つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

こういうのが好きなのかな?

2012-02-19 13:18:54 | 伝奇小説
さて、第985回は、

タイトル:沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ一
著者:夢枕獏
出版社:角川書店 角川文庫(初版:'11)

であります。

この人の作品を読むのは「陰陽師」以来だなぁ。
と言うか、「陰陽師」以外、まったく知らないんだけど(笑)

さて、ストーリーは、

『密教を学ぶために遣唐使船で唐へ渡った空海、そして同じ船で儒学を学ぶために唐へと渡ってきた橘逸勢(たちばなのはやなり)。
目的地とは遠く離れた地方で足止めを食いながらも、何とか唐の副帝都である洛陽にたどり着いた空海一行。

爛熟期にある唐の副帝都で道士の技に、大唐帝国の懐の深さを垣間見、長安への道すがらちょっとした怪異を鎮めたりしながら旅を続け、長安へと入ることができた。

その頃、長安では劉雲樵(りゅううんしょう)という役人の家に猫の妖物が取り憑き、妻の春琴を寝取っただけでなく、様々な予言をして的中させたりしていた。
中でも徳宗皇帝の死まで予言し、的中させてもいた。

また同時期、驪山(りざん)の麓、除文強の綿畑では夜になるとどこからともなく声が聞こえると言う怪異が起きていた。
その声もまた皇太子である李誦(りしょう)が病に倒れることを予言し、これまたそのとおりになっていた。

長安に入った空海は、それらの怪異を聞きつけ、興味を覚える。
実際に劉雲樵の屋敷に出向いて猫の妖物と問答をしたり、逸勢とともに行った妓楼で情報を集めたりしながら空海は唐で起きている怪異に深く関わっていくこととなる。』

……どう見ても空海と逸勢の関係が「陰陽師」の晴明と博雅の関係とダブってしまう。
まさかこういう関係しか書けないわけではないだろうから、単に似てしまったと言うだけだろうけど、「陰陽師」を読んでいてこれを読むとちょっと引いてしまう。

初手から「なんだかなぁ」と言う気持ちにさせられる先制攻撃はさておき……。
全四巻の第一巻ということで、ストーリーは序盤。
空海一行が地方で足止めを食らっているところを空海が解決して旅が再開できたり、怪異を調査したりする空海側のエピソードと、長安や驪山で起きる唐での怪異を巡るエピソードなどを絡めてストーリーは進んでいく。

19年という年月をかけて書かれた作品だけあって、よく調べたよなぁと言う印象が強い。
歴史だけでなく、漢詩や密教のこと、当時すでに長安に入っていたキリスト教やゾロアスター教にまで言及しているところは素直に感心できる。

……で、肝心のストーリーのおもしろさはと言うと……。

微妙……。

まぁ、まだ序盤だからこれからの展開が気にならないわけではないけれど、でも続きが読みたい! と思わせるような勢いは乏しい。
Amazonの評価はけっこういいので、歴史ものや伝奇小説好きの人には一見の価値があるかもしれないけど、そうでない人にとってはおもしろみに欠ける作品かもしれない。
巻ノ一も読んだので、一応巻ノ二も読んでいる途中ではあるけど、個人的にあまり食指が動かない。
まぁ、たとえば図書館で予約していた本が借りれる状況になったら、そっちを先に読んで後回しでもいいや、くらいにしか感じていないわけで……(^^;
(実際、予約が入っていないことをいいことに貸出期間延長したりしたもんなぁ……)

文章も相変わらず簡潔……と言えば聞こえはいいけど、軽くて深みはない。
まぁ、これは「陰陽師」のときから変わらないので、この人の文体として許容してしまえばいいんだろうけど、ちょっとくらい文章にも気を配ってほしいとは思う。
もっとも文章に拘ってしまうのは私の悪い癖なので、あまり気にしないでもいいかも(^^;

……と、なんかとりとめもなく書いてしまったけど、総評としては可もなく不可もなくと言ったところで、まぁ、及第と言ったところかなぁ。
夢枕獏のファンや歴史ものとかが好きな人にとっては、空海という珍しい素材を扱った伝奇小説と言うことでおもしろく読めるかもしれないのでね。


――【つれづれナビ!】――
 ◆ 『夢枕獏』のまとめページへ
 ◇ 『つれづれ総合案内所』へ


最新の画像もっと見る