さて、ここんとこ違うジャンルばっかり増やしてんなぁの第677回は、
タイトル:瞽女の啼く家
著者:岩井志麻子
出版社:集英社(初版:H17)
であります。
明治時代、岡山県和気藤村には、瞽女屋敷と呼ばれ、盲目の女性たちが暮らす屋敷があった。
その盲目の女性たちは、請われて、または出向いて、三味線や歌で門付けを行い、あるいは按摩をし、あるいは死者の口寄せをすることを生業にしていた。
そんな瞽女たちの中、門付けをしているお芳は、三味線の腕も歌もうまくもないが下手でもなく、いつまで経ってもそんな調子の女性で、按摩のイク姉さんといつも組んで仕事をしていた。
生まれつき、目が見えないはずのお芳は、しかしどこかで目が見え、見ていたことがあるであろう光景を覚えていた。
幾人かの人間たちが、急拵えの竈で牛を煮ている光景。
牛は神の使いとされるこの村では、そんなことをするはずがない光景。
それと似ているように、瞽女屋敷の瞽女頭で、村の分限者の家に生まれたすわ子は、牛の頭を持つ牛女の影を、いつからか感じるようになり、それを酷く怖れていた。
次第に、牛女のせいか、すわ子は体調を崩し、床につく日が続くようになっていた。
そして、その影は、いつしかすわ子やお芳にひたひたと迫り、ふたりの因果を語り始める……。
ホラーであります。
夜中にスタンドの明かりだけで読むべきではない本であります(笑)
アメリカのホラー映画のように直截的な怖さではなく、いかにも日本らしい、ひたひた、じわじわと迫ってくるような怖さのある小説。
単行本としては150ページ足らずと短いながらも、いままで読んだ「女學校」や「自由戀愛」にも通じる、濃密な雰囲気を持っている。
ホラーと言っても、中盤以降の内容は、すわ子やその家にまつわる因果が主体となって描かれているところも、そう感じさせる一因だろうね。
ただ、読みやすさと言う意味ではやや難あり、かな。
お芳、イク姉さん、すわ子の3人の一人称が入れ替わりで語られており、また入れ替わりが1、2ページ程度で行われたり、入れ替わりが頻繁だったりすることがある。
こうした視点の入れ替わりが、作品の雰囲気などの一助となっているところはわかるのだが、物語の流れのよさには逆効果。
また、視点が変わるときに、その前で語り終わっていた時間が戻るところも、流れの悪さにつながっている。
とは言え、この著者らしい濃密な作品世界は十二分に堪能できる。
ただ……やっぱり、ひとを選びそうな作品ではあるし、文章的なところを考えると、さすがに良品とは言いにくい。
なので、総評、及第。
タイトル:瞽女の啼く家
著者:岩井志麻子
出版社:集英社(初版:H17)
であります。
明治時代、岡山県和気藤村には、瞽女屋敷と呼ばれ、盲目の女性たちが暮らす屋敷があった。
その盲目の女性たちは、請われて、または出向いて、三味線や歌で門付けを行い、あるいは按摩をし、あるいは死者の口寄せをすることを生業にしていた。
そんな瞽女たちの中、門付けをしているお芳は、三味線の腕も歌もうまくもないが下手でもなく、いつまで経ってもそんな調子の女性で、按摩のイク姉さんといつも組んで仕事をしていた。
生まれつき、目が見えないはずのお芳は、しかしどこかで目が見え、見ていたことがあるであろう光景を覚えていた。
幾人かの人間たちが、急拵えの竈で牛を煮ている光景。
牛は神の使いとされるこの村では、そんなことをするはずがない光景。
それと似ているように、瞽女屋敷の瞽女頭で、村の分限者の家に生まれたすわ子は、牛の頭を持つ牛女の影を、いつからか感じるようになり、それを酷く怖れていた。
次第に、牛女のせいか、すわ子は体調を崩し、床につく日が続くようになっていた。
そして、その影は、いつしかすわ子やお芳にひたひたと迫り、ふたりの因果を語り始める……。
ホラーであります。
夜中にスタンドの明かりだけで読むべきではない本であります(笑)
アメリカのホラー映画のように直截的な怖さではなく、いかにも日本らしい、ひたひた、じわじわと迫ってくるような怖さのある小説。
単行本としては150ページ足らずと短いながらも、いままで読んだ「女學校」や「自由戀愛」にも通じる、濃密な雰囲気を持っている。
ホラーと言っても、中盤以降の内容は、すわ子やその家にまつわる因果が主体となって描かれているところも、そう感じさせる一因だろうね。
ただ、読みやすさと言う意味ではやや難あり、かな。
お芳、イク姉さん、すわ子の3人の一人称が入れ替わりで語られており、また入れ替わりが1、2ページ程度で行われたり、入れ替わりが頻繁だったりすることがある。
こうした視点の入れ替わりが、作品の雰囲気などの一助となっているところはわかるのだが、物語の流れのよさには逆効果。
また、視点が変わるときに、その前で語り終わっていた時間が戻るところも、流れの悪さにつながっている。
とは言え、この著者らしい濃密な作品世界は十二分に堪能できる。
ただ……やっぱり、ひとを選びそうな作品ではあるし、文章的なところを考えると、さすがに良品とは言いにくい。
なので、総評、及第。