さて、読む作家を限定し過ぎてるなと思う第596回は、
タイトル:99%の誘拐
著者:岡嶋二人
文庫名:講談社文庫
であります。
岡嶋二人の長編ミステリです。
両氏の扱うジャンルとしては人気が高い『誘拐物』ですが、さて……。
十九年前、一つの誘拐事件が発生した。
脅迫されたのはイコマ電子工業の社長・生駒洋一郎、誘拐されたのはその息子・慎吾。
犯人は、洋一郎が会社再生のために私財をを投げ打って作った五千万円、そのすべてを要求した。
慎吾は無事保護されたが、結局犯人は解らずじまいだった。
身代金も戻ることはなく、イコマ電子工業は大手カメラメーカー・リカードに吸収合併される。
そして事件の七年後、一つの手記を残して、生駒洋一郎は四十七歳の生涯を閉じた。
時は現代、昭和六十二年に移る。
生駒慎吾は二十四歳になり、リカードに勤務していた。
だが、彼はあのことを忘れていなかった、父がすべてを奪われた忌まわしい誘拐事件のことは――。
主に犯人側の視点で語られる、誘拐事件の顛末。
読み進めていくと自然に、犯罪が成功することを期待してしまうのが面白い。
パソコン通信や音響カプラーなど、当時の技術を知る方なら思わずにやっとしてしまう小道具を駆使しているのもポイント。
現代編の前に、19年前の事件が洋一郎の手記の形で語られます。
これが、独立した短編として楽しめるぐらい出来がいい。特に、虫食い状態で洋一郎が疑問を提示している箇所は秀逸。
ただ……未解決に終わったこの事件、誰が得をしたかを考えれば犯人は絞られてくるんじゃないのか? と思うのは私だけ?
現代編に入ってからは、ほとんどノンストップで慎吾の復讐が描かれます。
十九年前の事件を再現するために、彼はとにかく手の込んだ計画を練り、実行します……ようやるわ、ほんと。
情念で動いているというより、むしろゲームを楽しんでいるかのような所に引っかかりを覚えたりもしますが、それが作品から重苦しい空気を消しているのも事実。
例によって読みやすい文章と優れた構成で、最初から最後まで一気に読ませてくれます、オススメ。
モロに予定調和なラストには賛否両論あるかも知れませんが、コメディほど軽すぎず、サスペンスほど重すぎないこの作品にはちょうどいいのではないかと思います。
――【つれづれナビ!】――
◆ 『岡嶋二人』のまとめページへ
◇ 『つれづれ総合案内所』へ
タイトル:99%の誘拐
著者:岡嶋二人
文庫名:講談社文庫
であります。
岡嶋二人の長編ミステリです。
両氏の扱うジャンルとしては人気が高い『誘拐物』ですが、さて……。
十九年前、一つの誘拐事件が発生した。
脅迫されたのはイコマ電子工業の社長・生駒洋一郎、誘拐されたのはその息子・慎吾。
犯人は、洋一郎が会社再生のために私財をを投げ打って作った五千万円、そのすべてを要求した。
慎吾は無事保護されたが、結局犯人は解らずじまいだった。
身代金も戻ることはなく、イコマ電子工業は大手カメラメーカー・リカードに吸収合併される。
そして事件の七年後、一つの手記を残して、生駒洋一郎は四十七歳の生涯を閉じた。
時は現代、昭和六十二年に移る。
生駒慎吾は二十四歳になり、リカードに勤務していた。
だが、彼はあのことを忘れていなかった、父がすべてを奪われた忌まわしい誘拐事件のことは――。
主に犯人側の視点で語られる、誘拐事件の顛末。
読み進めていくと自然に、犯罪が成功することを期待してしまうのが面白い。
パソコン通信や音響カプラーなど、当時の技術を知る方なら思わずにやっとしてしまう小道具を駆使しているのもポイント。
現代編の前に、19年前の事件が洋一郎の手記の形で語られます。
これが、独立した短編として楽しめるぐらい出来がいい。特に、虫食い状態で洋一郎が疑問を提示している箇所は秀逸。
ただ……未解決に終わったこの事件、誰が得をしたかを考えれば犯人は絞られてくるんじゃないのか? と思うのは私だけ?
現代編に入ってからは、ほとんどノンストップで慎吾の復讐が描かれます。
十九年前の事件を再現するために、彼はとにかく手の込んだ計画を練り、実行します……ようやるわ、ほんと。
情念で動いているというより、むしろゲームを楽しんでいるかのような所に引っかかりを覚えたりもしますが、それが作品から重苦しい空気を消しているのも事実。
例によって読みやすい文章と優れた構成で、最初から最後まで一気に読ませてくれます、オススメ。
モロに予定調和なラストには賛否両論あるかも知れませんが、コメディほど軽すぎず、サスペンスほど重すぎないこの作品にはちょうどいいのではないかと思います。
――【つれづれナビ!】――
◆ 『岡嶋二人』のまとめページへ
◇ 『つれづれ総合案内所』へ
しかし岡嶋二人は面白いですね。
99%と密室のやつを続けて読んじゃいました。
どちらもオチが残酷すぎないのが良いのですが
若干の物足りなさが残ったっていうのもホントの気持ちですね。
面白いんだけど。
クライン的なオチの方が納得度が高いかも…
最近、東野圭吾に毒されていて、ブラックな終り方じゃないと
満足出来ない自分がいる気がしてきました…
とか言いつつ、やったーコメントだ~、と喜ぶ自分が
ここにいたり。(反省)
どちらも、妙にあっさりした終わり方ではありましたね。
私としても、最後にちょっとした毒が残るぐらいが好み
なんですが……。
クラインのオチが好きなら、この前紹介した『プラス
ティック』がオススメかも。
なかなかにダークで素敵です。
ん?
東野のラストってどちらかと言うと甘めな感じがする
んですが……若竹七海に毒されたかっ!(爆)