヶ月、2ヵ月と間が開きがちならキャブのガソリンも抜いたほうが良いだろう
乗ったときに適当なところからコックをOFFにして帰ってくれば
フロートチャンバー内のガソリンは少なくなっている
またはアイドリングで置いておいてエンジンが止まったらOK
ドレンボルト下に厚めにウエスを敷いてしみこませれば良い
風通しの良い所に置いておけば揮発してしまう(火気厳禁)
※フロートチャンバー満タンのときにドレンから抜くと量が多いので危険です。

408コックの場合、経年でOFFにしてもじわじわ流れるのでホースを抜いて双方に栓をしたほうが良いだろう

ガソリンは生ものだということを肝に銘じていてほしい


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