Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

アナログ青春時代へ戻る

2014-12-29 21:43:21 | JAZZ

大掃除も済み、オーディオ書斎もそれなりに新年らしいレイアウトにして満悦しているところである。アナログレコードプレーヤーの2台による再生音で、この年末年始休み期間を楽しむことにした。気兼ねする家人がいないことは寂しくもあり反面で嬉しいことでもあるから人生は不可思議だと思っている。老いてからの青春が断片として一時的に甦生する時間である。

一台は西ドイツ時代のエラックミラコード、もう一台がイギリスガラード301だ。スピーカーは座間へ到来して二年目を迎えるイギリス、バイタボックスの12インチ同軸2ウエイ型バスレフボックスというようやくサウンドが落ち着いてきたコンビである。ガラードはこの1週間という臨時ステイだから、今日も冬ごもりしながら4時間ほどアナログレコードをかけ続けてしまった。

 

ガラードとGE社モノラルバリレラ針のサウンド傾向は少し高域が硬めだ。フィッシャーアンプとの間にかましたフォノイコライザーの癖が乗っているのかと思う。一昨日はレコードプレーヤーの達人が持参してきた初期オルトフォン社の通称「エッグ」というカートリッジの端正ながら彫琢感の深い音像の素晴らしさに驚嘆する。今日は1枚だけクラシックLPへ脱線した。グレングールドがまだ脱コンサート宣告をする前のバーンスタイン指揮、ニューヨークフィルと共演したベートーベンのピアノ協奏曲ト長調OP58の米コロムビア盤のグレーカラー、シックスアイズラベルのオリジナルレコードである。B面のアンダンテ・コン・モート、ビバーチェといった後半の楽章を移ろいながら、グールドの奏でる幽暗なピアノ音があの「エッグ」カートリッジだったら、また違う次元を聴かせるのか、等と夢想しながら本家のジャズへ戻ることにした。

ジュリー・ロンドンのリバテイ盤「ハー・ネーム」ジョニー・ハートマンのベツレヘム盤「シングス・フロム・マイ・ハート」ディック・ヘイムズのキャピトル盤「ムーン・ドリームス」等は終生の愛すべきオリジナルLPだから、こちらもあちらも鳴らすべき壷を心得て満足の再生音を奏でてくれるもので期待に沿ってくれている。意外にも今日良かったのが器楽系のジャズサウンドだ。

酔っ払い人生によって実生活は破綻はしたが、後世の我々に「サンクス・フォー・メモリー」のようなバリトンサックスの美しく妙なる曲を残していったサージ・チャロフバンドのオランダプレスなどの再版ものがけっこうな迫力を奏でる。ハンク・ジョーンズがドナルド・バード等を迎えたサボイ盤などもエディ・ジョーズのウオーキングベースの強いアクセントは、小豆カラーのセカンドプレスながらさすが、バン・ゲルダー録音というジャズらしい野生を含んだ奔出性が溢れているではないか。バリレラカートリッジと50年代ジャズの時代質感万歳!という至福を覚える瞬間を堪能したから、明日はエラックミラコードの交換針を差し替えて同じソースを感覚的に検証してみようと企んでいるところだ。


浦和散歩

2014-12-23 20:47:21 | その他

埼玉に住む友人から浦和・調(つき)神社の骨董市へ誘われる。こういう誘いには弱いもので祝日の朝、8時半には座間をあとにする。JR武蔵野線の「新秋津」駅でクルマに乗せてもらい、志木街道経由で遠路浦和への埼玉冬景色を楽しむ。11時半には現地へ到着。旧中山道の面影をほんのり残す町並みは、自分好みの古本店なども点在していて大宮駅付近のハイパーな都市風景よりも好感を覚える。

 調神社は正月支度の真っ最中。兎が神の使いという出雲神話を神社のポリシーにしていている境内は兎オブジェがそこかしこにある。境内が広いせいで骨董市は静かなのんびりムード。毎月1がつく日に開催している町田天満宮くらいの規模だろうか。陶器類は単身生活には過剰ストックになってしまうので、もっぱら友人の為に見立てを行う。自分用では古い厚手ガラス製のウスターソース入れを500円で購入。昭和レトロ程度だが良品だ。友人用には萩焼の枇杷色急須、鉄絵湯呑などを薦めて値切ることも忘れない。いずれも深蒸し煎茶の味わいを一層高めるような品格の逸品である。

益子の明治期山水土瓶なども目につくが価格が相場風なのでパスをする。会場にはアラジンの石油ストーブが並んでいる景色などが卒塔婆にみえて面白い。アラジンは素晴らしいストーブだが、替え芯交換で苦労して二度とも投げ出した過去がある。

神社へ入る前に独自な嗅覚で目につけていた「ビンテージオーディオを使っている店」と銘うっている「調(トーン)」があったが、昼間は閉まっている様子だ。老舗のお茶園が併設しているよいカフェにも惹かれるが、食事類がないのでここは通過する。

 

その近所にある「神田・天米」浦和店の小体な店構えに惹かれて昼ランチはここに決定する。エビ二匹、キス、カボチャ、茄子、インゲン、味噌汁、漬物付きの950円。「武正製 胡麻油」を使ったからっと仕上がった揚げ味のよい天麩羅の旨味に大満足する。溶いだ小麦粉を納めている伊万里の大鉢も錦手の分厚い質感が素晴らしい。しかし主人も奥さんも70歳を越えているだろうが、そのぴったりな呼吸の仕事の継承者はいるのだろうか?といらぬ心配がもたげてしまう。また二月の第4週土曜日には訪れて寄ってみたい店である。帰路は荒川の河川敷が広大な公園になっている「秋ケ瀬公園」の水辺を散策しながら冬鳥の囀りにしばし耳を傾けるのんびりタイムを過ごして、帰り電車の「府中本町」へ向かうことにする。

 


「ストックホルムでワルツを」

2014-12-20 08:41:15 | JAZZ

スウェーデンのジャズボーカリスト、モニカ・ゼタールンドのファンだったら見逃せない映画という噂をきいて、金曜日のオフは横浜へ出かける。昔、「大勝館」や「テアトル横浜」のあったくたびれた場末感が色濃く漂う若葉町の一角にある「シネマ ジャック&ベティ」というミニシアターがお目当てだ。平日の午後イチ上映で昼飯を抜いているから、すぐ横にある「大沢屋」のサンマー麺をと思ったら金曜は定休日だった。



すぐに鎌倉街道沿いの交差点にある「一番」のサンマー麺に場所替えする。塩辛くさえなければ老齢単身生活者にはサンマー麺は野菜がたっぷりの総合栄養食でいつも重宝している。相棒の佐々木さんは定時昼食済みにも関わらず「ベツ腹」と称してここのサンマー麺を褒め称えながら完食している。「大沢屋」のものよりも醤油の殺し方が上手いスープで塩味が遠くの方にあるから口当たりがよい。さすが半世紀以上のキャリアを誇る横浜庶民食堂の味わいだ。



「ジャック&ベティ」はマイノリティ映像表現への目配りが効いているプログラムが良心を反映しているミニシアターとして名高い。「ストックホルムで。。」はベティの方の演目になっている。客席数は138、眺めやすいポジションで平日、午後という酔狂な来客は30名くらいか。映画はシングルマザーの癇性もちで才気も素晴らしいモニカ役をエッダ・マグナソンという現役シンガーが演じている。


モニカのジャズ的頂点は1963年のフィッリプス盤「ワルツ・フォー・デビー」だ。そのモニカが夢見ていたエバンストリオとの共演を勝ちとるまでの家族上の葛藤、恋愛遍歴を散文的にしないでスピーディーにまとめたところがこの映画の長所だと思った。随所に登場するジャズ曲はどれもこれも素晴らしい。その背景映像を眺めながら歌は人生だと思うシーンが続出する。しょっぱなに流れるリズムや管楽器の分厚く臨場感あふれるサウンドに守られて歌う「イッツ・クッド・ハプン・ツー・ユー」を聴いて思わず涙腺が緩んでしまう。このイントロ曲を聴いてわかったのはモニカの声質とエッダ・マグナソンとの違いだ。端的に云えばモニカの声は曲線、エッダの声は直線に味わいがあることだ。アルネ・ドムネラスバンドの夏巡業で景気よく歌う「旅立てジャック」などはエッダ・マグナソンのジャズ的パンチ力の真骨頂を感じさせる。デイブ・ブルーベックの大ヒット曲「テイク・ファイブ」のことをスウェーデンでは「イ・ニューヨーク」と呼んでいることも初めて知った。この曲の映像を覆い尽くすゴージャスなサラウンド的ホールトーンを味わいながら、ああ自分は映画の中にいて幸せだと思った。


この映画には1950年代末期のスウェーデンの生活事物もふんだんに登場してレトロ好きな好事家にはこたえられないものがある。小さな子を置き去りにして気丈なママが夏のツアーに乗りこんでいるお洒落な赤色のバスは航空機製造のサーブスカニエ社のものだろうか?モニカが再婚した「私は好奇心の強い女」の映画監督の書斎に置かれているテープデッキはあのいかつい躯体から推測すると「ターンバーグ」ではなかろうか?はたまたモニカが憧れているビル・エバンストリオが奏でる「ワルツ・フォー・デビー」を聴いた後に仕舞い込むハンマートーン色の小型プレーヤーはデンマークの「デルフォン」ではなかろうか?等と推察を始めたらきりがない。モニカ・ゼタールンドの歌った愛すべき曲はビル・エバンスとの「ワルツ・フォー・デビイ」「サム・アザー・タイム」だが、この映画をみて「ゆっくり歩こう」というスウェーデン歌謡調の曲も愛好曲の列に加わってくれた。


 


https://www.youtube.com/watch?v=GF_NDRM3498

2管ペットの味わい

2014-12-12 16:58:12 | JAZZ

木曜日は週仕事が区切れる。そこで解放される夕方はボーカリスト、モニカ・ゼタールンドを描いた「ストックホルムでワルツを」という映画を見るか、新宿1丁目にある「サムデイ」における実力派トランペッター、高瀬龍一、伊勢秀一郎をフロントに据えたジャズコンボのライブを聴くべきか迷ったが、映画の方は年末の最終週までに先送りすることでライブ目当てに新宿御苑付近まで歩くことにする。昼飯が勤務先の近くにあるセブンイレブンで急ぎ飯のプアーなミートソースパスタだったせいか、急速に空腹感を覚える。紀伊国屋書店のある新宿通りを伊勢丹方面に向かって歩いていたら、左側の小路から香ばしいカレーの匂いが雨上がりの湿気をふくんだ空気に運ばれてきた。これは悩ましい香りである。雑居ビルの2階にある老舗カレー専門店「ガンジー」があることを想い出す。「サムデイ」の剛直なアマチュア料理と同じ値段帯なら、煮込んで磨きがかかっているルーの深いプロ的滋味の方がよいと思って寄り道してビーフカレーを注文する。添えられている古風な福神漬もふんだんで、その深い色艶は新興チェーンの「coco一番屋」などで供せられるおざなりな輸入風福神漬とはやっぱりキャリアが違う。

まっとうな東京カレーライスを腹に納めて10分後には「サムデイ」に到着したら、ライブはすでに始まっていた。地下へのドア口から漏れてくる2管ラッパのメロディーはウエイン・ショーターが作った「フット・プリント」の最後のミステリアスなリフ部分のようだ。バンドのお頭は高瀬龍一で伊勢さんはゲストというドラムレスコンボである。このコンビは二度聞いているが、今回が一番よいプログラムだった。お二人のラッパがもつ微妙な質感の違いを楽しめる曲が真のジャズ研究家でもある高瀬龍一によって適切にチョイスされていた。高瀬さんの音色は粒立ちもよくスムーズなブロウが綾なすさまはハードバップ黄金時代のラッパ吹きを彷彿とさせていつも興奮させられる。ジョン・コルトレーンの早い持ち曲「ロコモーション」などでそれはそれは顕著である。

伊勢さんは音色の切れよりも含示に複雑な味わいがあって近頃はバラードプレイで素晴らしい真価を見せている。この晩における2部のバラード・ソロ「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」などでは痩せてジャズ風「腎虚」の佇まいを感じさせる伊勢風メランコリーの到達点が鮮やかに示されて涙腺が緩んでしかたなかった。

高瀬選定による2管ラッパの補完というべきか合力の成功はドン・チェリーの「アール・デコ」、クレア・フィッシャーの「モーニング」の2曲だった。ドン・チェリーが作った曲だからさぞかし放恣的かと思いきや、スイングジャズに通じるエレガンスと精細即興の見事なブレンド力に圧倒される。バックを勤める続木徹のピアノがもたらす無機質な抒情触感はこのような領域で力を出すということも分かった。それにしても充足タイムは足早に過ぎ去っていく。伊勢さんらに別れを告げて23時05分発、「相模大野」行き急行に滑り込みセーフという時間になってしまった。


蕪、大根、冬の恵み

2014-12-06 20:40:25 | 

母親の施設へ冬着を数枚、バイクで届けついでに伊勢原の町外れにあるスーパー「わくわく広場」「「フラワーランド」等で食材を物色する。お目当ての柚子、みかんの地元産を入手できた。「みかん」は小粒の酸が強い愛好品が今年もみつかった。「柚子」は風呂用と「柚子ジャム」を思いつくが、品数が不足している様子だ。「フラワーランド」は地元果実、野菜を在庫していないが、菓子や調味料などが安い。

「わくわく」ではようやく冬野菜が安くなって活気を感じる。湘南二宮産の「赤大根」、伊勢原産の「蕪」「大根」がとてもよい色艶を発しているのに魅せられて買ってくる。金曜のオフということで大根は夕餉の「おでん」に活用する。「蕪」と「赤大根」は甘酢漬けに挑戦してみる。外気温が10℃を割って冷え込んでいる夜半、空は冬の満月、星は近くで煌めいている。塩漬けした容器を庭の方へ出して水が上がってくるのを一晩待つことにする。翌朝、甘酢を足して柚子を刻んでちらした「赤大根の甘酢漬け」が完成した。

大根、鰯つみれ、竹輪等をアゴ(トビウオ)出汁、昆布汁のブレンドで弱火でコトコトと煮込んだ、翌日持ち越しの「おでん」の副菜品としては申し分のない仕上がりになった。