Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

流れゆく雲

2011-12-28 18:32:01 | その他
数日来の冷え込みのせいか、鼻風邪を引いて息苦しい。今日はバイト先の現場が仕事納めになった。風邪気味での労働が三日続いたがなんとか肉体労働という荒療治で悪化は免れている。

整備した遺跡の遺構跡を今日はラジコンヘリから空撮した。その前の整地と養生に追いかけられ作業員はあたふたしている。遮るものがない放射冷却のせいで、朝の霜柱が地面で氷結している。これが溶け始めると地表が泥濘になってしまう。湧き出すような泥濘を一輪車で廃土集積場まで運ぶが、途中で滑ってバランスを崩すこともしばしば動作が鈍くなる一輪車のゴムタイヤにまとわりつく汚泥を除くのも一苦労。時間内を多数の作業員が人海戦術で整地したおかげで、遺構地は見違えるように整地された。午前中の泥運びとジョレン鍬による泥の駆除作業は思いのほか厳しく下着のTシャツが汗にまみれてしまう。

ようやく辿りついた昼休憩でホッとする。休憩を挟んで午後はシートをかけたり道具類の撤退など越年の準備になる。3時からはこの現場の忘年会に参加する。ジェンダー労働という言葉を思い起こす女性グループの質がよくエレガンスな動きを垣間見る。豚汁やサラダ、おつまみもふんだんに用意できていて、55名の作業員も穏やかに2011年の区切りを思い思いに味わっているようだ。先日煮込んだ金柑のシロップ煮もどうかなと思いつつ2パックを寄進。これも巡回しているうちに無事にカラッポになったようだ。

冬至からおよそ一週間、4時過ぎの空が少しづつ明るくなっている。大山に連なる低山の背後を流れていく雲の表情は今日も多彩で、この遺跡現場の囲い地に続いている、自分がワイエス的風景と思いこんでいる空き地を眺めて、しばし私事の憂鬱を紛らわすことに。

イブの休日

2011-12-24 20:38:46 | その他
朝、起きたときの室温が7℃、これから一月にかけてこの伊勢原の山里付近では5℃から2℃くらいの間を行ったり来たりする時候になる。遺跡のバイトが3連休のおかげか、二日ほど前の屈みこみ作業中に再発した痔痛がすっかり治まって安堵する。あの日は早退して東海大学前にある「さざんか」と名前を変えた自称天然温泉スーパー銭湯へクルマで直行したことがよかった。戸外労働というのは大らかで良い面があるが、身体感覚の面ではとてもナーバスである。暑い、寒いといった感覚に痛いとか痒い感覚などが加算されたら、たちまち動作に反映してしまう。二年に一度くらい繰り返す痔痛も霜がたっぷり降りてぬかっている地面からの冷気にどうやら影響されたみたいだ。

イブの24日は45年の交遊が続くHさんが来訪する。大型のスクーターを飛ばして横浜北部から35キロの道を伊勢原までやってくる。差し入れは山形産の林檎、吉野家の牛丼、岐阜県の通販コーヒー「コーヒーばかの店」が焙煎している薫り高い同店特製になる「秋のセレナーデ」という名のレギュラーコーヒー粉だ。先日、昔の女友達が独居を案じてたまに送ってくれている「煎茶」「焙じ茶」もたっぷりと揃っているからこの珈琲を加えたら正月新年はなにも要らない嬉しい気分になってくる。こちらのお返しは金柑のシロップ煮を持っていってもらう。Hさんとの談義はいつもエロい話から構造改革に絡んだ政治局面、さらに遠くでは若い時分にかなりのインパクトを受けた埴谷雄高、吉本隆明関連の思想話まで飛び出してくるという気のおけない内容でいつも喜びが湧いてくる貴重なるひとときだと思っている。
夕刻、隣家の駄犬たちに吼えられながら彼が辞したあとは、冬を迎えてにわか柑橘王国になってきた我が家の恒例柚子ジャム作りの材料になる「鬼柚子」をお向かいの薬師売店で発見、三個で300円とこの異形なるフォルムの大柚子が格安だ。湯河原のみかんが終わって今度は大磯産のミカンも陳列している。こちらは一袋200円、大磯のみかんは酸味が厚くて垢抜けた味がしないところが魅力だ。夜半の冷え込みがとても強いイブの晩になったが、デッカスピーカーのBGMはLPの「クリスマス協奏曲集」、イギリスのホグウッドが指揮するアンシエント管弦楽団が演奏するコレルリ、トレルリ、ヘンデル、ゴセックなどの清らかな牧歌趣味が混じったクリスマスにふさわしい曲を大きな音で堪能する。

金柑のシロップ煮

2011-12-20 20:06:58 | 
遺跡発掘の土方バイトへ出かけている為に季節に応じた家事仕事が無理かと思っていたら、かえってフットワークが軽くなった。シャベルや鍬で土と格闘しているトレーニング成果が実って恒例の金柑をもいで甘いシロップ煮を作る歳末年中行事も今年は難なくクリアーできた。いつもは横着な気持が優先して心は動いても体が動かないという悪癖があったのだ。敷地の生垣沿いにある金柑の大木が今年はことのほか大粒の実を密生させている。

お百姓出身の家主は雑草や乱雑な庭を極度に忌避している。金柑の大木も枝ぶりがすっきりしないからお正月を迎える前に剪定しょうと持ちかけてきた。それなら実がついたままの枝をばっさりと剪定してもらって、実は自分でもいで残った枝は自分で処理すると対案をだしたら承諾した。その結果、大きなザルに4杯の金柑の実が大収穫となった。大鍋で沸騰させて茹でこぼしを繰り返すこと三回、灰汁を取ってまろやかに仕立てる為の面倒な通過儀礼だ。これを自分でするかしないかが伊勢原の田舎で暮らすスロウライフのメルクマールだと思っている。灰汁を取った後、大鍋にヒタヒタの水を加えて弱火でトロトロと気長に煮込むことおよそ二時間!砂糖の三温糖は大鍋に一キロ位を煮詰まった最期の段階で加えて完成だ。
18日の日曜は管球アンプと英デッカのコーナー型スピーカーでそれぞれが持ち寄ったクリスマスバージョンのジャズ曲を楽しむ会を行った。ハリー・アレン、チェット・ベイカー、ディーン・マーチン、ヘリー・ロレイン、オーディオのテクノロジーフェティシズムから解脱した桜井先生、佐々木さんといったジャズのテイストが本当にわかっている人が選び抜いた曲ばかりで一同は大満足。女性グループが帰ったあと、自分と上記の二人にて小岩井ヨーグルトの上に深夜に煮上がった金柑のシロップ煮をデザートにして毒味することにする。評判は上々!作りすぎたシロップ煮を小瓶に詰めて歳末の十日間のうちに親しい縁者に手渡す算段を考えている。


骸骨の出土

2011-12-14 20:22:46 | その他
12月は普通、乾季に属していて雨が少ない筈だが今年は雨がよく降る。遺跡発掘の土方バイトは雨に左右されるので雨で仕事が中止した時は、もっぱらかっての自分の商売だったPA機材の残骸物をネットオークションで販売している。

今日も雨で土方が流れたのを幸いにけっこうな数の落札済みのオーディオ製品やPA機材を梱包作業にいそしむことにした。機材の点検、現況解説、画像撮り、落札者とのメール応答、運送会社への持込と全て個人の技を駆使した原始的零細ビジネスを地でいっている。梱包資材の段ボールなども近在にある大手スーパーの廃棄場所で必要数だけ失敬してきてなんとかなっているから不思議だ。これだけセコク意識化していればボケル心配もないと一人苦笑いすることもあるくらいだ。昨日はよく晴れて土方仕事もはかどった。1メートルくらいの深い溝を掘る作業に駆り出され崩した残土を掻きだす汗みどろな労働の途中に、誰かが朽ちかけた頭骸骨を堀あてた。歯の一部もついた頭蓋骨だ。

先日、墓石が見つかって作業員仲間の一人がお線香を手向けた場所の土中から発見されたもので、昔の土葬はずいぶん浅めな場所に埋葬するものだと思った。縁起を恐れて発見場所にお神酒を持ってきて供える管理職の仕草を見ながら、自分もそこを通るたびに合掌する殊勝な心理を呼ぶから不思議なものである。埋葬された時代は近世の村人だろうか?竹薮に近い窪地の墓があった場所も今や自動車専用道の計画公有地だ。初冬の「綿虫」が空に舞っているそんな昨日の頭蓋骨風景を思い出しながらパソコンに向かっている本日の内務労働のBGMはグレゴリア聖歌。シロス合唱団の男性修道士が幽遠にハモっているクリスマス聖週間に歌う聖務曲集だ。昨日、横目でみた名も知れぬ頭蓋骨へのささやかな手向けの気持で聞いている。

雨休みの午後

2011-12-06 20:36:03 | その他
冬場になっているのに遺跡発掘という名の土方バイトへ出かける日は下着の着替えを持って行く。汗と冷気が紙一重で均衡している戸外労働は初めての体験だ。地面をすこしづつ掘り下げる道具は角型スコップとジョレン鍬の二種類で、これを根気よく連続して数時間も使っていると汗が噴きでる。木綿のTシャツから水分が滴るくらいの汗をかくこともある。噴き出た汗をかいたまま仕事を続けているうちは良いが、中断すると今度は外気の低温に直撃されることになる。体温の調節が狂って風邪を引く年配者もいるが、いまのところ難を逃れて土方仕事に専心できている。

自動車には暖気運転といってイグニッションキイをスタートしてしばらくエンジン回転を整える習慣があるが、土方労働で失速しない為にはこのアイドリングと同じように体を慣らすこと、汗の対策処理が大切という教訓をこの2週間で学んだ。よい年をして酷な仕事を!と哀れむ人も予想されるが、慣れればラクなものである。心臓が早鐘を打たないペースを維持しつつ、持ち前の親から授かった丈夫な足・腰・腕を無心にポジティブに使える喜びは大きい。週が替わって二日目の今日も曇天の薄ら寒さを感じながら、角型スコップで地面を砕いているといつのまにか、大量の汗が噴きだす。午後からの仕事に備えて汗まみれのTシャツを昼休みに交換する。朝の時間帯で感じていた体の重みがいつのまに消えている。午後3時までの2時間続く土方仕事は時間が長いね!などと、やはり定年退職して体がまだまだ丈夫な同じ年配の仲間とボヤキ、笑うことも貴重な気の紛れに違いない。一息つこうと雲の多い空を仰いでいたら、大粒の雨が予報どおりの時間に天から落ちてくる。

用地を囲む竹藪でしばらく雨宿りをするが、管理者が作業中止を告げて思わぬところで早上がり労働になってしまった。帰宅してコーヒーを飲み、ミカンを食べ、数日前に入手した沖縄・壷屋の「末吉窯」作になる魚紋抱瓶をしばし眺める。類型的な作ながら、厚手の土味がよい、そして跳ねる魚の印刻の線描がこれまた土方仕事ぽくてよい。490円で買った沖縄民芸の抱瓶を眺める時間を天の恵みで与えられた早上がりの午後である。