Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

幻の青梅茶会

2011-09-28 08:26:08 | その他
移住する筈だった青梅行きが中止になってしまった。契約の二日前になって仲介する業者さんから電話があって家主さんが社員寮として使うことになったから悪しからず。。
という話で真意のほどはわからない。一度は快諾されて契約日まで決まったのにどういうことか?手付け金を渡してもいなかったから抗議してもしょうがないので諦めることになった。

採石場に出入りするダンプカーの通行が平日に多いという難点はあったが、広い山並みに開ける青空、辛うじて渓流の面影を保っている成木川のせせらぎ、河畔に自生している胡桃の大木、雑木林からにょっきりと梢を覗かせる北方系のポプラ、こういう環境に憧れていた。サンデッキの戸外に小さなスピーカーでもつないで休日の朝方にはベートーベンのカザルス・ゼルキンあたりの「魔笛の主題による12の変奏曲」でも流し聴きしたかったのに残念である。

一方でこの移住案には相当量のガラクタを整理すること等、ストレスや懸念材料も多かった。半面ホッとしたのも事実である。この頓挫をきっかけに今住んでいる日向薬師の陋屋をもっと軽量化して、庭や菜園もマメに整頓しようという気分になってきたのも幸いで、チャンスが再来するまで不要品の簡素化を行う生活を心がけることに路線変更をする。10月の1・2日は伊勢原市の大きなお祭り「道灌祭り」が行われる。妹が駅前通りでプチ洋装店をしていてそこの店前の道路際でもより分けた陶磁器・ランプ・椅子・文庫本なども並べて売ることにしている。憧れと引越しに伴うエネルギーと不安、このような不測の事態を裁定している神様の声にも落ち着いて耳を傾ける時なのかもしれない。

秋晴れの彼岸花終章

2011-09-27 15:58:17 | 自然
朝方のどんよりとした空がお昼近くになって一転、湿り気のない快晴になった。生ラーメンを茹でて半熟玉子と海苔と横の菜園から抜いたばかりの青葱をみじん切りしたシンプルな具の中華麺が昼食に。いつもの二宮町にある障害者福祉法人で卸している「鶏がらスープ」タイプの中華麺2個入り170円というやつだ。汗ばまない気候になってから汁ものが美味い。昨日もお昼は出品の応援に駆けつけてくれたオーディオ先輩のKさんと天麩羅蕎麦を食べる。大山の入り口にある「山そば」というぶっきら棒と蕎麦のボリウムに特色がある繁盛店だ。店主の無愛想を反映して蕎麦は何か市販の乾麺を茹でたようなボソッとした蕎麦粉純度の低い味だが、これが熱いカケ汁と馴染むことに最近になって気がついた。

中華麺による満腹後の運動をかねて日向渓谷沿いの畑地沿いに咲く終段階に近づいた彼岸花を探索してみることに。大山連山に降った大雨の余勢のせいか、渓流の水かさは増えている。少し上流にある虹鱒釣り場から流されて降りてきた残り鱒が潜んでいるような瀬脇の淀みをしばらく観察する。裏の空き地を掘り返して生きのよいミミズでも捕まえて即興渓流釣りにでも挑戦したくなる良い秋空である。畦沿いに最適と思われる彼岸花を何枚か撮ってみることに。馬頭漢音を囲むように咲くポイントはすでに花も褪せている。棚田の柿畑に群がる花は一度はなぎ倒されたのに好天の滋養を吸い込んだせいか?しゃんとして甦ったみたいだ。自分が愛好している白髯神社の小道を挟んで土手に点在する花はちょうど茎の張りもよい見ごろを迎えていて、この分では週末まで持ちそうな勢いを感じる。

近所の無人売店に丁度見かけた谷中生姜と玉葱を各100円で購入する。今夕の自炊メニューがこれで決まった。玉葱とジャガイモのパストラミハム炒め、豆腐を合えた煎り玉子、金山寺味噌添えの谷中生姜に決まりである!無人売店のはるか奥の方にある耕作地を眺めていて浮かんだ一句。

   腰曲がる農婦の背にも彼岸花(新)

三度目の秋景色

2011-09-24 20:30:37 | 自然
台風15号になぎ倒されたかと思われた彼岸花の様子を眺めに付近を歩いてみた。今年は寒い季節が長引いたせいか、彼岸花はまだまだ茎だけというエリアが多いことに気がつく。これを誤解して今年は彼岸花が少ないと嘆いているすれ違うハイカーさんの嘆息を耳にすることも多い。一眼レフカメラを持った中高年の会社員リタイア組とお見受けする人々で山里は、珍しく賑わっている秋分の祝日だ。彼らの多くは稲田の畦に咲く彼岸花の群落を目指している様子だ。

こちらはさすがに日向暮らしを少しは知っている利点を活かしOさんという日向川沿いにあるお百姓さんの畑地の傾斜面に咲く花園風秘密スポット等を逍遥する。ついでに咲き乱れるコスモスなども被写体に収めることで日向薬師らしい秋の景色を噛みしめることもできる。中世の鎌倉期に北条政子が日向薬師に参拝に出向いた時のコースという細い小道の「日陰道」等もついでに歩いてみた。小高い畑の畝に頭をのぞかせるさりげない風情の彼岸花はこの細い道に分があるようだ。

枝垂れ咲くハギは台風で見ごろを終えた。紫式部の実ははこの二日にまたがる冷涼な空気を経て紫を一層濃くしている。夏のうちに猛々しく増えた青紫蘇はすでに花芽ともいうべき穂を満載して、穂に連なって咲くミクロな花弁に潜む美味しい蜜へ群がるミツバチの集団もやはり秋がたけなわである。「日陰道」の土手になびいているススキを眺めていて去年の秋に撮って仕舞ってある画像を思い出した。九州の黒釉がたっぷり覆い尽くす壷に活けたススキが秋の深まりを感じさせる。四年前の中秋ころに契約を済ませ住みついたのが厳寒の一月。日向薬師で迎えた三度目の秋、慌しいけど季節の移ろいを脳裡に焼き付けておきたいと思っている。

57年前の映画雑誌

2011-09-21 20:45:36 | その他
ようやく名物の彼岸花が咲き揃う矢先に台風15号が暴風雨を運んできた。和歌山から遠州灘を越えて浜松に上陸、午後は東海、夕刻は関東・甲信越の全域が巻き込まれてしまった。彼岸花の茎はそう丈夫ではないから、台風が去った明日はかなりの量が倒れているにちがいない。近いうちに4年弱を過ごした神奈川の山里を去ることになった。今度は東京の西端ともいうべき青梅市に移住する。

過去から累積する不要品を如何に取捨するのか当面の悩みは大きい。台風の唸りをBGMに古い雑誌などを整理していたら、1954年当時のアメリカで発行されていた映画雑誌が紛れている。日本版「ダウンビート」「血と薔薇」「黒の手帳」「季刊銀花創刊号」等捨てがたい雑誌の一群に混じっていたものである。薄っぺらな雑誌の風体に反して登場するタレントの豪華陣容に改めて驚く。ジャズも映画もやはり50年代に尽きる。表紙を飾るショートヘアーの女性は歌手のドリス・デイだ。両腕を腰に添える仕草のなんと可愛らしいコケットリーだろうか!ページをめくるとマリリン・モンロー、リズ・テイラー、デビイ・レイノルズ、ローズマリー・クルーニーなどのスナップ写真が惜しげもなく掲載されている。男優陣ではバート・ランカスター、ジョン・ウエイン、ロック・ハドスンなどの活躍シーンも混じっていて飽きることがない。

こうした雑誌類は後年になって音楽や本の道楽が始まってからの収集品だが、少しマセ始めた中学生時代には憧れと畏怖を抱いた俳優達である。少年時代の横浜界隈には下町エリアに封切り洋画の上映から暫く経過した作品を2本立て位で放映する安価な二流映画館がけっこうあった。テアトル横浜、千代田劇場などがその類だが、洋画、洋楽志向の性癖はどうやらその時代に培ったアメリカ映画礼賛暮らしに刷り込まれているようである。今度移住する青梅では画廊茶房を始めるつもりだ。まあまあ大きなアルテックA7等の箱も設置して鳴らす傍らの部屋でこれらの捨て損ねている雑誌類の閲覧棚も整備しようと、あれこれ夢を素描していたら、台風が去ったらしく静かな秋夜が戻ってきた

沼津のあずみ野

2011-09-16 12:15:36 | その他
珍しく国道1号をきちんとしたドライブの昂揚を楽しまんと山坂道の曲折を辿って三島・沼津内浦界隈への少旅行を企てる。友人カップルの誘いに乗って前から予約されていたものだが、宿泊地の豪奢もさることながら、途中の若年期風粒立ちのよい名所巡りが挿入されていて楽しかった。箱根湯本の手前にあるパン屋「足柄麦師」にも寄れた。この店は若くして逝去された高橋さんという透徹したパン作りで名を馳せた方がてがけた伊勢原「ブノアトン」の姉妹店である。「ブノアトン」は名前が替わって働いていたお弟子さんのカップルで再開されている。箱根路を上るのに途中の食堂には寄らないで馥郁たる簡素なパンを運転しながらほお張るのも珍しい。箱根神社付近の松並木、芦ノ湖の湖畔を訪れるのも十数年ぶりだ。

箱根の長い峠を下っているとき、美味いコーヒーが呑みたくなって沼津にある「あずみ野」の名称を思いだす。このお店にはこちらなりの縁がある。沼津在のSさんという方が、四谷にあった「音の隠れ家」在庫のタンノイコーナー型ヨークを買ったことがあった。Sさんはもっと後期のゴージャスで大きなタンノイスピーカーを持っていたが、これを下取りにだして15インチゴールドの入った古めのタンノイを所望したのだ。そのSさんへの音楽的啓示を常日頃発信していたお店が「あずみ野」ということで、一度はその音に接してみたかった。Sさんをして敬服せしめた音の片鱗を味わいたい!急な思いつきは日ごろの癖みたいなもの。清水に実家のあるDさんに電話して所在を教わる。当日の宿泊場所へ近いお店ということで一行の快諾も得て寄り道する。「あずみ野」の店主さんの挙措を観察する。誰かに似ていると思って記憶のチップを弄っていて合点がいく。
吉祥寺のMさんである。Mさんはジャズの人、そこから形而下的胡散臭さを除去すると、清廉なアスケーゼ(禁欲)という語感を思い起こす「あずみ野」の店主さんの風貌に重なるようだ。タンノイゴールドの音をシルバーに近づけるという難題に挑み続けて30年!
当日聴いた音よりも翌日の午前に聴く音の直截性を中心とした変化に驚いて質問する。
カートリッジを差し替えたらしい。デッカのマーク1ステレオカートリッジをソースを不憫に思ってモノラルに替えたとのこと。前日の曖昧感は拭われてEMI盤だろうか?ブッシュカルテットのベートーベン、キャサリーン・フェリーのバッハ・ヘンデルアリア集などタンノイユニット、845真空管大型アンプの底力を知らしめる絶好の音源である。古典音楽を鳴らすと称したお店でこれまでまともな音に出会うことは皆無だった。しかし「あずみ野」はさりげなくも本格を地でいったコーヒー専門店である。沼津の西に映える 夕陽はいつみても気持を和らげる効用に満ちている。