Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

ビル エヴァンスの映画で思い出したこと①

2019-06-30 03:42:47 | ラジオ亭便り
子供の時分にジャズ音楽に出会った。アート ブレーキーとジャズメッセンジャーズのヒット曲「モーニン」が巷を席捲した時期だ。その頃好きになったジャズピアニストには近くに住む高校生だったお兄さんから教わったセロニアス モンクやデイブ ブルーベックがいたが、麗しいブルーベックはともかくとしてモンクというピアニストが弾く、当時流行った「ブルーモンク」のようなけっしてメロディーが流麗とは言えない即興ジャズが何故心を捉えたのか今でも不思議だ。

少しジャズを意識して聴く事を覚えたハイティーンになってバド パウエル、ソニー クラーク、ビル エヴァンスの音楽と出会わなければジャズピアノ好きな今の自分はなかった。その面で早熟なお兄さんのモンク鑑賞という背伸び的ジャズ指南を受けた契機は分からないなりにとても大きな意義があったと思っている。

5月のGWに横浜伊勢佐木町にある小さな映画館「シネマリン」にビルエヴァンスを描いた「タイムリメンバード」を観に出かけた。エヴァンス本人の生前のインタビューなども登場するというブルーススピーゲル監督のドキュメント映画である。キャパが100席程度の小さな小屋でアンダーレイテッドなマニア映画だからすぐ入場可能と甘く見ていたらとんでもない。自分と同じように若い頃からジャズに精気を抜かれて実人生との折り合いをどこかで欠いたような老境人種が溢れかえっていて入場制限にあってしまった。確か上映が始まった二日後である。

顔見知りのサイレント映画サポート運動をしているロシア人に日本語を教えている本牧在住のTさんも穏やかそうな初老の在日アメリカ黒人のボーイフレンドと連れ立って来て挨拶を交わしたらやはり入場できなかったという話である。しかしようやく数日経った金曜日に映画との対面が実現できた。
パンフレットのフレーズにエヴァンスの音楽は100年保つ風の言葉があったが、息の長い人気はこうした映画にも反映しているようだ。横浜は野毛にあったジャズ喫茶「ちぐさ」へ足繁く通うことになったのが1963 〜4年頃だったと記憶している。当時の「ちぐさ」の新着LPの壁ディスプレイには既にビルエヴァンスの天才的ピアニズムに影響且つ啓示を受けている後続の世代の白人ピアニスト、、例えばドン フリードマン、デニー ザイトリン、ロジャー ケラウエイの新着LPなども目撃している。
エヴァンス本人のリーダーアルバムでよく目に付いたのが「ア シンプル マター コンビクション」「エンパシー」「アット シェリーズ マン ホール」の類でこれらのアルバムにも珠玉の名演が潜んでいる事に気付いたのは、遥か後年になってからである。
当時はスコット ラファロという豪腕繊細なベーシストを抜きに語れないリバーサイド所属時代の名演「ワルツ フォー デビー」「マイ フーリッシュ ハート」「ナルディス」「ハウンテッド ハート」「枯葉」「ペリズ スコープ」「ブルー イン グリーン」などの名演を毎日のように聴くのが必須的日課であった。誰しも開眼期というのはあるもので、当時の「ちぐさ」通いで開眼したのがエヴァンスとアルト奏者のリー コニッツがアトランティックレコードに記録した諸アルバムが双璧だと確信している。
営業日 7月6日7日 13時〜19時

6月の収穫

2019-06-25 12:37:49 | ラジオ亭便り
かって隠居仕事としてパート仕事をさせて貰っていた職場から要請があって毎週土日の朝方3時間のアルバイトを引き受けている。屋内の各部屋 、廊下、男女便所の清掃から庭の手入れをマニュアル通りに単独でこなす仕事内容だ。昔風の言葉なら「掃除夫」今時体裁の良い言葉では「美化スタッフ」である。

これを引き受けたのは慢性的に来客が少ないカフェ維持の為の幾分かの足しにしたいという自分なりの形而下的浅知恵もあるのだが、何より大切な事は忍び寄る身体の老化に抗う心身鍛錬に繋がる効能、現代版「森田式作業療法」みたいな心の浄化という目論見も兼ねている。誰かが脱糞した後の便器にこびりついている残滓を硬い柄つきブラシで無心に洗い流すのも、昔の怒りっぽい修行不足の自分ならとても引き受けるような内容ではない。しかしこうした作業を内的呪詛フレーズを奔出もせずに静かにこなして周りのモノがサッパリとする心地良さを味わうこともよい。

ここでは庭掃除も必須である。落ち葉を掃いて雑草を除去する。季節の変わり目には花の集団植え替えなども行う。3時間の労働は手足を小刻みに使ってあっという間に過ぎていくが、その頃には身体が小汗を噴出してポカポカと温まってくる。スポーツジムへ行かずに金銭対価を得ながら心の境地にも通じるこの職場を気に入っているが、更に良いことは小菜園の自己管理ができることだ。

裏庭の畳半畳程度の四角な花壇には周辺の環境を壊さない花や小野菜が植えられている。この小菜園区割りに自分が好む苗を植えて良いか?と上司に願い出たら自己負担ならば良いという答えが返ってきて早速、春植えの苗を横浜橋商店街の花屋で調達して来た。「バジル」「イタリアンパセリ」「獅子唐芥子」「オクラ」「いんげん豆」「ミニトマト」「大葉」の類である。

日当たりの良い場所で苗は週末に訪問する度にどんどん丈を伸ばしている。別の日に同じ仕事を引き受けている品格の良い婦人からラインが先頃送信されて来た。「インゲン豆がたくさん実っているようなので取りに来ませんか?。ついでに少し分けてください」というような内容だった。快諾してスーパーカブに乗ってそのバイト先に向かう。やはり「インゲン豆」は葉の陰に隠れるようにたわわに実っていた。バジルや大葉、イタリアンパセリは薬味に使うので始終捥いでいたが、インゲン豆は未だだと思っていた。7月には「オクラ」「ピーマン」「胡瓜」などが期待できそうで、ささやかな収穫を味わうこの梅雨空である。

ラッパの再練習

2019-06-15 18:50:05 | ラジオ亭便り
高齢者風バイトと遊びに追われた相変わらずの2019年5月だった。土日のカフェ営業はシンパ的来店者も狭く決まってしまって進歩も退歩もない平衡状態が続いている。

それでもポツンと一人きりの店でビルエバンストリオの1958年頃の大愛好する演奏、「Everybody Digs」中の「Peace Piece」「What is There To Say」「Some other Time」などの曲に浸っている時の静かな幸福感が零細な店を続けているという意義なんだと思って、開き直っている。


開き直りついでに7〜8年振りのラッパ練習を再開することに決めた。メルカリ検索の達人である近所のS女史が見つけてくれたコルネットが契機になっている。
前にはヤマハのコルネットを持っていたが、零細自営業を畳んで貧窮の自粛生活に入った頃に処分してしまった。今度はアメリカ、キング社の603というゴールドラッカー仕様の美しいコルネットである。マウスピースに近いパイプに数カ所の凹み傷がある以外はとても状態の良いもので、懸念された音は難渋もせずに直ぐに出た。幸いなことに歩いて5分程度の石川町商店街の角地にある中村川「西の橋」の袂にあるカラオケボックスが練習場所に最適ということもわかった。ここでラッパの重要生命線ともいうべきロングトーンを一から出直すことにする。

早く大好きなトランペッター、ケニー ドーハムが物寂しいソロを聞かせる「My Ideal」「Old Folks」のフレーズの一端でもあやかれるようになりたいものだと思っている。
営業日のご案内 6月22日 23日 13時〜18時