Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

古いカフェにて

2012-12-28 12:32:03 | その他
先日の衆院選挙の前に府中街道を走っていた頃だった。初冬の枯れ木立が黄落の模様を織り成している景色に魅せられて、寄り道した玉川上水の付近で見つけた古い趣のカフェが「SHING TONG(シントン)」だ。近くには津田塾大や武蔵野美術大のキャンパスもある。清らかな水路の流れに沿って、こんもりとした広葉樹の緑地帯を長い歳月が至るところに作っている本来的な武蔵野らしいエリアである。この付近に住む人は三鷹にある井の頭公園などに隣接する地域に住む人と同じ様に、四季折々の風情にさぞかし得をした気分になることも多いのだろう。実に羨ましい。この「シントン」はその時同行していた連れによると、付近の大学へ通っていた時期にもすでにあったらしい。逆算すると1970年代にはオープンしていた老舗になる。

その少し前に寄っている国立駅南口前の路地にある「ナジャ」でも感じたのだが、女性経営のカフェというものには、非転向の一途を感じることが多い。団塊の世代の男達が身すぎ世すぎに流されているのに、信念を変えようとしない女性を見かけるケースがままある。ジャズカフェの分野にも、現在の消息は知らないが、明大前の「マイルス」向ヶ丘遊園の「ガロ」、稲毛の「CANDY」などへ立ち寄った時にも感じた女性経営者と同質の匂いがする。「シントン」のコーヒーはこれまたネルドリップの手間を惜しまない丁寧に点てたもので、香りも深いコクも両立したバランスのよい味わいが、昔ながらの変わらない地域客を獲得しているようだ。

この「シントン」は画廊も兼ねていてちょうど良質なアマチュア画家によるアクリル絵?の個展が開かれていた。珍しく巧拙を超えた笑いが直撃してくるような、感情に溢れた魅力の画風に感動する。作者は多分、店の隅に座っている帽子を被った年配の老婦人のようだ。直前に控えている都知事選挙のちょっとした話題がでたときに、昭和中・後期風の今となってはリベラリズム的硬骨言辞を弄して、猪瀬直樹を推奨している石原慎太郎や多分、そこへメディア誘導型コーンフォミズム丸出しで流れ込む東京都選挙民の在り方を嘆いていた。そういえば、玉川上水の辺りにあった選挙ポスターの猪瀬知事候補の写真、まなじりに黒いアイ・シャドーをスタイリストにでも塗られたのだろう、性質の悪い旗本奴みたいな顔をしていましたよ!と、その老婦人に教えてあげようと思ったが、話が通じないのと、連れにたしなめられるのを恐れて店を後にした。