つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

Simple is Best?

2006-11-24 20:58:50 | 伝奇小説
さて、これはこれでひとつの特徴なのかもの第724回は、

タイトル:陰陽祓い 鬼龍光一シリーズ1
著者:今野敏
出版社:学習研究社 学研M文庫(初版:H13)

であります。

名前だけは知っていたけど、読んだことがなかった作家だったのでいい機会だと思って手に取ってみたもの。
いろいろと出てる本のタイトルから、ジャンルとしては伝奇小説だろうと思っていたけれど、これも見事な伝奇小説。

さて、ストーリー紹介は次のとおり。

少年課の巡査部長である富野輝彦は、暴行の上、絞殺する、と言う連続強姦殺人事件の捜査本部に、心理学者の本宮奈緒美とともに参加していた。
手口から同一犯であるとされる殺人事件。
被害者がうち捨てられた現場で、本宮とともに捜査に当たっていた富野は、そこでひとりの男に目をとめる。
職務質問から、鬼龍光一と名乗った男は、茫洋とした様子ながらもはっきりと富野にお祓い師だと告げる。
さらに、この事件は警察の領分ではないと言い切った。

妙な男だと思いつつも、捜査を続ける富野たちだが、犯人逮捕に際し、その犯人とともに、またもや鬼龍の姿を見る。
しかし、逮捕したのも束の間、またもや似た手口での強姦殺人事件が発生し、富野は再び捜査本部へ出向く。
行きずりの犯罪で捜査に行き詰まる中、富野は鬼龍の語る「亡者」と言うキーワードに鬼龍を訪い……。

陰陽のバランスが崩れた亡者を祓う鬼龍光一と、一連の連続殺人事件を追う富野巡査部長とが、ともに事件の捜査を進め、殺人事件のもととなった亡者を突き止め、祓うまでを描いた伝奇小説。
ストーリーの進み方は、殺人事件やその他、黒幕となる亡者によって亡者にされた少年少女たちの行動などを辿り、黒幕と対峙する、というもの。

よく言えば、とても素直なストーリー展開。
黒幕が誰か、なんてのはだいたい半分も読めば、想像がつく……と言うより、3分の1くらい読んで、「あ、こいつだな」と思ったのがビンゴだったりする(笑)
脇道に逸れることもないし、一本のまっすぐな線のような進み方なので、あれこれと予想する楽しさはないが、安心して読める作品であろう。
ただ、伝奇小説という割に、派手な戦闘シーンなどはほとんどなく、そうしたところを期待すると拍子抜けするかもしれない。

また、文章もストーリー上の事実、行動などを淡々と簡潔に描写しており、読みやすく、読み始めてしまえばすらすらと読み進めることが出来る。
逆に言えば、まったく味気ない文章で、情緒的な部分の微片もないが、これはこれで意外と悪くない、と思ったりして。

全体としては、突出したものもなければ、反対にここが悪い、と言うところもなく、中途半端、と言うのが一番ふさわしいかも。
あえてオススメする理由も見つからないし、さりとてオススメしない理由も見つからないもんなぁ。
総評は……悪くはない、と言う程度なのでいちおう及第、かな。


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