さて、プロットに引かれて手を出した第645回は、
タイトル:夜想曲(ノクターン)
著者:依井貴裕
出版社:角川書店 角川文庫
であります。
お初の作家さんです。
実は、某奇術師作家のお弟子さんらしい……結構納得。
*
一通の手紙により、桜木は再びあの悪夢を見ることになった。
何者かの首にロープを巻き付け、じわじわと締め上げていく生々しい夢。
現実にあったことなのか、それともただの幻か、彼には判断がつかなかった。
ある山荘で催された同期会にて、三日連続で起きた殺人事件。
桜木はその場にいた……筈だった、直前まで参加するつもりだったからだ。
だが、不可解なことに彼にはその期間中の記憶が全くなかった。
手紙に添付されていた百頁余りの原稿。
それは、あの山荘で起こった事件を小説仕立てにしたものだった。
桜木は悪夢の正体を知るために、原稿を読み進めるが――。
*
えー、最初に言っておきます。この作品、小説としてはゴミです。
キャラクターは全員ロボットだし、ストーリーは読者への情報を延々と並べるだけの無味乾燥な代物。
おまけに日本語がおかしい箇所がいくつかあり、読み進むにつれて疲労が溜まっていきます。
では、そういうものだと割り切って、ロジックだけ見るとどうか?
これも一言で言えます、地雷です。
本作は、桜木の所に送られてきた小説という体裁で、三つの殺人事件を描写しています。
にも関わらず、事件ごとに主人公が交代し、主人公がいない場所での刑事の会話まで描かれています。
つまりこれは事実の話ではなく、大部分が『執筆者の創作』です――事件に関わった人間が分担して書いている、という可能性を除けば。
この時点で、ミステリ好きの人は作者の罠を感じるでしょう。実際、作中作はそういう目的で使われることが多いし。
しかし、作者は飽くまでこれが事実の記録であることを暗に主張します。はっきり言って無茶苦茶です。
物語後半で登場する探偵役(これがまた笑えるぐらい桜木から持ち上げられている)も、この作中作にフォローを入れてますが……白けるだけですね。どうあがいても『あの人』がここまで事情を知ることはできません。
ではトリックのネタはどうか? これは二つ用意されています。
一つ目のネタはなかなか面白いです。ただし、仕掛けが下手過ぎ。
ラストで探偵役がくどくどと退屈な推理をかましてくれますが、そんなものを読むまでもなく、不自然過ぎる記述だけでネタは割れます。(第三章は特にひどい)
で、問題の二つ目のネタですが――
(以下、ネタバレなので反転)
やってくれました。
『実は××は××人格だった!』
あ~、はいはい。
情報不足の状態でそれやった時点で、ロジック物としては破綻してますよ。
要するに、ラストで探偵役が言う、「――同じ手掛かりを用い、そこから証明される結論も完全に同じでありながら、違う犯人に行き着く」という作品を書きかったのでしょうが、そのために犠牲にしたものが多すぎます。落第。
穴だらけの実験作です、読む価値なし。
実験する方は楽しいんだろうけど、付き合い切れません。
あと、最後に一つ。
自分の書いた作中作を、自分の作ったキャラクターに褒めさせるな。そういうのを自画自賛って言うんだよ、このクソ作家。
タイトル:夜想曲(ノクターン)
著者:依井貴裕
出版社:角川書店 角川文庫
であります。
お初の作家さんです。
実は、某奇術師作家のお弟子さんらしい……結構納得。
*
一通の手紙により、桜木は再びあの悪夢を見ることになった。
何者かの首にロープを巻き付け、じわじわと締め上げていく生々しい夢。
現実にあったことなのか、それともただの幻か、彼には判断がつかなかった。
ある山荘で催された同期会にて、三日連続で起きた殺人事件。
桜木はその場にいた……筈だった、直前まで参加するつもりだったからだ。
だが、不可解なことに彼にはその期間中の記憶が全くなかった。
手紙に添付されていた百頁余りの原稿。
それは、あの山荘で起こった事件を小説仕立てにしたものだった。
桜木は悪夢の正体を知るために、原稿を読み進めるが――。
*
えー、最初に言っておきます。この作品、小説としてはゴミです。
キャラクターは全員ロボットだし、ストーリーは読者への情報を延々と並べるだけの無味乾燥な代物。
おまけに日本語がおかしい箇所がいくつかあり、読み進むにつれて疲労が溜まっていきます。
では、そういうものだと割り切って、ロジックだけ見るとどうか?
これも一言で言えます、地雷です。
本作は、桜木の所に送られてきた小説という体裁で、三つの殺人事件を描写しています。
にも関わらず、事件ごとに主人公が交代し、主人公がいない場所での刑事の会話まで描かれています。
つまりこれは事実の話ではなく、大部分が『執筆者の創作』です――事件に関わった人間が分担して書いている、という可能性を除けば。
この時点で、ミステリ好きの人は作者の罠を感じるでしょう。実際、作中作はそういう目的で使われることが多いし。
しかし、作者は飽くまでこれが事実の記録であることを暗に主張します。はっきり言って無茶苦茶です。
物語後半で登場する探偵役(これがまた笑えるぐらい桜木から持ち上げられている)も、この作中作にフォローを入れてますが……白けるだけですね。どうあがいても『あの人』がここまで事情を知ることはできません。
ではトリックのネタはどうか? これは二つ用意されています。
一つ目のネタはなかなか面白いです。ただし、仕掛けが下手過ぎ。
ラストで探偵役がくどくどと退屈な推理をかましてくれますが、そんなものを読むまでもなく、不自然過ぎる記述だけでネタは割れます。(第三章は特にひどい)
で、問題の二つ目のネタですが――
(以下、ネタバレなので反転)
やってくれました。
『実は××は××人格だった!』
あ~、はいはい。
情報不足の状態でそれやった時点で、ロジック物としては破綻してますよ。
要するに、ラストで探偵役が言う、「――同じ手掛かりを用い、そこから証明される結論も完全に同じでありながら、違う犯人に行き着く」という作品を書きかったのでしょうが、そのために犠牲にしたものが多すぎます。落第。
穴だらけの実験作です、読む価値なし。
実験する方は楽しいんだろうけど、付き合い切れません。
あと、最後に一つ。
自分の書いた作中作を、自分の作ったキャラクターに褒めさせるな。そういうのを自画自賛って言うんだよ、このクソ作家。