つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

古イ事、記ス

2005-06-29 15:26:25 | 学術書/新書
さて、遠い昔の物語な第211回は、

タイトル:古事記の世界
著者:川副武胤
出版社:教育社

であります。

古事記、と言えば?
クマソを暗殺したヤマトタケル?
ヤマタノオロチを退治したスサノオ?
ちょっとマイナー所で岩戸の前で踊ったアメノウズメ?

古事記は――その編纂意図は置いといて――楽しい物語です。
八百万(やおよろず)というほどではありませんが、これでもかと神々が登場し、アイディア満載のエピソードを披露してくれます。

本書は、古事記の成立過程、編纂者の意図、時代背景などの歴史的考察から、他の神話との比較、神名の変遷、異なる神同士に存在する類似性などの神話的考察まで、総合的な視点で古事記を語る好著です。

各エピソード、特に神代の解説は非常に面白く、何を元にして、もしくは何を意図してその話が書かれたのかがよく解るようになっています。
もちろん一意見であって、これを鵜呑みにして古事記を語る必要はありませんが、自分が読み解く時の参考とするにはかなり便利。

じっくり読んでいると、古事記の物語作法は現代でも生きていることが解ります。
死んだキャラクターと似たキャラクターが出てきて前の奴の穴埋めをするとか。
味方側と敵側にシンメトリーになるようにキャラクターを配置するとか。
劣勢の時に、颯爽と新キャラが現れていいとこ持って行くとか。(笑)

原書もそうなんですけど、ヤマトタケルが死ぬとこまでなら楽しく読めます。
それ以降は……神話だけ楽しみたい人にはちょっとキツイかも。

蛇足ですが、本書は私が卒論で参考にした本の中の一冊です。
久々に開いてみたら、ドッグイヤーとアンダーラインの嵐
普通はこんなことしないんだが……。


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