Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

大人の遊び精神

2016-02-18 10:10:12 | ラジオ亭便り

散歩好きなドクター桜井さんは遠方の板橋区役所付近にある炒飯の美味な店があると聞けばすぐ飛んで行くし、レコード漁りのついでに繁華街の古着屋、雑貨屋などを物色するような未だに少年風フレキシブルを失っていない方である。自分なども本来、そういう気質を十分にもっているが最近は儲からない店をはじめたりいつも脱線ばかりしているから常に生活の下流的貧窮現象がつきまとっていて儘ならない生活を送っている。その粋人、ドクター桜井さんが見聞した最新海外白人ボーカリストの新譜CDコンサートというのを「横濱ラジオ亭」でつい最近行った。

マイ皿の大家佐々木さんは織部皿の力感に満ちた作家モノを持参して「横濱ラジオ亭昭和風ナポリタン」をオーダーしている。ドクター桜井さんはマイ皿にヒントを得たわけではないだろうが、CDを流すためのマイシステムを荻窪からリックに担いでやってきた。1960年代を彷彿させるジュークボックスを模したレプリカ品だ。桜井さんはこれを若者が集まっているDSショップの「ビレッジバンガード」と「ドンキホーテ」で見つけている。結果的に値段が安い方の「ドンキホーテ」で購入したとの弁である。荻窪の桜井邸地下室にはゴージャスな海外オーディオが鎮座している。それらに混じってバディー・リー人形などの玩具系アメリカングッズもたくさんあるのだがこのキッチュな小型ジュークボックスはいかにも其の部屋に調和しそうな雰囲気である。ハイエンド再生装置とセレブ系家具調度類でバリアのような冷涼空間を作って乙に構えている偏差値型オーディオ趣味人と桜井さんを分ける喫水線はこのへんにありそうだ?と「生活空気大鑑定家」の自分流分析である。

このレプリカ品、小さな8センチ程度のフルレンジスピーカーの駄ものが内蔵してあるらしい。しかし再生音はそれなりと思っていたらこれが間違いであることに途中から気がつく。PC装置の付属スピーカーに見られるような広域のチャリチャリ感がない。ボーカル音像を支える背後の空気層が厚い。安物はそれなり!という先入観は正しいが正しくもないということを感じた一瞬である。スペインのアンドレア・モティス、エバ・フェルナンデス、カナダ・北米圏のダイアナ・パントン等桜井さんがぞっこんになっているボーカリストのオンパレードをしばらく楽しませていただくCDコンサートになった。イタリアのチアラ・パンカルディも初めて聴く。一時期、来日したロバータ・ガンバリーニのように正しく清く強い歌い方とは異なるジャズの持つルーズテイストを感じさせる好きなウオームトーンである。

参加者10名、趣味の雑談への脱線、私的ジャズ感の話題飛躍などの点で、よくあるジャズカフェにおける啓蒙イベントとの違いが歴然とする大人の遊び時間を過ごすことができた。次回は2月27日(土)「古めなシャンソンを聞く会」14時~17時 飲食付き1500円会費。


マイ皿異変 ラジオ亭近況

2016-02-08 19:27:23 | ラジオ亭便り

昨年に株ごと引き抜いてもらってきたジャーマンアイリスが季節を錯覚したらしい。公営アパートの専用庭で大きな茎を深く埋めずに地面から見える程度に植えておいた。乾いた荒れ地が好きで寒さにも強いというこのゲルマニカ(西洋菖蒲の一種)は日本の菖蒲類と同じように5月、6月が花頃というのに数カ月も季節を間違えるとは。。。これを窓辺に活けて背後の冬空を眺めるという一月下旬の一週間だった。横濱ラジオ亭が位置する山元町商店街は如月の二月を迎えてシャッターストリート化した街並みが余計に寒々しい。

しかしラジオ亭のある一角は小さな冬の灯を絶やさない程度に賑わい始めている。鎌倉から週末だけ食材の応援にやってくる本来はファッションコーディネータの専門家だったN女さんが手がける昭和調スパゲティナポリタン、フレンチトースト、これの作り方が丁寧なせいか訪問客のリピートオーダーが少しずつ増え始めている。高級自転車に乗って運動を兼ねてやってくる常連のSさんはラジオ亭の音というものの触感を味わえる数少ない共鳴者の代表みたいな人物である。そのSさんがドでかいキャンバス地のバッグを担いで珍しくバス便を利用してやってきた。フード献立を始めたので犠牲者になって伸びない売上に協力してほしいとの懇願を受け入れての来訪である。Sさんのマイ箸、マイフォークの習慣は以前から外出時に同行して熟知している。

しかし今度は大型バッグに潜ませてきたマイ大皿という凄物の登場だ。その大皿は40センチ弱の角皿だ。沖縄の民芸皿で器体はとてつもなく分厚い。2キロは優にある重さが如何にもSさん好みの大作品である。明治42年生まれの小橋川永昌(仁王窯)が絵付に関わっていると思える奇抜で斬新な勢いが溢れている幾何学的線描色絵皿だ。小橋川という大家は学術文献によると32歳から付近に住んでいたお婆さんから赤絵の土の配合のヒントを得たらしい。これが途絶えていた沖縄赤絵の復興をもたらした功績があるとはやはり赤嶺先生の懇切な解説に登場する話だ。

Sさんに益子や民芸系和陶器の火をつけた張本人はこの自分だがSさんは普段使いでこのような凄物をここ数年間にどんどんゲットしている。自由奔放なアバンギャルド精神さえ感じさせるこの大皿に盛り付けたナポリタンをしばし眺めながらSさんには追い越された!との実感が深まる。翌日はフレンチトースト用に持ってきたオブジェがかった織部皿、小さな茶房のフリー精神ここにあり!2月14日の日曜日は「ドクター桜井の海外ボーカリスト特集」というCDコンサートがある。この日はN女さん、自分もSさんにあやかった拘りのマイ皿で遊んでやろうと今から選出に励みだしているところである。