さて、第872回は、
タイトル:メドゥサ、鏡をごらん
著者:井上夢人
出版社:講談社 講談社NOVELS(初版:'97)
であります。
二度目の登場となる、井上夢人の長編です。
前回読んだ『プラスティック』はかなり特殊な作品でしたが、こちらはネタこそ奇抜ながら割と普通のミステリっぽく――見える作品。
実際どうだったかは、粗筋の後で書きます。
*
作家の藤井陽造が自殺した。
異様なのはその死に方だった……彼は自らをセメントで塗り固め、石像になっていたのである。
さらに、彼の死体と一緒に塗り込められていたガラスの小瓶には、奇妙なメッセージが残されていた――〈メドゥサを見た〉と。
ある日、藤井の娘・菜名子が、「父の家に行ってみようかって思うの」と電話をかけてきた。
彼女の婚約者である〈私〉は、ようやく父親の異様な死と向き合う決心が付いたのだろう、と納得し、同行を約束する。
行きの電車の中で菜名子は藤井の日記を見せ、そこに出てくる最後の原稿を探し出したいと言った。
藤井はなぜ自殺したのか?
最後に書かれた原稿の行方は?
彼が見たという、メドゥサとは一体何なのか?
菜名子の制止も聞かず、謎の泥沼へと踏み込んいく内に、〈私〉の周囲で奇妙な現象が――。
*
例によって一言で言うと――
理不尽系のホラーです。
ミステリだと思って読んでいると痛い目に遭うのでご注意下さい。
それでも、序盤はかなりミステリ色が濃いです。
奇妙なやり方で自殺した作家、意図的に処分されたと思われる原稿、不可解なメッセージと引きは充分。
主人公である〈私〉の行動もミステリのやり方に沿っており、地道に死者の足跡を追ってきます。
カラーが一変するのは、四分の一を過ぎた辺り。
ロジックで説明がつかない現象が頻発し、空気もかなり重くなります。
常識が崩壊する中、どうにかして筋の通った答えを見つけようと足掻く主人公の姿は……憐れと言えば憐れだけど、警告無視して首突っ込んでる時点で自業自得。(笑)
ま、好奇心猫を殺すってところでしょうか?
理不尽系ホラーだから仕方ないと言ってしまえばそれまでなんでしょうが、オチも当然、納得とか理解とかロジックとかって言葉とは無縁の不可解なものでした。
岡嶋二人名義ながら、実質、井上夢人個人の作品だった『クラインの壺』はまだ、「結局どっちなの?」で済みましたが、こっちはもうそういうレベルではありません。
次々と発生する超常現象やら、主人公を襲う異変やら、某キーパーソンの目的やら、ありとあらゆる謎と疑問をほったらかしにしたまま――そうなるしかないわな、という定番のオチで強引に終わっています。
前半の勢いに比べて、後半の失速っぷりが凄まじいので、総評としてはイマイチ。
「だから結局何がしたかったの?」と、理由を求めてしまう人間にこういう話が合わないだけかも知れませんが。(爆)
――【つれづれナビ!】――
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タイトル:メドゥサ、鏡をごらん
著者:井上夢人
出版社:講談社 講談社NOVELS(初版:'97)
であります。
二度目の登場となる、井上夢人の長編です。
前回読んだ『プラスティック』はかなり特殊な作品でしたが、こちらはネタこそ奇抜ながら割と普通のミステリっぽく――見える作品。
実際どうだったかは、粗筋の後で書きます。
*
作家の藤井陽造が自殺した。
異様なのはその死に方だった……彼は自らをセメントで塗り固め、石像になっていたのである。
さらに、彼の死体と一緒に塗り込められていたガラスの小瓶には、奇妙なメッセージが残されていた――〈メドゥサを見た〉と。
ある日、藤井の娘・菜名子が、「父の家に行ってみようかって思うの」と電話をかけてきた。
彼女の婚約者である〈私〉は、ようやく父親の異様な死と向き合う決心が付いたのだろう、と納得し、同行を約束する。
行きの電車の中で菜名子は藤井の日記を見せ、そこに出てくる最後の原稿を探し出したいと言った。
藤井はなぜ自殺したのか?
最後に書かれた原稿の行方は?
彼が見たという、メドゥサとは一体何なのか?
菜名子の制止も聞かず、謎の泥沼へと踏み込んいく内に、〈私〉の周囲で奇妙な現象が――。
*
例によって一言で言うと――
理不尽系のホラーです。
ミステリだと思って読んでいると痛い目に遭うのでご注意下さい。
それでも、序盤はかなりミステリ色が濃いです。
奇妙なやり方で自殺した作家、意図的に処分されたと思われる原稿、不可解なメッセージと引きは充分。
主人公である〈私〉の行動もミステリのやり方に沿っており、地道に死者の足跡を追ってきます。
カラーが一変するのは、四分の一を過ぎた辺り。
ロジックで説明がつかない現象が頻発し、空気もかなり重くなります。
常識が崩壊する中、どうにかして筋の通った答えを見つけようと足掻く主人公の姿は……憐れと言えば憐れだけど、警告無視して首突っ込んでる時点で自業自得。(笑)
ま、好奇心猫を殺すってところでしょうか?
理不尽系ホラーだから仕方ないと言ってしまえばそれまでなんでしょうが、オチも当然、納得とか理解とかロジックとかって言葉とは無縁の不可解なものでした。
岡嶋二人名義ながら、実質、井上夢人個人の作品だった『クラインの壺』はまだ、「結局どっちなの?」で済みましたが、こっちはもうそういうレベルではありません。
次々と発生する超常現象やら、主人公を襲う異変やら、某キーパーソンの目的やら、ありとあらゆる謎と疑問をほったらかしにしたまま――そうなるしかないわな、という定番のオチで強引に終わっています。
前半の勢いに比べて、後半の失速っぷりが凄まじいので、総評としてはイマイチ。
「だから結局何がしたかったの?」と、理由を求めてしまう人間にこういう話が合わないだけかも知れませんが。(爆)
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