Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

元日の弁当

2012-12-31 11:20:12 | 
年末から年始にかけて一日おきの24時間拘束勤務が始まっている。その拘束時間中は勤務前の早朝外食もままならないので、最小限でも二食分の弁当が必要になってしまう。コンビニの弁当がいくらプレミアムと称してグレードアップされていても質量ともに物足りない気分になってしまうので、ある程度自分の手を加えた弁当を携行する羽目になる。そんなときに正月の食材を買う人に混じって普通の弁当用惣菜を物色するのだが、普通品は限りなく品薄になっている。そのせいでもないが、なぜかうっすらとした疎外気分を味わうことになる。

ちょうど年が明けた元日も大きな敷地の無機質な建物の中で24時間を過ごす勤務シフトになっている。正月以外の季節なら、大きなおにぎりを2個と玉子の厚焼きと漬物くらいが定番弁当になっていて用が足りる。せめて年の初めの元日くらいは弁当にも華がないといけない。木挽町の有名弁当みたいに手のこんだ具が満載の弁当は素人ではとても無理である。

元日のメニューは苦渋の結果、正月用の餅を活かした弁当にすることにした。あらかじめ、前日に作っておいた出汁を冷凍して、切り餅数個は電子レンジで焼けばよい。蒲鉾、ナルト、三つ葉などの具も揃っているから、即席雑煮の体裁は整うことになりそうだ。これにちょっぴり色を添えるような副菜も欲しくなった。日向薬師に移住してから覚えた食の手作り仕事が鈍ってしまうのも残念である。そこで混みあっているスーパーで金時豆となます材料となる大根、人参、胡麻を揃えてさっそく仕込みの開始である。



煮豆の丹念なアク抜き、大根、人参の細片カットが手間隙作業の中心である。両品目とも砂糖、酢の加減は今回に関して上手くいったようで、元日の弁当の一助くらいにはなりそうである。

古いカフェにて

2012-12-28 12:32:03 | その他
先日の衆院選挙の前に府中街道を走っていた頃だった。初冬の枯れ木立が黄落の模様を織り成している景色に魅せられて、寄り道した玉川上水の付近で見つけた古い趣のカフェが「SHING TONG(シントン)」だ。近くには津田塾大や武蔵野美術大のキャンパスもある。清らかな水路の流れに沿って、こんもりとした広葉樹の緑地帯を長い歳月が至るところに作っている本来的な武蔵野らしいエリアである。この付近に住む人は三鷹にある井の頭公園などに隣接する地域に住む人と同じ様に、四季折々の風情にさぞかし得をした気分になることも多いのだろう。実に羨ましい。この「シントン」はその時同行していた連れによると、付近の大学へ通っていた時期にもすでにあったらしい。逆算すると1970年代にはオープンしていた老舗になる。

その少し前に寄っている国立駅南口前の路地にある「ナジャ」でも感じたのだが、女性経営のカフェというものには、非転向の一途を感じることが多い。団塊の世代の男達が身すぎ世すぎに流されているのに、信念を変えようとしない女性を見かけるケースがままある。ジャズカフェの分野にも、現在の消息は知らないが、明大前の「マイルス」向ヶ丘遊園の「ガロ」、稲毛の「CANDY」などへ立ち寄った時にも感じた女性経営者と同質の匂いがする。「シントン」のコーヒーはこれまたネルドリップの手間を惜しまない丁寧に点てたもので、香りも深いコクも両立したバランスのよい味わいが、昔ながらの変わらない地域客を獲得しているようだ。

この「シントン」は画廊も兼ねていてちょうど良質なアマチュア画家によるアクリル絵?の個展が開かれていた。珍しく巧拙を超えた笑いが直撃してくるような、感情に溢れた魅力の画風に感動する。作者は多分、店の隅に座っている帽子を被った年配の老婦人のようだ。直前に控えている都知事選挙のちょっとした話題がでたときに、昭和中・後期風の今となってはリベラリズム的硬骨言辞を弄して、猪瀬直樹を推奨している石原慎太郎や多分、そこへメディア誘導型コーンフォミズム丸出しで流れ込む東京都選挙民の在り方を嘆いていた。そういえば、玉川上水の辺りにあった選挙ポスターの猪瀬知事候補の写真、まなじりに黒いアイ・シャドーをスタイリストにでも塗られたのだろう、性質の悪い旗本奴みたいな顔をしていましたよ!と、その老婦人に教えてあげようと思ったが、話が通じないのと、連れにたしなめられるのを恐れて店を後にした。

記憶の葱ラーメン作り

2012-12-25 22:56:03 | 
八王子から秋川街道の山あいをクルマで散策したついでに、西多摩郡、日の出町のJA直売所へ寄り道してみた。さすがに寒の季節を迎えて大根、蕪、葱、ホウレン草などの冬野菜が瑞々しい艶を放っていて品揃えが充実している。その中の泥付き葱の束を買ってきて、思いついたのが長葱をふんだんに使った葱ラーメンである。昔、横浜の伊勢佐木町の入り口付近に「博雅」というシュウマイなどがとても美味だった華僑が経営する本格的な中華料理屋があった。この「博雅」はとっくになくなってしまったお店だが、あるときその味を継承しているラーメン店を横浜の郊外に位置する霧が丘で見つけた。
ここも老主人が体調を崩して数年で閉店してしまったが、この店を訪問していた頃、よくオーダーしていたのが葱ラーメンである。構成は細めの麺と鳥ガラや貝柱、野菜などを丹念に煮込んだ醤油味のスープが特徴だ。スープの色は濃い目に見えるが味はどぎつくない。昭和50年代くらいまでの横浜の山下町、野毛、磯子区、南区など旧市街地に点在した中華そば屋に共通するやや甘口のさっぱり味で、いま主流と称されている豚骨系の油脂を多用した家系ラーメンとの違いは明白である。

霧が丘にあったラーメン店の葱ラーメンを食したときに、どこか横浜の街中で仕事をしていたでしょうと、その風味から推測して質問してみたら図星だった。「博雅」で調理をしていたという答えが帰ってきた。細長く刻んだ大量の長葱にチャーシューを刻んでゴマ油とラー油で香ばしさと辛味のアクセントをつけたものが、店主がお薦めしていた葱ラーメンでこれが中々の美味であった。そのときの味覚を再現してみるのも面白いと思って、本日は豚肉のブロックを燻し焼いてチャーシューを作った。


豚肉の漬け込みにはおよそ一晩かける。醤油、味醂、砂糖、酒、ニンニク、玉葱を具材にした漬け汁をかなり昔のレシピ本(河内桃子の若かりし日が表紙)に基づいて配合する。ラーメンはいつもの「コスタ二宮」という福祉法人が販売している愛好している生ラーメンで、これは添付してある液体スープが非力だが仕方がない。胡麻油もラー油もちょうど在庫があった。焼きあがったチャーシューとよく晒したたくさんの長葱を和えてみた。長葱は風邪の予防にも役にたつから、冬の夜半メニューとしてはぴったりである。霧が丘の今はなき葱ラーメンの味わいをなんとか再現してみたが、やはりスープのコクが及ばないなと思いつつ、懐かしい味わいをちょっぴりと楽しむことができたようだ。

丸木スマのカレンダー2013

2012-12-20 11:43:55 | その他
有名な「原爆の図」を描いて世界中に知られている丸木位里、俊夫妻の作品を展示している記念美術館が埼玉の東松山市内にある。里山の緑の中を都幾川の清流がゆっくりと煌きながら流れるのどかな場所にある。サンドイッチやおにぎりでも持ってこの美術館付近を散策したら半日は楽しめそうだ。

晩秋のある日にこの美術館を見学したときに、丸木スマさんという老婆の絵描きさんがかっていたことを知った。画家丸木位里さんの母親らしい。明治の初め頃、広島市の郊外で生まれて、1956年(昭和31年)に東京でその生涯を81歳で閉じている。そのスマさんは戦後になってから、絵を描き始めている。息子の位里さんに画法を教わって素朴な風物の小品をいかにも楽しそうに活き活きと描いている。位里さんや俊さんがベースに持っている西洋古典絵画技法や社会主義レアリズム風の大作タッチとは無縁な、一種の幼児っぽい童画的小品群である。

スマさんの絵は紙に墨や鉛筆で線描したあとに彩色を重ねていて、これが独特な風合いを生み出している。1950年(昭和25年)の作品に「塔」という題の間合いのセンスが不思議な絵がある(カレンダー5・6月所収)。どこか村はずれにあるお堂を描いている。強い風が吹き荒れているのか、お堂の傍に植わっている木々が揺れている。梢や草むらに群がっている鳥は椋鳥やスズメだろう。お堂も屋根の甍付近の一部だけが遠近法を採用して、あとは朱塗りの建物を平面から描いている。小学生の写実みたいな大胆構図だ。風の強さはお堂の背後に太い筆を使って等間隔のライトグレー色を施すことで象徴化させている。鳥が羽ばたく様や餌を啄ばんでいる姿態から、マルク・シャガールの世界にも通じる馥郁とした夢の香りが伝わってくる。

丸木美術館の原爆告発と証言風大作の物量展示にはちょっと気分が沈鬱となるが、丸木スマの素朴絵画の展示群は箸休めっぽくよい風をとおしてくれていて救われた。ちょうど2013年の美術館で編纂した丸木スマのカレンダーも販売していたので購入してみた。2013年の年明けは、丸木スマが描いた家禽や野鳥や動物達が綻んだ梅の木の傍で遊ぶ風景で始まる。この幸せ感がてんこ盛りな絵をダイニングにかけるべきか書庫の部屋にかけるべきかがもっかの小さな悩みである。

蟹・蛸・烏賊のトマト味パスタ

2012-12-15 16:28:57 | 
ずわい蟹の身がたくさん詰まっている蟹缶詰を手土産にいただいた。昼飯は野菜や牛肉の具材がボリュウムも味も、正直調理精神を反映しているすき焼き定食を国立の南武線・谷保駅付近にできた美味い和食店「大根の花」にて満喫した。夜はシンプルな麺でもと思案していて、この蟹缶の活用を思いついた。蟹だけを使ってクリームなどで和えるのもよいが、来週早々に受ける採血検査で血中脂肪値が上がっては困るのでやめた。バターも使わずオリーブオイルだけで魚貝を炒めることにした。ちょうどスルメ烏賊をリンク状にカットしてゲソまで混じっている安いパックがあった。ついでに蛸もミックスしたら、海の幸がいっぱいに香る臨場感を楽しめると思って追加することにした。蛸はモロッコ産だ。鰺はオランダ、鯖はノルウエーとスーパーで日本産を見つけるのはほんとに困難になってしまったようである。三浦半島の長井港付近で採れる地蛸ならさぞかしよかろうと思うが、そんな贅沢はいずれの機会までお預けである。

オリーブオイルを加熱してからニンニクのスライスを焦げ目がつくまで炒めて蛸や烏賊も加える。スパイスは塩、コショウ、黒胡椒、バジルを適量にふる。ワインはちょうど切らしているので在庫の日本酒を大匙一パイ程度加えてみる。トマトホールを一缶使って更にトマトピューレも絞ってみる。最後にズワイ蟹の身をトマトソースの中に散らしてしばらく煮込んで完成だ。パスタは8分茹でてから湯切りする。これを先に煮込んである魚貝ソースのフライパンのなかでよく和えて大皿に移す。代々木八幡の近所にあるパスタの老舗「はしや」なんぞに負けない贅沢蟹味パスタの完成である。

いつも貧相になりやすい副菜のサラダにも手抜かりはなく、熟し始めている柿を林檎などと混ぜる思い付きがよかったようで味の彩度を上げることができた。次のパスタ料理はかって美味いと感じていた渋谷駅南口のジャズ喫茶「メアリージェーン」のアンチョビ(但し店主が作った時のみ)パスタにでも挑戦してみようと思っている。