Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

炎天サービス

2018-07-30 10:39:23 | ラジオ亭便り
台風12号が蛇行して東海地方へ上陸というニュースを夜になって知る。昼間の間歇的に急襲して来る雨を凌いでクルマ仕事をこなした。バイト時間を3時間延長の要請があって店を開けたのが午後の3時。案の定、こんな風雨の土曜日に訪れるもの好きはいないと予想したら日没時までお客さんはゼロ。

試作途上のコーヒーゼリーを先日寄ってくれたSさん母娘に出したものの味の面で反省する。天草から煮立てた柔らかな触感はいいけど、コーヒーの強い香りが不足している。インスタントコーヒーの顆粒を煮立て濃縮するレシピもあったが、ドリップに拘ったのは良かった。しかし天草の抽出液の量に対して、通常のコーヒー液を落とす量にしてしまい、これが仇となってしまい薄味のゼリーになってしまった。賢いSさん母娘はそのままの黒糖味を生かしてミルクをかけないで試食した。その反省のせいか、暇な風雨の土曜日の晩が再試作時間になる。

天草を洗って20グラム程度ガーゼに包む。これを1時間くらい煮込んで、ドリップコーヒーは3人前分を一人前程度に濃縮する。残っていた黒蜜で甘みをいれた。粗熱をとってパッドに流し込み冷蔵庫で冷やす。今度は成功である。夜半に試食してみる。やはり甘みは控え目だ。

うって変わって翌日の日曜日は台風一過の晴天、しかしながら湿度が高く温度も早々と30℃を超えている。昨日のコーヒーゼリーは売ろうと思ったが、高松からネット口コミで訪ねてくれた少し四国的固陋癖を感じる初老の方、徒歩で12分で店に到着と仰る山手外人墓地付近に住む方等新規客への炎天サービス品として供することにした。そしていつもながら気を遣ってやってきて頂く6人の懐かしき友人達にも公平に分配して、第2次試作品はちょうど品切れとなった。

営業日 ご案内 7月30日(月)16時30〜 8月2(木)4・5(土日) 13時〜19時

16才のジャズ好き

2018-07-22 20:42:52 | ラジオ亭便り
連日の猛暑日だ。平日はバイトで生計費を捻出して週末は趣味的営業路線を貫くという方針に変えてみたが、ことはそう上手く運ばないものだ。比較的、海に近い麦田でも路上の日中外気温は36℃にも上昇。週末の高齢客は土日の二日間でも合計がたったの二人。歩くのも困難な陽気が続いている。自分も含めて爺い系の高齢ジャズ好きが大手を振って歩けるようなこの夏ではなさそうだ。

この気候を嘆きながら具沢山の冷やし中華を作って気分を盛り返していたら、日曜日最後の珍客が現れた。ラジオ亭が山元町でオープンして以来の古い客Sさんが16才数ヶ月の娘さんを伴って来た。横浜市内で低廉極まりない面白い柄の浴衣やユニクロ系のGUショップの衣類をこの子が選ぶ付き合いをして来たとの話である。

身長が170センチ近くに伸びたこの娘を見かけたのは、2年も前の中2生の頃だった。その子が既に高2になって今ではAKBや乃木坂46ではなくれっきとした古臭いモダンジャズが好きで毎日聴いているらしい。

ちょうど来店時にはCDで流していたアンドレア・モティスが歌ってラッパも吹き、スコット・ハミルトンがざっくりとしたテナーブローで味わいを高めている曲「I Fall in Love too Easily」のスペイン盤がかかっていた。こういう曲が好きらしい。ジャズの世代を超えた更新作用を感じるところだ。



バイリンガルでグローバル資本の新しい流れの先端渦中に生きるSさんが教えたわけでもなく、子供は子供で独自なテイストを自分で育んでいるらしい。そんなS母娘と天草寒天から仕込んだコーヒーゼリーを賞味しながらアナログLPをしばらく楽しんでもらう。ついでにモデルになってもらったが、ラジオ亭の時間にも華が添えられたようで酷暑不況をしばし忘れることに。
営業日のご案内 7月28・29 (土日) 13時〜19時

湯河原付近、夏の隙間径

2018-07-18 19:15:08 | ラジオ亭便り
連日の猛暑日を避けて湯河原、真鶴半島の野山に逃げる。屹立する椎、欅、楠の香り、夏空に湧き上がる表情溢れる雲の相貌に会えれば十分ということで好きな山蔭の無名店、路地を巡る二日間。


幕山公園近くの「和っしょい」パン屋さんは残念ながら臨時休業。新崎川のマス釣り場も廃業して久しい。鍛冶屋集落へ降りる途中の百姓家の婆さんと立ち話していたら、採れたての泥が付いた「ミョウガ」を買っていけと薦められる。今しがたの収穫らしく表皮の薄紫色の瑞々しいこと。数十個で200円という相場度外視値段に喜ぶ。ついでになり放題な「赤紫蘇」もタダで好きなだけ持って行きなと勧められるが、持参手荷物の収納が難ありなので遠慮する。農家に隣接する無人販売所には、赤紫蘇もたっぷり覆っている大粒の梅干、露地栽培の不揃い完熟トマトが数個で計550円、神奈川西部地域の無人販売所はいつ訪れても季節の恵みを享受できる新鮮野菜に巡り会えて幸せな気分になる。

無人販売所といえば珍しいコーヒー焙煎豆の無人販売所にも市中で出くわす。倒産した旧「ヤオハン」、今はイオン系スーパーの敷地内に洒落た手描き文字の看板が無味なロッカーケースに色を添えている。豆は空調管理されて世界各産地の味傾向についての説明がとても親切だ。一律、100グラム500円、数カ所は空きに なっているので地域の需要は定着しているようだ。


しかしながらこの無人販売ブースの仕切り壁に貼られた求人広告の謎。知る人ぞ知る「川崎定徳」の葉山にある役員屋敷の庭仕事等をこなす管理人夫婦の募集広告の立派な待遇条件に驚く。さすが平和相互銀行事件で名を馳せた佐藤茂氏の血脈が生きている会社らしい。奇体な場所の地味な求人広告の世俗的面白みも珍しいコーヒ豆無人販売所で一緒に味わうことになる。炎天の二日間ながら、海から吹いてくる微風、厚みのある緑のもたらす木蔭の冷涼感。湘南新宿ラインで横浜駅まで戻ってきてやっとその心地が実感できた。

営業日のご案内 7月21・22・28・29 全て土日のみオープンします。13時〜19時 アイスコーヒー等アイス類は価格600円。ビール、アルコール類はつまみ付600円に価格改定します。

本牧の一軒家古本屋

2018-07-07 16:07:11 | ラジオ亭便り
本牧の間門の住宅街に民家タイプの古本屋さんがオープンしていることを、いつも精力的な古本屋ウオッチャーとしてライブ感に満ち溢れたblogを披瀝している方の文章で知った。その方のアクセス法では、とんでもない迂回道順になってしまうので、麦田から本牧通りをバスで目的地の「二の谷」迄、横浜市営バスでシンプルに訪ねることにした。古本屋のネームは「けやき」 伸び伸びと爽やかないい名前だ。間門から近い同じ本牧付近に住む鎌倉「たらば書房」店主を誘ってバス停前に現地集合とする。

台風崩れの温帯低気圧が日本海を北上している前線の影響で横浜付近にも雨を降らせている。古本屋の緑に囲まれた庭を眺めるには好適な雨模様を喜びながらの初訪問となる。磯子方面への「二の谷」バス停先の路地をすぐに左折して突き当たり正面に当該の看板「けやき」が見えている。大きな敷地の中に大きめな旧家があって、そこの玄関先には古い井戸とポンプが残置されていて遠くなった戦後に近い昭和を物語っているようなオブジェの風格だ。


古本販売所は旧家に差し向かう住宅の一室があてがわれている。在庫量はご店主が勤め人時代に集めて読書したと思われる、文庫本、小説、エッセイ、美術書、写真集の類で総量は少なめながら選びやすい陳列法だ。スリッパに履き替えて冷やかしで退散するわけにはいかないが、丁度手頃な書物に出くわす。

「私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ。。」という若い時分に啓示を受けた詩句の作者、ジャン・コクトーのエッセイ集「ぼく自身、あるいは困難な存在」(筑摩書房 1991年刊行)、文庫本 栗田勇 「一遍上人 旅の思索者」(新潮社) 梅棹忠夫 「京都の精神」(角川ソフィア文庫) 合計800円。

価格設定は古本屋としては普通と言ったところ。この本におけるジャン・コクトーの啓発フレーズにはこんな一節もあって嬉しくなる。
「 1917年以降、つまり十四歳以後のレイモン・ラディゲだが、かれは、新しそうな様子をしているものにはその新しさを警戒し、前衛派の流行にはその逆を衝くことを僕に教えてくれた。それは、都合の悪い立場に自分を置くことだ。。。」(秋山和夫 訳)
私などが好きなジャズに就て、1960年代に本能的に体得したスタンスが語られているようで大いに共鳴の得られる箇所である。

営業日のご案内 7月15日(日)13時〜19時

古い「ジャズ音楽事典」のグラビア写真に載っているズート・シムス、

2018-07-01 20:04:56 | ラジオ亭便り
どうやら梅雨が明けたらしい。6月の記録的最短梅雨明けとのニュースだ。バイト先を変えてペースが戻ったせいか、店の慢性的停滞もさることながら暇があれば散歩に励んでいる。散歩先は横浜の旧市街地が多い。大抵、麦田から歩いて山手隧道をくぐって石川町付近を流れる中村川の辺りを海側には向かわず、上流の掘割川と中村川が分水する千歳橋付近まで歩く。

この付近を北上して阪東橋、横浜橋、大通り公園、その北側を走る鎌倉街道、伊勢佐木モールに寄り道してJR関内駅へ向かうコースが好きだ。やはり子供時代の擦り込み記憶が強い地域なのだろう。

先だっても伊勢佐木町2丁目の路地横にある静かな古本屋で良き散歩の収穫に恵まれた。いつも面白い本が混じっている100円均一の並んだ路地に面した陳列棚が今回は不調である。そそられる駄本がなく珍しく中を覗いてみる。店内で目を惹く煤けた珍しい雑誌付録の表紙活字がこちらを向いて手招きしている。

「音楽之友」昭和29年5月号の付録「ジャズ音楽事典」と表記されている。さすが捨て値の100円を付けずに気張って300円を付けた若い店主の見識を称えたくなって、美濃古陶磁の特集をしている「小さな蕾」のバックナンバー(100円)と共に即買いする。これを関内駅北口に近い「ベローチェ」でしばらく眺める。

この古本付録事典は一括してジャズと称しているものの、当時を反映してラテン、タンゴ、シャンソンといった洋楽ポップス他分野の記事もごちゃ混ぜになっているところが面白い。クラシック音楽が純音楽、その他は軽音楽イコールジャズという古典的仕切り法が通用していた時代を反映している事典である。中には後年にジャズ評論家の重鎮になっている野口久光さんのモダンジャズに至る原始的なジャズ発生からの発展過程の解説などは真面目な力作で今読んでも勉強になる優れものだと感じる。

モノクロのジャズプレイヤーの写真も時代を反映していて、未だ、パーカー、マイルス、コルトレーン、モンク、ゲッツ等、モダンジャズの中興の祖も口絵グラビアを飾っていないところが、昭和29年という時節を感じるところである。因みに表2対向面を大きく飾っているのは当時の人気ジャズメン、ハリー・ジェイムスのハンサム顔である。

1930年代から大スターになっているテナーのコールマン・ホーキンスなどは写真キャプションが「クレマン・ハウキ」、サッチモと二重唱している女性シンガーがエラ・フィッツジェラルドとは明らかに違う人物であったりするところも面白い。

ふとグラビアに載っているウディ・ハーマン楽団のメンバーに目が行く。端の方でテナーを抱えている顎の両端がよく張っている白人はどうやらズート・シムズで間違いなさそうだ。1953・4年頃の凛々しく、野太いテナーを吹きまくるズートの遠景である。

この古い事典を抱えて麦田の店に戻ってきた。そこへ久しぶりにLPマニアの雄ともいうべき世田谷区、用賀に住む昔馴染みのS君が現れた。持ってきたレコードが1957年に発売された「ズート」のアーゴレーベルの世評高い名盤である。




これは丁度良い奇縁ということで、S君共々、1943年製米国ゼニス社フィールド型ラジオスピーカーで聴くことになった。自分が家に保管している日本盤LPとは音の鮮度レベルが全く違って目前でスイングするズートが生々しい。4ビートに乗ってさりげない力感を披瀝する「ブルールーム」なんて曲はズートの真骨頂だねとS君と頷きあう良い時間になった。

営業日ご案内 7月6日・7日・8日 金、土、日 13時〜19時 価格変更 アイスコーヒー・アイスティー 600円 豆寒天、心太類 最低提供数(一日6食)に及ばず中止ちゅう。真に好きな方には手作りから応じることに
しました。