つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

らしく書いたら?

2005-11-19 00:26:17 | ファンタジー(異世界)
さて、ファンタジーでしょ? の第354回は、

タイトル:孤狼と月 フェンネル大陸偽王伝
著者:高里椎奈
出版社:講談社NOVELS

であります。

主人公の少女フェンベルク……フェンは、ストライフという王国の王族の末子で、13歳にして、人間とおなじ形をしながら人間ではないとされるグールの軍隊、獣兵師団を率いる将軍だった。
国のため、元帥である兄のために、ひとに忌み嫌われるグールという存在で構成された軍隊を指揮し、戦場へ赴いていた。

戦場で勝利を得、帰国したフェンは罪人がその仲間たちの手引きによって脱走したことを知り、町の者の噂を頼りにその後を追う。
そこでその罪人に自らの置かれている立場を教えられ、そのことを知った敬慕する兄に、犯罪者として流刑されることとなる。

罪人の言葉がきっかけとは言え、信じていた国や王、兄たちに裏切られ、そのショックで心を閉ざしてしまったフェン。
けれど、その身分故に流刑先で人買いに売られ、競売にかけられる。
そして競り落とされた男に養われながら、ある事件に関わるようになり、自らの不明を知り、そして様々な国を旅することを決意する……。

何のひねりもなければ、奇を衒ったところもない、いかにもなファンタジーもの。
ストーリーの流れも、フェンのストライフ王国での仕事ぶりから始まり、信じていた者たちの裏切り、失意、そして様々なことを知り、成長していく物語で、お約束の塊。
とは言え、かなり安心して読めるのは読めるだろうね。

すごいおもしろい!
なんて口が裂けても言わないけど、ライトノベルとして軽く読むには、まぁ適していると言ってもいいかもしれない。
ただし、これで新書なんて、講談社、ぼりすぎやで。
どう考えても文庫で出すべき話と分量だよ。

引っかかるのはやっぱり文章かなぁ。
「とうとうここまで来てしまった」とかで使う、「とうとう」を「到頭」と書いたり、「しっかり」を「確り」だったり。
……あの、ジャンル把握して書いてます? と聞きたくなるね。

あと、そういうイメージなんだろうけど、こういう横文字メインのファンタジーで「蔀」とかさ、もっと単語は選んで使えよ、って言いたくなる。
あとがきを読むと勢いで書けたみたいな感じで書いてあったので、わからないでもないけど、違和感ないのかね。
当然、推敲するだろうに。

あと、気になるところと言えば、裏切られたあとのフェンかな。
仮にも軍属で、しかも最初のグールを率いた戦場で相手の将軍に対して、極めて冷静に首にナイフを突きつけて降伏を迫るキャラが、いきなり「考えるのも考えないのも疲れ」るほどに落ち込むか?
何日も何日も何もせず、杖なしでないと歩けなくなるほどになるか?
そりゃぁ、13歳の少女、と言う設定からすれば、無理もないよと言うひともいるだろうが、それまでのストーリーの流れからはとてもそうは思えないね。
そういうところに説得力を持たせたいなら、もっとそういうところを描くべきだね。
元帥の兄をとても慕っている、という場面を見せるのも一場面だけだし。

ファンタジーならファンタジーらしい書き方と、説得力をもっと持たせられるような描写とかがしっかりしてくれれば、「お約束な話だけど、読んでみても悪くないと思うよ」くらいには言えただろうにねぇ。
まー、続きも出てるみたいだし、読むものに困って古本屋にあったら買うかな。


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