Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

店の客筋風景

2015-10-27 20:41:26 | JAZZ

趣味の週末懐古茶房を始めたのはよいが、珈琲の温度調整のばらつきがあったり慣れないことも多くちぐはぐな日々を送っている。それでも閑散とした商店街を通りがかった人が見知らぬ店を選んで寄ってくれることはとてもありがたいことだ。

和風店内の様子が見えない閉鎖感を救ってくれたのが北鎌倉からベスパスクーターでやってくるDさんの飄逸感に満ちた看板文字ではないかと思っている。開店して三日間の客筋を分析すると中年婦人の単身客が以外と多いことに気付いた。新規客の四割くらいを占めている。婦人客というのは様子の見えない店を忌避する傾向があるらしい。

むろん知己の訪問者もいるが、黄昏時にやってきてビールを飲みながら真空管フィールド型スピーカーから流れているモード盤男性ボーカリスト、ドン・ネルソンの「ディス・イズ・オール・ウェイズ」等をうっとりと聴き込んでいる光景を眺めていると店を始めてよかったという感慨が湧いてくる。寿司店閉鎖中にはびこったカビ退治、古い備品の放置物整理、一番苦手な分野で苦労させられた手作り店舗、よい味わいを滲みだすのはこれからの日常にかかっていると、一息入れた週初めの思いである。


看板が完成して音も出る。

2015-10-10 21:04:26 | JAZZ

車はひっきりなしに通る横浜の幹線道路に位置しているのに由緒ある山元町商店街はどこかものさびしい。年をとっている個人商店主の手書き看板やPOP紙きれが古すぎてかえって新鮮な印象を与えるのだろうか?ものを知らない若いジャーナリストがたいして生気も感じさせない老人のおざなり献立をもてはやす類の店が至近にあったりする所で週末カフェのオープンが秒読みになってきた。ダサイ寿司屋の跡地、残置物の山、自分のものぐさへの近親者の批判目線、これらを泥くさくこなしてクリアするところも相変わらず負け組!の習い性なのだろう。Dさん、Kさん、Sさん、を酷使してようやく生命線のラジオ風サウンドも完成。

そして寿司屋の埋蔵品を換骨奪胎、無垢の献呈銘木板の裏板、まな板で使って刃物傷でザラザラな古い「泥やなぎ」を賦活させる、リサイクル精神の面目躍如といったところだ。来週はまたまた登場したゴミをさばいて、インテリア材料と食器や厨房の整頓段階に入る。

 

まだごちゃごちゃした店内でフィールド型ラジオから流れてくるブロッサム・デアリの鼻にかかったくぐもりの「誰かが私を見つめている」。週末カフェを始めてみたいというモチベーションの曲だなと思ってまたちょっぴり元気が湧いてくる。

 


八王子・武蔵五日市快走日

2015-09-16 21:51:36 | JAZZ

横浜市中区の懐古茶房「横濱ラジオ亭」のオープンが1カ月後に控えている。カウンター10席強という狭いスペースでまろやかに鳴ってくれるメインのラジオを探していたら真空管アンプの大家として有名なA先生の古くからの知己宅にちょうどよい現役モノがあると趣味仲間のDさんが取り次いでくれた。我々のお願いを快諾してくれたY先生の住まいは都下といっても西の遥か郊外に位置する五日市と聞いてやっぱり物好きの血が沸騰しはじめた。

「善は急げ!」の格言を思い出しDさんと同行することになった。格安の中古車をネットオークションで落札してから700キロ程度走った三菱・コルトの動力性能を試すにもちょうどよい中距離ドライブの機会ということで、ついでにそのラジオも運んでくるという算段だ。五日市への途中には懐かしい町八王子が控えている。浅川の流れと遠方に広がる多摩の山々の容姿を愛でるコースならばなんといっても「あきかわ街道」の景色がいい。

中古車にはNAVIは付属してないから久しぶりの人間NAVIをしまってある記憶装置から惹起させて走ることになった。元本郷から楢原、川口という八王子の平坦な緑園地帯はすでに秋風のさ中である。五日市へさしかかるタイトなアップダウンで曲折する峠道も小型の中古コルトは切れ味のいいハンドリングと剛性感に満ちた粘っこい足回りを示してくれて、これなら今しばらく出世するまで乗れるね!とDさんと笑う。Y先生のお宅はJR五日市駅からとても近く、細い山坂道を辿るという予想は覆された。到着後、ラジオをチェックする。

1957年ドイツ・シュッツガルトで作られたリビングステレオへ移行する時期のモノラル中型ラジオで文句なしの状態だ。技術畑のA先生は埃が堆積していたこのラジオを入念に清掃してくれた。電源を入れて中波帯へダイヤルを回したら図太い音声が流れてきたので、真空管もスピーカーも生きていることがわかった。内側にマウントされたスピーカーはフェライト型の惰円スピーカーでニッケル製のフレームは58年前という年月を感じさせないくらいクスミがない。

中波帯ラジオを聞くことは滅多にないので、目的はこのラジオのモノラルスピーカーへフォノ又はCD等からの入力を別付けすることだ。パイロットランプのミニ珠、ヒューズなどの部品を追加して、改造を行えば大好きなペギー・リーやジュリー・ロンドン、ドリス・デイのまったりとした歌声がこの「WEGA」ラジオから流れてくるのはそう遠くないだろう。


近況

2015-09-10 11:00:24 | JAZZ

台風18号の影響で足元を危惧するが、大雨の渦中を相鉄線「かしわ台」駅まで中古車のミツビシ・コルトを走らせる。水浸しの滑りやすい国道をホールドする購入迄にすでに8万キロも走ってきたクルマの足回りの堅実に安心する。駅前では24時間500円の駐車場へ預ける。かしわ台駅前は勾配の多い形状で一面の川状態になって威勢よく氾濫する水で足元も衣服もずぶ濡れになってしまった。

相鉄、京急線を経由して向かう先は横須賀の「汐入」駅前のガード下にある「平林」という昭和レトロなカフェだ。ここで老人4人による雨中半日会談を行う。目的は10月18日の大安日にスタートする中区・山元町の寿司店跡地の「横濱ラジオ亭 珈琲・音楽・のすたるじあ」という週末限定懐古茶房のPOPデザイン、ロゴマーク等を老人の一人にお願いする話だ。Oさんは大手自動車メーカーのデザイン部に籍があった方である。過去に余興でこなした鎌倉小町通りの路地裏にある蕎麦店の献立、看板等の墨書によるサンプル原画がとても飄逸であって凛とした清潔感も漂わせている。こちらが用意していったラジオのゼニス、モトローラといった1950年代のアメリカラジオ全盛期の写真集と似たムックをOさんも持っていて話は通じやすい。Oさんへの話はクルマのデザイン余話等に脱線することも多かったがなんとか依頼を10日くらいでこなしていただくことになった。謝礼は格安でと念を押したがOさんは固辞する一方だ。ついては本牧通り・中区千代崎町の近くある中華隠れ名店で老人4人による小宴会をしようではないか!ということで納まった。

帰路は目の前の京急駅を選ばないで雨の勢いが弱まった臨海公園沿いをDさんとJR横須賀駅までおよそ10分歩く。小雨に煙る横須賀軍港の海上に浮かぶ水鳥、大型母艦を眺めながらのそぞろ歩きである。田浦駅トンネルの遥かに古いレンガ張りの形を愛でるDさんとの会話はいつも気心が通っている。

座間へ戻った時間帯には台風の雨も去っている。夜半は過去の数年に溜まっていた喫茶グッズというかツール類の清掃と整理を始めている。業務用コーヒーミル、銅製薬缶、エスプレッソマシン、カフェの体をなさないものは選んだら恥なので用心深いぞ今度は。しかしモノラルのラジオ系もさることながら先日、小品ハイセンスオーディオの達人、Hさん宅でいつも見かける英国グッドマンのミニスピーカー(写真参照)こういうものも配置して音が流れる光景もついつい夢想してしまうからなかなか病気は治らないようだ。


横浜炎天ジャズ散歩

2015-07-14 19:05:02 | JAZZ

横浜の旧市街地へ二日続けて出かける。梅雨が明けたみたいな炎熱状態の日曜日は中華街の「マシュマロ」福富町西通りへ引っ越しして久しくなる弾き語りのピアニスト村尾陸男さんがオーナーの「ファーアウト」等をハシゴする。「ファーアウト」のネットスケジュールを眺めていたら好きなトランペッターの金井豊さんのバンドライブがちょうどあることに気がつく。聞いてみたい衝動が湧いてさっそく出かけることにした。おりしも「マシュマロ」では武田さんという地元篤志家の解説による「ハンク・モブレイ」のLPコンサートが行われるらしい。

総勢15人のギャラリーに囲まれたほのぼの感が漂っているLPコンサートだ。ハンク・モブレイのぼかし味が効いた少しルーズなテナーサウンドは古い時代のアルテック604Eのような暴れん坊スピーカーが最適だった頃にジャズ喫茶及び自宅システムでさんざん聞いたものだ。武田さんは東芝盤、キング盤というブルーノートレコードのありきたり日本再発盤をえんりょなく勿体もつけずにバンバン名曲チョイス路線で貫いているところに好感がもてた。振り返ってみればブルーノート時代のハードバップ演奏様式に乗ったモブレイ的ルーティン奏法になんだか飽きてしまいしばらく遠ざかっていたのが事実である。

自宅居間に残ったモブレイのLPはブルーノートよりも所属が古いプレステッジやサボイに納められている「リトル・ガール・ブルー」「ホエン・アイ・フォーリング・ラブ」といった憂欝なバラッドばかりが入っているものばかりである。会場で流されたソニー・クラークの素晴らしいソロとの最高なコンビネーションを発揮する「HANK」所収「ディープ・イン・ア・ドリーム」等を聞きながら、これらの曲に負けないくらいの愛蔵曲の情報流出がなくて内心ホッとしたのも事実である。余談ながら「マシュマロ」オーナーの上不さんから「12月くらいまで店が持っていたら、なにか特集コンサートをしていだきたい」といつものジョークを交えて依頼された。これにはジャズ楽器の異形セレクション、バスーン、チューバ、ユーホニウムでソロをとっている変態LPでもしましょう!と答えておいた。

夜半の「ファーアウト」は6重奏プラスボーカルという編成、ベテランの金井さんと若手のセッションだ。ハードバップ時代の名曲、80年代のポップス、映画音楽から金井さん達が選んだ親しみ4ビートがこれまたリラクゼーションをもたらしてくれた。ボーカルは浴衣姿で歌っていた「手紙でも書こうか!」「マイ・フーリッシュ・ハート」がベストだった。金井さんの良く抜けるラッパサウンドの出番が少ないのは心残りであったが、「ファーアウト」の楽屋型雑然ムードは慢性金欠型ジャズテイストが漂ってきてこれにも好感を感じた。