Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

沼津「あずみ野」への道草から

2016-01-18 19:08:18 | ラジオ亭便り

2016年に年が変わる直前の大晦日に西伊豆・松崎の湯治場を目指す途中で沼津の「あずみ野」へ寄る。二年ぶりである。三島在の柿田川の湧水公園をしばらく眺めて湧水というものの始原美を讃えてから、こんどは音と音楽のあり得るべき最良の寄り添い方の見本を近くの沼津にて習得するという贅沢で稀な機会である。

すでに店は正月休暇にはいっているがマスターは心よく臨時専用席をセットしてくれる。来訪の電話を得てから845プッシュプルの大型メインアンプは十分にウオームアップされていた。このアンプとタンノイコーナーヨークのオリジナルスピーカーゴールドバージョン、デッカマーク1によるアナログLP再生は私が好んでいるバッハ、モーツアルトのお任せ選曲だが、ここ3年で聞いた同店の再生音としては最良のレベルを達成していることに途中から気が付く。ジャズが好きな自分を気遣ってエマーシー盤のクリフォード・ブラウンバンドでサラ・ボーンが歌うLPをかけてくれたがサラボーンのだみ声も音像はリアルにコッテリとして太く迫ってくる。なおかつ音場に遠近して重なる各楽器の明瞭性のグラデーションが素晴らしい。

ジャズが苦手というタンノイについてよく聞く定説も一般論でしかないと思い知る。オーディオ最盛時代の苦楽を得てきたマスターだが、自分が良いと思った器物への精神注入はやはり半端ではない。そのマスターが愛用しているマルーンカラーのボルボ240GL等も優に20年は経過している代物だ。オーディオがわかる人がどんどん減ってきている現況を嘆いてはいるが、近在に跋扈し始めている「コメダ珈琲」等に客を奪われるという難局面もきっとあることだろう。しかし本格的な音楽再生、無垢材の調度類、個性の陶磁カップ、時間に腐食されない同店ならではのメリットに磨きをかけてもらいたいという気持ちで西海岸の山道を目指すことにする。