Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

新旧の楽しみ

2012-12-06 10:53:47 | JAZZ

足指の憂鬱が遠のいたせいもあるが、仕事が休みになるとよく散歩してジャズ系のCDやLPや本を漁ってきては楽しんでいる。12月になって時雨模様の日とよく晴れた日が入れ替わりにやって来て、冬はしだいに深まっているようだ。今朝はカーテン越しに柔らかい陽が入ってきて室温は15℃とうっすらと暖かい午前を迎えている。この気温による気分がよいせいか、北の部屋に入ってフィッシャー社の真空管アンプを温めながら、きのう頂いたばかりの信州の上田にある信州珈琲工房が焙煎した「上高地ブレンド」を味わっている。愛好している札幌・宮越屋コーヒー店、神戸萩原コーヒー店などの名高い焙煎珈琲に優るとも劣らないコクも香りも文句のつけようがない味である。どこかで聞いたことがある沸し温度の85℃鉄則維持と蒸らしながらの丁寧注湯に注意していれば、良いコーヒーも煎茶も良い素性に基づく味をいつも齎してくれるものと確信している。コーヒーを飲みながら聴く最近の収穫CDは新旧の対極的ソースだ。

カレン・ソウザはデビュー間もないシンガーで「ホテル・ソウザ」というタイトルのこのCDは、ジャズ友、ドクター桜井氏の推薦によるもの。新宿のディスクユニオンではよく売れている2012年録音の新譜である。このCDを聴いた印象ではデッカのビンテージスピーカーよりも、同じ英国製のスピーカーだったら、B&WやKEFの現代版低能率スピーカーで、パワーのある片チャンネルで少なくとも100W以上のアンプが合いそうだ。この新人シンガーの魅力は甘くてくぐもったハスキーボイスだろう。ちょうどオランダのローラ・フィジーがデビューした頃の声を思いだした。ローラ・フィジーから妖艶を引いたような少しモノトーンな声質である。ドクター桜井氏の弁では「マイ・フーリッシュ・ハート」などのジャズ曲がお薦めだったが、ポップス志向な「ブレイク・マイ・ハート」「アイブ・ゴット・イッツ・バッド」等の曲には不機嫌な女子の中の愛らしさがちょっぴりと顔をだして愛しい気分にさせられる。ベースもピアノもバックバンドがとてもよく弾んでいるジャズ的に小気味のよい「ウエイク・アップ」「フル・ムーン」なども好きな曲で、このシンガーにはしばらく目を離せなくなりそうだ。

旧作の再発CD「メッセージ・フロム・ハンブロ」は1956年というジャズにとっては当り年に出たコロンビア盤のLPが初出らしい。子供の頃、よく馴染んでいてナット・キング・コールが歌った「ザ・ロンリー・ワン」が入っている。モダンジャズという先験主義の予断知識に毒されていた若年時期だったら、なかなか目に入ってこない色彩が薄いLPだ。恥ずかしながら、キングコールが歌っている哀愁に溢れたこの曲の作者が、レニー・ハンブロだとはこの年になるまで知らなかった。アルト・サックスというよりもサクソホーンという語感が吹奏感に滲む優美と知性とが上手く溶け込んだ名演だ。アート・ペッパーやディック・ヘイムズで愛好している「イマジネーション」これに期待したが、フルートに差し替えたハンブロはやはり魅力半減だ。その代わりに、これまたディックヘイムズが歌っている「ムーンライト・ビケイム・ユー」が、ハンブロのアルト、サイドメンのギター、ディック・ガルシアのソロも伴奏もおつりがくるくらいの名演奏である。コロンビアのモノラル時代のLPが侮れないことは、前から知っていたが、これなどもCDソースではなく、どこか品揃えの豊富な店でLPで買って、モノラルカートリッジの分厚い音で堪能すべきレコードだと改めて思った。