さて、映画のテーマ曲だけは知ってたりする第722回は、
タイトル:天河伝説殺人事件(上)(下)
著者:内田康夫
出版社:角川書店 角川文庫(初版:S63)
であります。
お初の作家さんです。
映画化されてますが、残念ながら視ておりません。
なぜか、中森明菜の『二人静』だけは知ってたりしますが。(笑)
*
一人の男が東京新宿の高層ビルの前で急死した。
解剖により、死因が青酸性の毒物であることが判明し、捜査は他殺の線に傾く。
被害者には不審な点が二つあった……大阪にいる筈が東京を訪れていた事、そして、天河神社の御神体『五十鈴』のレプリカを手にしていた事である。
能の水上流宗家・水上和憲が引退することになり、彼の二人の孫の内、どちらかが後継者に選ばれることになった。
順当にいけば兄の和鷹だろうが、彼はその出自故に疎んじられており、異母妹の秀美が選ばれる可能性も低くはないだろう、というのが周囲の見解であった。
だが、和憲の引退能の最後の演目『道成寺』の最中に和鷹が急死し、事態は一変する。
ルポライター浅見光彦は、奈良県・吉野を取材中に一人の風変わりな老人と出会った。
独り言なのか、こちらに話しかけているのか解らない口調で、天河には何度も来ているが吉野に来るのは初めてだと老人は語る。
問題は宿に帰ってから起こった……新たにやってきた客の一人が、家出した老人を探していたのだ。自殺の可能性まであるのだと言うが――。
*
能楽を扱った長編ミステリです。
文章は軽すぎない程度に平易で、ページ数の割には最後まで結構短時間で読めます。
当然、能の説明もあるのですが、物語に支障がない程度に抑えられているのはいい感じ。
主人公は、この作者の持ちキャラ・浅見光彦。
いわゆるお坊ちゃんで、金銭的束縛は受けないものの家庭的束縛のために各地に飛ばされ、持ち前の人の良さで殺人事件に首を突っ込んでしまう、そんなキャラです。
女性に妙にモテるのは……まぁ、この手の話のお約束なので置いときましょう。(笑)
とにかく登場人物が多いので最初は混乱しますが、覚えておく必要のあるキャラクターは多くはありません。
では、顔キャラの扱いがいいのかと言うとそうでもなく、水上流のお家騒動の渦中にいる菜津美の性格が殆ど描かれていなかったり、東京の事件を吉野に持ち込んできた智春は浅見とちょっと絡んだだけで早々に退散したりと、切り捨てが結構激しいです。
推理力はあるけど何となく頼りない感じの探偵役・浅見に焦点を絞り、テンポ重視で進めていく作品だからこれで良いのかも知れませんが。
ミステリとしては……何だそりゃ? と言ったところ。
浅見の捜査は面白いけど、東京の事件と吉野の事件をつなぐ最重要人物を探す過程は――
推理でも何でもないですね。
非常に読みやすい作品です。謎解きに期待しなければオススメ。
色々煽った割には、枝葉のエピソード放り投げてさらっと終わらせてるので、読後に妙な虚しさを覚えたりもしますが……。
タイトル:天河伝説殺人事件(上)(下)
著者:内田康夫
出版社:角川書店 角川文庫(初版:S63)
であります。
お初の作家さんです。
映画化されてますが、残念ながら視ておりません。
なぜか、中森明菜の『二人静』だけは知ってたりしますが。(笑)
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一人の男が東京新宿の高層ビルの前で急死した。
解剖により、死因が青酸性の毒物であることが判明し、捜査は他殺の線に傾く。
被害者には不審な点が二つあった……大阪にいる筈が東京を訪れていた事、そして、天河神社の御神体『五十鈴』のレプリカを手にしていた事である。
能の水上流宗家・水上和憲が引退することになり、彼の二人の孫の内、どちらかが後継者に選ばれることになった。
順当にいけば兄の和鷹だろうが、彼はその出自故に疎んじられており、異母妹の秀美が選ばれる可能性も低くはないだろう、というのが周囲の見解であった。
だが、和憲の引退能の最後の演目『道成寺』の最中に和鷹が急死し、事態は一変する。
ルポライター浅見光彦は、奈良県・吉野を取材中に一人の風変わりな老人と出会った。
独り言なのか、こちらに話しかけているのか解らない口調で、天河には何度も来ているが吉野に来るのは初めてだと老人は語る。
問題は宿に帰ってから起こった……新たにやってきた客の一人が、家出した老人を探していたのだ。自殺の可能性まであるのだと言うが――。
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能楽を扱った長編ミステリです。
文章は軽すぎない程度に平易で、ページ数の割には最後まで結構短時間で読めます。
当然、能の説明もあるのですが、物語に支障がない程度に抑えられているのはいい感じ。
主人公は、この作者の持ちキャラ・浅見光彦。
いわゆるお坊ちゃんで、金銭的束縛は受けないものの家庭的束縛のために各地に飛ばされ、持ち前の人の良さで殺人事件に首を突っ込んでしまう、そんなキャラです。
女性に妙にモテるのは……まぁ、この手の話のお約束なので置いときましょう。(笑)
とにかく登場人物が多いので最初は混乱しますが、覚えておく必要のあるキャラクターは多くはありません。
では、顔キャラの扱いがいいのかと言うとそうでもなく、水上流のお家騒動の渦中にいる菜津美の性格が殆ど描かれていなかったり、東京の事件を吉野に持ち込んできた智春は浅見とちょっと絡んだだけで早々に退散したりと、切り捨てが結構激しいです。
推理力はあるけど何となく頼りない感じの探偵役・浅見に焦点を絞り、テンポ重視で進めていく作品だからこれで良いのかも知れませんが。
ミステリとしては……何だそりゃ? と言ったところ。
浅見の捜査は面白いけど、東京の事件と吉野の事件をつなぐ最重要人物を探す過程は――
推理でも何でもないですね。
非常に読みやすい作品です。謎解きに期待しなければオススメ。
色々煽った割には、枝葉のエピソード放り投げてさらっと終わらせてるので、読後に妙な虚しさを覚えたりもしますが……。