つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

話半分でも十分楽しめる

2005-08-21 15:12:20 | 学術書/新書
さて、妄想街道まっしぐらの第264回は、

タイトル:オーケストラ楽器別人間学
著者:茂木大輔
出版社:新潮文庫

であります。

人間学、なんて言うと小難しい感じがあるかもしれないけど、そんなことはまったくない。
とは言うものの、各章のタイトルはお堅い漢字を連ねてはいる。

まず、第1章「楽器選択運命論」
どういう性格のひとが、オーケストラで用いられる楽器の中で、どういう楽器を選ぶのか、と言うことをテーマに解説されたもの。

ある楽器のイメージや音の特徴などから、どういう環境で、どういう育ち方をし、こういう性格のひとが、この楽器を選んだ、と言う感じで書かれている。

著者はNHK交響楽団などの第一オーボエ首席奏者なので、楽器と奏者の性格というものをよく知っている、とは言うものの、著者個人の考えというのがだいぶ入っているので、「をいをい」というつっこみどころはけっこうある。

まーでも、この妄想ぶりもなかなか堂に入っている(?)ので、話半分で「ほほぅ~、そういう感じなのか」と楽しめる。

第2章「楽器別人格形成論」
どういう楽器を専攻しているひとが、楽器の特性によってどういう性格を形作っていくのか、を解説したもの。

第1章のちょうど反対で、こういう楽器を専攻しているから、こういう性格になる、と言う感じ。

構成は、その楽器の持つ特徴を「音色」「演奏感覚」「合奏機能」の3つに分けて語られている。
ここはけっこう、楽器の特徴や音色、技術の難易などをベースに説得力がありそー……な感じなんだけど、「音色」「演奏感覚」「合奏機能」で形作られるはずの性格がけっこう多岐に渡っていて、こちらもどーしても話半分、って感じになってしまう。

第3章「楽隊社会応用編」
オケマンとはいかなるヒトか、と言うことを解説したもの。
ほとんどが「有名人による架空オーケストラ」と言うことで、芸能人から政治家、マンガのキャラなど、有名人の特徴などから、どういう楽器がふさわしいか、と言うことを書いたもの。

ほとんど斜め読み。
ぜんぜんおもしろくなかった。

第4章「フィールドワーク楽隊編」
ここでは著者が楽団の、管楽器奏者に、
・アナタの演奏している楽器
・その楽器の得意技
・苦手な仕事
・その楽器にとって最も大きな快感をもたらしてくれる作曲家
・最も苦手な作曲家
・アンサンブルをするうえで最も相性の良いと思われる楽器(自分とおなじ楽器を含む)
・最も相性の悪い楽器
・アナタがオケの中で最も気持ちよいと思っている楽器
・一番むずかしいと思う楽器
こうしたアンケートを行って、その結果と解説を行っているもの。

この本の中で何がおもしろかったってここがいちばん面白かった。

あとは文庫版のみの「特別講義」とか、いろいろあるけど、本来はここまで。
つか、特別講義がまたおもしろくないので、個人的にはこの第4章までで十分。

とは言うものの、まぁ、よくここまで書いたとは思うよ、このひと(笑)
いわゆる人間学としての正確性とか、論理とか、そういうのはまぁ、話半分でいいと思うんだけど、オケマンという普段接することのない職業のひとたちの性格とか、そういったものが随所に見られておもしろい。

物書きとしても、そういう傾向がある、と言う意味では楽器をやるキャラなんかを作ったときに参考になったりするだろうしね。

なかなか変わったタイプの本だけど、オススメ。
楽器の名前をほとんど知らなくても、巻頭に「オーケストラ楽器配置図」があって、写真、名称、位置が入っているから、ご心配なく。


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