Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

日曜異変

2015-11-16 10:09:02 | その他

金曜日の午後に店を開けたが山元町商店街は相変わらず賑わいというものを欠いている。しかし質の濃い珍客はどんな寂れた市中にもうごめいているものでこの日のお客さんはたった二人ながら良質なお客さんに恵まれる!一人は70年代後期から日本ジャズブームを仕掛けたTBMレーベルの元社長のFさん。もう一人は12月初めに帰国するスペイン青年のLさんである。しめて売り上げはなんと800円。

これは自慢しているのじゃなく嘆いているのだが、現実離れしすぎて実感も湧いてこない売上で他人には自慢に聞こえるのではないかと危惧もしている。土日の巻き返しを図る為に思案しながら啜っている夜食ラーメンが「白河ラーメン弘流」の大盛りでこれの値段は990円。売上は吹っ飛ぶけど、こういう状況に1個70円の業務スーパーで買ってきたインスタントラーメンで最適化を計らないところが自分らしいと苦笑している。

Fさんがこんどの店から至近にある大衆文豪、吉川英治の幼年生息エリアに住んでいたなんて初耳である。XRCD(ハイレゾ)ジャズの使徒行伝も兼ねて専門バイト生活もしているという自転車を操るFさん、とても古稀を越えた年には見えずその背姿にはやはりジャズ人生を物語る哀感が漂っていた。

夜半はスペイン青年のLさんがくれた岩波文庫、南米作家コルタサルの短編集を読みながらHさん宅で仮眠。「南部高速道路」の乾いたヌーボーロマン風描写に魅せられる。パリ郊外の未曾有大渋滞がもたらす人間模様の精緻極まるワンショットシーンにドキドキしながら感情移入させられる。こういう出口なき人生の無限連鎖小説を読んだ後だから、土日の店に臨む姿勢も腰が据わっている。苦の後には楽もあると腹をくくっていたせいか、特に憂慮の濃い日曜日に待望の反転現象が起きた。開店22日目に初めて客数が12人を突破する。コネ客が6人に対し新規客が6人、これから新客が増えていく兆しが見えたことが嬉しい。さぼらないで開店日を厳守しようと思いながら洗いものをするがいささか人間疲れを覚える日曜日の夜更けになった。