つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ゴシックロマンって……何?

2006-04-11 22:44:16 | ミステリ
さて、どこまで続く七海旋風……な、第497回は、

タイトル:古書店アゼリアの死体
著者:若竹七海
文庫名:光文社文庫

であります。

若竹七海の長編ミステリです。
『悪いうさぎ』もそうだったけど、無意味に入り組んでる感じがしないでもない……。

相澤真琴は疲れ果てていた。
勤め先が倒産し、憂さ晴らしに泊まったホテルは火事になり、カウンセラーに会ってみたら怪しい新興宗教の人間で……といった不幸が連続で起こったのである。
彼女は葉崎市の海岸に立ち、以前からやってみたいと思っていたことを実行した――海に向かって、「バカヤロー!」 と叫ぶのだ。

だが……災厄の神はまだ真琴を解放してくれなかった。
目の前に打ち上げられた水死体――その第一発見者として、彼女は警察にマークされることになる。
だが一方で、幸運な出来事もあった……古書店アゼリアの店主・前田紅子との出会いがそれだった。

葉崎市という小さな街を舞台にした群像劇。
出てくる顔キャラはことごとく知人・友人・敵・主従・親族・その他諸々の関係でつながっており、それが話をややっこしくしています。
一応、誰とも無関係な旅行者・真琴が『主人公みたいな位置』にいるのですが……事件に最後まで関わった割には、狂言回しにすらなっていませんでした。(爆)

キャラクター達を縛るのは、葉崎市を支配する存在『前田家』――どの人物も何らかの形で関わっている大金持ちの一族。
失踪していた筈の前田の御曹司が水死体で発見されたことで、各人の関係は微妙に揺らぎ始めます。
それぞれが抱えている毒が表面化し、事態を混乱させていくといった展開は、いかにも、若竹! って感じです。

そんな人々の中心にいるのが、古書店アゼリアの主・前田紅子。
前田の財産を一代で築き上げた傑物であり、ロマンス小説のことになると妙にうるさい趣味人であり、しれっとした顔で事件の裏にある秘密を守り続けている情念の人でもあるという……非常に癖のある、いいキャラクターです。
(もっとも、客に向かって、「駅ビルの新刊書店で光文社文庫でも買うがいいや」なんて言うのはひどいと思うが……本書って、光文社文庫だし。(笑))

と、こうやって書くと、いつものように毒満載な話に思えますが、全体的には割と明るいタッチの作品でした。
真琴と紅子の側に付いてくれる人々が皆どこか抜けてるのと、ちょっとだけロマンスの要素が入ってるから、かも。
もちろん、ブラックなオチはちゃんと付いていたりしますが。

ただ、ミステリとしては……人間同士の裏のつながりが多過ぎるのが、ちと難。
想像付く関係もありますが、不意打ちみたいに『実はこいつとこいつは××で』、という場合も多く、読んでて疲れました。
紅子に、『登場人物の殆どと顔見知り』という役割を与えることで、強引にまとめているといった印象……オチも何だかなぁ。

犯人は誰? とか気にせず、ノンストップで読むのが吉。
話の流れや、人物同士の掛け合いは相変わらず上手いので、一気に読めます。
ロマンスの小説の薀蓄がちょこちょこ出てきますが、私は読み飛ばしました。(爆)



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