さて、カバーの紹介文書いたの誰だよの第634回は、
タイトル:夢ごころ
著者:連城三紀彦
出版社:角川書店 角川文庫
であります。
えー、またもや例の如く短編集であります。
第一話から第十二話とする12の短編が収録されている。
「第一話 忘れ草」
ふらりと出て行ってしまい、8年ぶりに戻ってきた夫に対して妻が手紙をしたためると言う体裁で語られる物語。
8年間の中で出て行った夫が京都で別の女と暮らしていることなどを描きつつ、戻ってきた夫との決着を描いている。
ラストのほうで語られる妻の思いや事実など、ぞっとさせられるものがあり、淡々とした中にも強い情念を感じさせる良品。
「第二話 陰火」
新婚旅行に向かう列車の中で新郎の康之の思い出と、それに引きずられる康之の姿を描いている。
ラグビー部のただの先輩だった安原との関係と、結婚という形で裏切った康之に対する安原の情念を、はっきりとは書いていないが十二分に感じさせる話であろう。
「第三話 露ばかりの」
年下の葉二と言う男と付き合っている妙子が、葉二に別の若い女が出来たことを察し、ある方法で去っていく葉二に自分と言うものを刻みつけていく話。
聞き分けのいい妙子と、ラストに至ってその思惑が具現化した際の静かだが重すぎる妙子の情念がけっこう怖い。
だが、そのぶん、作品の雰囲気は十二分にあり、良品のひとつ。
「第四話 春は花の下に」
教師への贈り物を相談するために集まった32人の小学生が学校の納屋の火災で全員焼死した事件の唯一の生き残りである千鶴子が、幸福な家庭の中でそこへ引き寄せられていく姿を描いた話。
無邪気な子供の残酷さや、火災の事実から毎年春になるとその場所へ足を運んでしまう千鶴子の複雑な思いがしっかりと描かれている。
ラストを読んで、なおもその後の想像がついて、そっちも怖かったりして(笑)
これは個人的にかなりの逸品。
「第五話 ゆめの裏に」
生死の境を彷徨う姉とその夫の愛するが故に歪んでしまった愛情を妹の久美子の視点で描いた話。
「第六話 鬼」
ある画家が別れた妻とのつながりに執着するあまり、嬰児誘拐まで犯してしまう話で、それを画商の視点から描いたもの。
「第七話 熱き嘘」
不倫の相手である女性からの手紙を中心に、兄夫婦のもとで暮らす井川慎一と不倫相手の女性、そして義姉の持つ義弟へとではない愛情を描いたもの。
脇役だったはずの義姉の姿に気付いたラストの描写がおもしろい。
いまいちな中でもまだマシな話かな。
「第八話 黒く赤く」
行きずりに出会った女と夢のような関係を持った男の、その女と出会ったがために破滅していく姿を描いたもの。
「第九話 紅の舌」
これも第八話と似たような話だが、こちらのほうが巧妙。
ある小さな工場の従業員である男のもとへ、同僚の妻から夫がろくでもない女に引っかかっていると言う相談を受けたことが始まりで、そこから同僚、妻と姿が二転三転し、ラストに事実があかされる。
二転三転するがラストはすっきりと落ちている。
「第十話 化鳥」
福祉施設で暮らす老女が、ひとりの少女の事故死をきっかけに自らの周囲で起きた様々な死を手紙の体裁を取って語る話。
「第十一話 性」
妻のある男を奪い、結婚した文江と文筆家の竣三が、前の妻である秋子の影に苛まれる話で、愛憎と狂気をうまく描いている。
良品のひとつ。
「第十二話 その終焉に」
ある男が少年時代に年の離れた姉の家がある地域での、ある男との短い出会いを描いたもの。
この短編集の中ではもの悲しさや切なさを感じさせる綺麗な作品。
ん~、初めて読んだひとで、しかも男性作家だからどうかと思ったが、いくつかを除いて良品と言える作品があり、雰囲気も十二分に出ているし、総じてラストの余韻もしっかりと感じられる。
情念を描くものが多いが、しっかりとそれも描かれていて、読み応えはある。
このところ、落第ばかりが目立っていてどうよと思っていたのだが、久々に、しかも男性作家でいい作品に出会ったかな。
ただ、これを女性が読んだときにどう見るかなぁ、とは思うけど。
タイトル:夢ごころ
著者:連城三紀彦
出版社:角川書店 角川文庫
であります。
えー、またもや例の如く短編集であります。
第一話から第十二話とする12の短編が収録されている。
「第一話 忘れ草」
ふらりと出て行ってしまい、8年ぶりに戻ってきた夫に対して妻が手紙をしたためると言う体裁で語られる物語。
8年間の中で出て行った夫が京都で別の女と暮らしていることなどを描きつつ、戻ってきた夫との決着を描いている。
ラストのほうで語られる妻の思いや事実など、ぞっとさせられるものがあり、淡々とした中にも強い情念を感じさせる良品。
「第二話 陰火」
新婚旅行に向かう列車の中で新郎の康之の思い出と、それに引きずられる康之の姿を描いている。
ラグビー部のただの先輩だった安原との関係と、結婚という形で裏切った康之に対する安原の情念を、はっきりとは書いていないが十二分に感じさせる話であろう。
「第三話 露ばかりの」
年下の葉二と言う男と付き合っている妙子が、葉二に別の若い女が出来たことを察し、ある方法で去っていく葉二に自分と言うものを刻みつけていく話。
聞き分けのいい妙子と、ラストに至ってその思惑が具現化した際の静かだが重すぎる妙子の情念がけっこう怖い。
だが、そのぶん、作品の雰囲気は十二分にあり、良品のひとつ。
「第四話 春は花の下に」
教師への贈り物を相談するために集まった32人の小学生が学校の納屋の火災で全員焼死した事件の唯一の生き残りである千鶴子が、幸福な家庭の中でそこへ引き寄せられていく姿を描いた話。
無邪気な子供の残酷さや、火災の事実から毎年春になるとその場所へ足を運んでしまう千鶴子の複雑な思いがしっかりと描かれている。
ラストを読んで、なおもその後の想像がついて、そっちも怖かったりして(笑)
これは個人的にかなりの逸品。
「第五話 ゆめの裏に」
生死の境を彷徨う姉とその夫の愛するが故に歪んでしまった愛情を妹の久美子の視点で描いた話。
「第六話 鬼」
ある画家が別れた妻とのつながりに執着するあまり、嬰児誘拐まで犯してしまう話で、それを画商の視点から描いたもの。
「第七話 熱き嘘」
不倫の相手である女性からの手紙を中心に、兄夫婦のもとで暮らす井川慎一と不倫相手の女性、そして義姉の持つ義弟へとではない愛情を描いたもの。
脇役だったはずの義姉の姿に気付いたラストの描写がおもしろい。
いまいちな中でもまだマシな話かな。
「第八話 黒く赤く」
行きずりに出会った女と夢のような関係を持った男の、その女と出会ったがために破滅していく姿を描いたもの。
「第九話 紅の舌」
これも第八話と似たような話だが、こちらのほうが巧妙。
ある小さな工場の従業員である男のもとへ、同僚の妻から夫がろくでもない女に引っかかっていると言う相談を受けたことが始まりで、そこから同僚、妻と姿が二転三転し、ラストに事実があかされる。
二転三転するがラストはすっきりと落ちている。
「第十話 化鳥」
福祉施設で暮らす老女が、ひとりの少女の事故死をきっかけに自らの周囲で起きた様々な死を手紙の体裁を取って語る話。
「第十一話 性」
妻のある男を奪い、結婚した文江と文筆家の竣三が、前の妻である秋子の影に苛まれる話で、愛憎と狂気をうまく描いている。
良品のひとつ。
「第十二話 その終焉に」
ある男が少年時代に年の離れた姉の家がある地域での、ある男との短い出会いを描いたもの。
この短編集の中ではもの悲しさや切なさを感じさせる綺麗な作品。
ん~、初めて読んだひとで、しかも男性作家だからどうかと思ったが、いくつかを除いて良品と言える作品があり、雰囲気も十二分に出ているし、総じてラストの余韻もしっかりと感じられる。
情念を描くものが多いが、しっかりとそれも描かれていて、読み応えはある。
このところ、落第ばかりが目立っていてどうよと思っていたのだが、久々に、しかも男性作家でいい作品に出会ったかな。
ただ、これを女性が読んだときにどう見るかなぁ、とは思うけど。