Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

便利と不便の狭間 プジョーのモペットで走る

2016-08-18 22:31:12 | ラジオ亭便り

ラジオ亭は横浜の中心部に近いところにあるのだが、どこを辿っても坂道を登らないと辿り着けないという不便なロケーションにある。そこで足代わりの用を足せるスクーターを物色していたが相変わらずの資金不足が恒常化していて優先順位の片隅に追いやられていた。バイクマガジンのカタログを指を咥えて眺める一年が虚しく経過する頃、ようやくよい話が巡ってきた。

、横浜のSさんの親族が不必要になって放置していた原付モペットを手放すことに遭遇したのだ。フランス製プジョー社が作ったVouge SXという原付と自転車を兼備した異形モペットで普通の街中では滅多に見かけることもない珍種である。これを格安で譲ってもらうことになった。ところが街の中にあるバイクショップでは整備を請け負ってくれる業者がいない。やっと見つけた杉田にあるこの手の輸入珍種を扱う店に放置期間に劣化した箇所を総点検してもらう事になった。

やっと整備が終えたこの珍種原付を電車に乗って受け取りに行き、帰りは国道16号を自走してラジオ亭まで運ぶという8月15日になった。これでもバイク歴は長い方だが乗った体感感触が実にユニークだ。スタートの為のイグニッションキーがない。これはセルモーターなんて便利機能はないのは理解できるけど、キックペダルも付いていない?どうするのと思ったらグリップの左右に付属しているチョークと圧調整のレバーをオンにして自転車みたいなペダルを漕いで回転させるのだ。乾いたエクゾーストノイズを発してこの珍種は3馬力強のプアーなスペックながら健気に走る。一番不安だった横浜、根岸の不動坂を上りきれるのか?という懸念もクリアーした。坂の途中で一息入れてしまうとトルク不足が露呈してしまうが40キロペースを維持できるのでようやく安心する。

ガソリン補給時の専用オイルを別添必携するだの、車輪をロックする為の金属棒を抜き変えたり、ずいぶんとプリミティブなところが多いバイクだが、全てにスムージーな日本型原付とは異質なことに気がついた。日本車の便利性はバイク世界でも極限まで発達している。それから比べたらいかにも古い機能だねと思わせるモペットだが、これはこれで人間の備える五感に近いところに技術的体現を施しているようだから古さを感じない。入手したこのモペットで元町商店街の北側に位置する掘割川沿いの路地を走って、スーパーユニオン辺りに食材を仕入れに行く日も近い事だろう。