Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

今年も

2011-07-31 19:17:28 | 自然
ハイビスカス、梔子、向日葵、百日紅、八月にふさわしい花を愛でる
にはすっきりとしないお天気が続いている。
青空にモクモクと沸き起こる積乱雲でも眺めたいと思っていても空は
鈍色で小雨さえ混じっている。

自家菜園の垣根越しに植えておいた朝顔も垣根に蔓を巻きつけてリズムを整えている様子だ。今朝はやっと二輪の朝顔が咲いたと思って何気なく横に目を移動したら、やはり遅かったサボテンの鉢植えが揃って真っ赤な花を咲かせている。
五月の好天日和に、沢山こびりついている新芽をこそぎ落としてみた。
この鉢をくれた知り合いは天性の丹精上手な人で、その人からアドバイスされたことを守っていると、花を駄目にすることもない。ろくすっぽ水も与えないのに、四年間も毎年咲いてくれるのはその人がもたらす人徳なのだろうと感謝している。

今年は意図して植えたものがどれも不調である。土の性格に長年かけて馴染んできたミントやローズマリーのようなハーブ類が繁茂し始めてきた。移住した年に植えてみた紫式部などもようやく花芽のつきがよくなってきたようだ。
サボテンはおおよそ二日咲くと静かに萎えてしぼんでしまう。もう一つの鉢にも植わっているのが、まもなく咲く気配を漂わせている。
明日から八月、晴れ渡った夏空を期待しながら、敷地の石垣に咲くとても大きなアマリリスは今年は何時に咲くのだろうと思案する日曜日だ。

百舌の蔵

2011-07-29 09:30:29 | その他
所用があって四谷見附まで出かける。曇り空で湿気も多いが、ここ
二年の酷暑に比べたら楽な7月の下旬である。
用を終えて四谷の交差点から幅の広い新宿通りを新宿駅まで歩く
ことにした。伊勢丹のある明治どおりまでが二キロの散歩コースだ。
表は無粋なビルが連なっているところだが、一歩路地裏へ入ると
三栄町も荒木町も昭和のしもた屋といった懐かしい家屋が点在する
静かな路地風情を味わえる町だ。

ちょうど、お昼時だから開店前の茶会記オーナーの福地君を呼び
出してみる。三時開店前の彼はたいてい、近所の丸正やセイフーで
夜のバータイムに使う食材の買出しでもしているだろう。
ふだんは電話にでない彼だが、やはり近所にいることがわかった。
四谷三丁目に近い「津の守坂」の交差点で落ち合うことにした。
彼に案内されて荒木町の外れにある一軒家カフェに向かう。
彼特有な言い回しを咀嚼すると、その店はNさん、つまり自分の
テイストに合うから是非案内したいらしい。
「津の守坂」は下がって行くと靖国通りと合流して、正面の高台が
市ヶ谷の自衛隊本部だ。

この坂を途中から左へ折れると錯綜とした荒木町の人家密集地帯へ
でくわす。そのあたりは有名な飲み屋街よりも東にあって、遮断する
急坂や行き止まりの路地があって迷路みたいなエリアである。
「百舌の蔵」は急な階段の崖沿いに建った瀟洒なビルで、ランチ等
もやっているカフェだが、染付け磁器を愛着している夫妻が経営している。
店内の一角は染付け磁器の青々した空気に染まっていて心地がよい。
見かけよりも大きな店内だけに、長居が煩わしいこともなさそう。
福地君も四谷三丁目に根が張ったようだ。結婚して食料補給も上手く
いっているのだろう。肌艶にハリがあって懸念する経営状況への心配も吹き飛んだ。
一時間ほどの茶話に弾んだあとは、盛り蕎麦を食べて駅へ向かう。
「百舌の蔵」主人とはかなりの頻度で外苑東通り付近の街路ですれ違っていることに後から気がついた。
また訪れてゆっくりしたい隠れ名所として心のポケットに仕舞いこむことにした。

厭世な顔

2011-07-26 11:50:40 | その他
地デジ難民の一人になってしまった。日向へ移住してからTVを見る
生活がなくなってしまった。もともと山の壁に電波がぶつかって写り
が悪い地域でアンテナが長い経路を辿ってきているが、どこかで断線
している。これを治そうと思っているうちに月日が経ってしまった。
数10万人に及ぶ地デジ難民と称されるうちの一人になったようだが、
これまでの数年となにも変わったことはないと実感する切り替えの
翌朝である。世の激変も何処吹く風、歯を磨き、顔を洗い、珈琲をす
すって、便意を催すという日常生活も乱れることはないようだ。

パソコンと新聞があればこと足りると思って寝床でも精読する癖がつ
いた。訃報記事に目がつくのも自分がそのような年齢になったせいか
?ついつい俳優・原田芳雄を偲ぶ若松孝二監督の思い出話などを丹念に読んでしまう。
少し前は立川の柴崎町で投身した音楽評論家の中村とうようさんの
訃報も知る。自分もひとかどの音楽文化青年だった時もあって、彼が
編集長をしていた「ミュージックマガジン」などを、愛読する時代が
あった。世間のカルチャーとの共時性でみると、ジャズ雑誌が一番、
無思想でノンポリっぽく、とうようさんが主宰していたかの雑誌は
諸分野の時代的活性を上手く編集に反映していたようだ。
自分が最初にオフィスを構えたのが、渋谷・桜丘町の一角である。
駅の南口からJTBビルの前を代官山方向に進む急坂がある。
これに喘ぐ寸前あたりに広東料理で名高い「南国酒家」があってこの
裏手に親和ビルがあった。

この古いビルに「ミュージックマガジン社」があることを知ったのは
しばらくしてからだ。新聞などで知る中村とうようさんの顔を拝見し
たのは、ビル内ではなく246のJRガード下にある狭小極まりない
「とんかつ三裕」の店内で二回だけあった。
ホワイトキャッスルという油の缶を山積みする小汚い「三裕」は食味
の不毛地帯渋谷を救ってくれる隠れた名店だった。
とうようさんの人相を二度眺めて刷り込まれた印象が「厭世」である。
美味いロースかつ定食を食べていても、頬が緩むこともない。
目はユダヤ人のような眼光、心の妥協を許さない人物だと思った。
その後、ミュージックマガジン社は神田へ移転、自分も麻布十番等を
変転してから渋谷へ戻ったせいか、「三裕」で顔を会わせることもなくなった。
というより数年後休みがちになった「三裕」は店をたたんでしまった。
新聞の訃報記事を読んで真っ先に浮かんだのが、トンカツ屋においても締まった顔が崩れない中村とうようさんの容貌だった。


99歳の気骨

2011-07-24 10:05:39 | その他
たまたま先週ブックオフで105円の文庫本をまとめ買いした。
その中の一冊が「ボケ老人の孤独な散歩」新藤兼人である。
赤坂、北青山、外苑など自分にも馴染んだ空気のエリアが登場
していて面白い。晩年の荷風についての性嗜好、市川から浅草
への日参暮らしを鋭利な監督的視点で考証する箇所には、何度
も笑いを誘われる。天麩羅が有名な「尾張屋」へ定刻きっかり
と同じ席に座る荷風、メニューは決まって「かしわ蕎麦」だ。
相当に体が弱っていて店の厠で大便の用を足している時に、ズ
ボンを脱いだまま卒倒して助けられるなんてシーンもある。

この日記は題と違って自意識があり余ってボケることのできない
新藤監督の頭と体というもののズレがとてもよく描かれている。
ちょうど、この本の後半を寝床で読みながら朝刊を拾い読みして
いたら、奇縁にも新藤監督のインタビューが登場していた。
今年で99歳だそうである。
最期の監督作品と宣言している大竹しのぶ主演「一枚のハガキ」
についての述懐記事だ。徴用にあったのが32歳、一緒に戦地へ
赴いた100人のうち生還できたのは、たったの6人で新藤監督
はそのうちの一人とのこと。お国のためなどと称した欺瞞をこの
老監督は何度も映像で告発してきた。テアトル新宿などで公開中
の「一枚のハガキ」、円熟期を迎えた大竹しのぶの演技を是非共
見たくなった。

脇役の味

2011-07-22 09:45:32 | 
夕べは暑さが引いてとてもしのぎやすかった。冷蔵庫を明けたら
メインとなる食材の買い置きがない。ちょうどカレールーと挽肉
があったので、茄子、玉葱などを使った「茄子の挽肉カレー」を
思いつく。ひね生姜とニンニクを刻み、玉葱もみじん切りする。
これらに挽肉を加えて炒める。炒めた具に水を足して沸騰するまで
煮込む。浮いてきたアクを除いてしばらく弱火で煮てから火を止め
て買い置きのルーを溶かす。これにナイル商会製の缶入りカレー粉
を大匙スプーン一杯だけブレンドするのが、カレー作りのおまじな
いめいたいつもの儀式だ。昔はSBの赤い缶を使っていたが、いま
はナイルの紺と黄色の模様と古式なロゴに惹かれている。

出来上がったこのカレーの材料費は、茄子が5本で100円これは
農家の直売所、うち2本を使用。玉葱は同じく農家のものが6個で
100円うち2個を使用。挽肉は150gで200円という具合だ。
自炊は手間を考えると安いのか高いのか分らなくなってしまうが、
たまに駅の近くで投げやり気味にかっ食らう、「なか卯」「すきや」
で供されるカレーもどき!よりもレベルがはるか上であるのは間違
いないと自己満足に浸って食べる夏の夕暮れだ。
なにか漬物をと思ってあたりを見回す。北海道物産フェアーみたいな
スーパーマーケットの特設会場で買った「キムチ」のパックはあるが、
同じものを連日食べることはしない主義だ。そこで思いついた副菜が
この前漬けたラッキョウだ。およそ一月経って、柄も細身だからお酢
も透り始めるころだ。瓶から10粒ほど取り出してカレーライスにリ
ズムをつける。今年は砂糖を増やしたラッキョウ漬け、どんなものか
と不安な試食だが酢味はマイルドで歯ごたえにも満足、たまの自炊食
に、名脇役が登場の感あり。