インタビューに応じるチョン・セヒョン元統一部長官
チョン・セヒョンの情勢トーク~『韓半島信頼プロセス』、3ケ月過ぎて看板だけ残った~
北朝鮮非核化を放棄した米国、引き立て役になった韓国
朴槿恵政権の統一外交政策に関する韓国内の論評を紹介します。以下の翻訳文は、元統一部長官の丁世鉉(チョン・セヒョン)円光大学総長のインタビュー記事です。出展は韓国のインターネットメディア『プレシアン』2013年5月13日付。長文のため、内容の一部を省略しました。原文のサイトを挙げておきますので、参照してください。 KJH
http://www.pressian.com/article/article.asp?article_num=10130512191220&Section=05
プレシアン(以下、問):朴槿恵大統領の訪米が北朝鮮核問題解決の出発点になるのか期待を集めたが、現状を打開する新しい試みはなかった。今回の韓米首脳会談をどのように評価するか?
チョン・セヒョン(以下、答):朴槿恵大統領の訪米に対する損益計算書を作成するなら、私は“損をした取引”と評価する。私たちにとって重要な懸案である北朝鮮の核問題、特に大統領が掲げる『韓半島信頼プロセス』に対して、米国からは外交辞令以上の支持を得られなかったからだ。会談直後に発表した『韓米同盟60周年記念共同宣言』を見れば、米国の関心事項が主に議論されており、私たちの重要問題に対する言及は殆どなかった。
首脳会談の時期が韓国政府に不利だったといえる。今年が停戦協定締結60周年になることに加え、最近の米国はシリア問題解決に外交力を集中している。また、米国側で北朝鮮核問題、韓半島問題を担当する東アジア太平洋国務次官補が今も空席だ。したがって、私たちの懸案問題を米国と具体的に調整できる外交窓口がなかったかもしれない。ジョン・ケリー国務長官が去る4月、韓中日に立ち寄った時点では北朝鮮の核問題を解決するために2者会談や4者会談も可能だと話していたが、それに対する韓国側のフォローが十分ではなかったと考える。
オバマ大統領は『韓半島信頼プロセス』について「朴槿恵大統領の接近方式と私の接近方式が似ている」としたが、それこそ外交的な辞令といえる。ケリー国務長官は韓中日への歴訪後に開かれた上院外交委員会聴聞会で、『韓半島信頼プロセス』について「現状では実行が困難」と表明している。対話を重ね相互の信頼を構築して北朝鮮の核問題を解決するというのが『韓半島信頼プロセス』なのに、米国側は対話を通して解決できる状況ではないという立場なのだ。このような状況で、外交ラインを通じて米国を動かすのは容易ではなかっただろう。
それでも、首脳会談で『韓半島信頼プロセス』の重要性を強く主張し「米朝対話に応じてほしい」と要求したなら、米国も共同宣言でそれに関したコメントを入れないわけにはいかなかっただろう。「韓国側の要求を米国は十分に傾聴し、今後この問題に関する協議を継続していくことにした」ぐらいのコメントを入れることはできたはずだ。そうした内容が全くなかったのを見ると、韓国政府が話題にもしなかったのだろう。
首脳会談の全般を総合して感じるのは、『韓半島信頼プロセス』を立案した朴槿恵大統領の対北認識や南北関係の観点が、大統領就任から3ヶ月を過ぎて一変したのではないかということだ。『韓半島信頼プロセス』の看板はかけているが、真剣に推進する意志はすでに消滅したのではないかと思う。推進する意志があったなら、共同宣言のどこかで触れられていたはずだ。
ケリー国務長官が4月中旬に韓中日を歴訪して協議した内容のうち、「9・19共同声明に戻るべきで、6者会談はもちろん2者会談、4者会談も可能だ」というのは済んだ話になってしまった。「中国役割論」だけが残った状況だ。実際にケリー長官は中国に対して、「北朝鮮核問題の解決を主導してほしい」と要請した。つまり、「自分たちはシリア問題で手が一杯だから、北朝鮮核問題は中国が管理してほしい」という話なのだ。だが、私は「中国役割論」こそ米国の錯覚中の錯覚だと判断している。
根拠を三点挙げたい。まず、中国が北朝鮮核問題を解決するために米国式の圧迫を加える可能性が殆どないということだ。次に、北朝鮮核問題は根本的に米国が解決しなければならない問題だ。北朝鮮が核カードを通じて得ようとするもののうち、中国や韓国の力だけで提供できるものは一つもない。米朝修交、平和協定、経済支援などは米国が決心しなければならない問題だ。最後に、東北アジアあるいはアジア全体の覇権をかけて米国と中国が競争局面に入っているのが現状だ。このような状況で、中国が米国の「使い走り」をするだろうか。「中国役割論」は、米国が中国に「使い走り」をさせる事に他ならない。
「中国役割論」には韓国政府も期待をかけているようだ。「中国が北朝鮮に対する制裁を始めた。3回目の核実験に対する国連制裁を忠実に履行している」と判断して、「米国の言うように中国が積極的に動くなら北朝鮮核問題が解決されるから、その時まで待ってみよう」という立場を定めたようだ。首脳会談後の記者会見でも、そのようなニュアンスが濃厚だった。
「北朝鮮が非核化への意志を行動で見せれば対話できる。韓米両国は対話の門を開いている」という内容だった。しかし、「対話の門が開かれている」という表現ほど消極的な外交姿勢はない。対話の門を開いているといったが、北朝鮮が対話の門に出てこれるような要因は一切なかった。北朝鮮核問題を解決する意志がこの政府にないのではないか、『韓半島信頼プロセス』は開始もできずに終わってしまうのではないか、と憂慮される。
李明博政府では『非核・開放・3000』政策を当初から明確に出していたので期待しなかったし、失望することもなかった。だが、朴槿恵政府は違った方式で接近すると公言した。3月27日に開かれた統一部・外交部業務報告でも、南北対話を重ねながら北朝鮮核問題の解決方法を探すと明らかにしている。その分、今回の首脳会談で完全に期待を裏切られたので。失望がより大きい。
問:韓国が“損した取引”だと話されたが、国内メディアの大部分は今回の訪米が非常に成功的だったと評価している。なぜ肯定的に評価するのだろうか?
答:私たちの外交目標を単に韓米関係の維持・発展に置くならば、損害を被ったのではないと言うこともできる。韓米関係が外交の全部であった時代の観点で見れば、今回の外交は成功したのだ。だが、6.25(朝鮮戦争:訳注)以後の60年間、米国が提供する安保の傘の下で十分な経済力を持ったんだから、今後はこの経済力を維持し発展させるために外交の多角化を模索すべきではないだろうか?
そうした点で今回発表した韓米共同宣言文は、今後の韓中関係を発展させていくうえで障害物になるかもしれない。宣言文は、米国の対中国包囲戦略に韓国が積極的に協力するフレームで組まれている。「21世紀の安保における新しい挑戦に対応できるように、同盟を引き続き強化し調整していく」という部分がある。この「21世紀の安保における新しい挑戦」とは北朝鮮核問題を指しているのではない。北朝鮮核問題はすでに20世紀末に始まり、今も現在進行形の挑戦だ。安保における新しい挑戦は、米国中心の東北アジア軍事秩序に対する挑戦を意味している。挑戦の主体は中国にならざるを得ない。G2の位置にまで上ってきた中国を指しているのだ。
朴槿恵大統領が翌月に中国を訪問するが、この内容のために中国の疑いを受け、協力を取り付けるのが困難になるかもしれない。米国と連携して中国の台頭を抑制するという、極めて対決的な趣旨だからだ。対中関係の将来を考慮したとは思えない。
最近になって中国は軍事費を持続的に増強している。世界銀行とゴールドマンサックスは2025年頃に中国が米国のGDP規模を追い越すと予測した。また、国際通貨基金(IMF)はPPP(実質購買力)を基準にした中国のGDP総額が、2016年には米国を上回るものと展望している。
中国に対する米国の警戒心が大きくなるなか、中国は習近平時代に入ってから米国と協力しながらも、他方では米国の中国包囲戦略を牽制する動きも見せている。アフリカ外交の強化とかロシアとの関係回復などもその例だ。昨年には韓米日が行なった西海(ソヘ)連合艦隊訓練に対応するために、西海でロシアと合同海上軍事訓練をしている。米国が北朝鮮核問題を口実に韓米同盟を強化しミサイル防御網(MD)を構築することが、中国の立場では対中包囲と圧迫だと見なすしかないだろう。
問:今回の首脳会談で「北朝鮮核問題の解決は事実上あきらめた反面、米国の対中国包囲戦略に引っ張り込まれ米国にいいように弄ばれた。一方的に私たちが米国側に立てば、韓中関係に悪影響を及ぼす」という指摘なのか。
答:表面上は「韓米関係をグローバル・パートナーシップに格上げする」と取り繕っておいて、実質的内容においては米国中心の外交、米国の国益増大に協力する結果を招いてしまったのだ。私たちの懸案問題は一つも提示できなかった。
共同宣言文の「北朝鮮の挑発から両国国民を保護するために、北朝鮮のミサイル威嚇への共同対応と共に、情報・監視・偵察体系の連動を含んだ包括的で相互運用可能な連合防衛力を持続強化していく」という部分は、事実上MDを意味するものだ。この内容を読むと、米国はもはや、北朝鮮の核を根本的になくす「非核化」の水準で解決する意思は撤回したと思える。核の外部流出だけを防ぐ「不拡散」を米国の政策目標に決めたので、MDに関するコメントを明記せずにぼかしたのだろう。私たちには死活問題である北朝鮮核問題だが、米国はそうでもないので中国に解決を任せながら、自分たちはシリア問題に全力投入しているわけだ。米国が北朝鮮の非核化は現実的に不可能だと見ているか、あるいは、米国の国益に役立たないと判断したかのどちらかだろう。多分、後者だと思う。
問:つまり、米国は北朝鮮核問題の解決に積極的意志がなく、韓国も主導的役割を担うつもりがないことが、今回の首脳会談で確認されたということか?
答:そうだ。だが、韓国はそうするべきではなかった。何としてでも非核化を主張し、米国がその方向に転換するようにすべきだった。米国の本心は不拡散であっても公式の立場は非核化だったから、その公約を守れと迫るべきだった。朴槿恵政府は『韓半島信頼プロセス』を持ちだしたが、その入口である南北対話については何の措置も取らずに「対話の門が開いている」とだけ主張している。『韓半島信頼プロセス』を推進するには、「対話の門を開けておく」と言うだけでなく、私たちがその門前まで行って北が出て来れるように呼びかけないとだめなんだ。
問:北朝鮮核問題と関連して米国は非核化よりは不拡散の立場を定めたし、韓国も主導的に出ないことが確実なら、今後の韓半島状況はどのように進行するのか?
答:非核化ではない不拡散の方針が固まり米国とその方向に行くとしたら、『韓半島信頼プロセス』は何一つ実行できないだろう。おそらく、保守志向の朴大統領支持者もこのような状況進展を喜ばないだろう。反対する可能性が大きい。北が核を保有する状況とは、南が核を頭に載せて生きろというのに他ならない。「こんな状況で一体、どんな南北対話や交流協力をするのだ」という反発が出てくるだろう。
結局、今と同じ状態が続くことになる。北朝鮮核問題は放置され南北関係は行き詰まって...。『韓半島信頼プロセス』の入口が南北対話で出口は北朝鮮核問題の解決なのに、朴槿恵政府が自ら『韓半島信頼プロセス』が稼働できないように米国の外交方針に協力してしまった。
北朝鮮は今後、核兵器の小型化・軽量化を推進していくだろう。「核カードを通じて受け取るものがなくなった。このままでは米朝修交も望めないし経済支援や平和協定も期待できない。オバマ政府と朴槿恵政府に期待するこは何もない」と考え、今年に発表した「核武装と軽工業発展の併行推進」という路線に行くしかない。
この路線に対して朴槿恵大統領が「そのような政策は成功しない」と述べたが、そんな言及は南北当局間対話の余地を自ら遮断するものだ。北の立場からは内政干渉と見なすだろう。 相手を認めるには、その路線に対して是非を論じるべきではない。
問:去る2009年、オバマ政権の第一期がスタートする時点では、米国が北朝鮮核問題の解決に積極的に取り組むだろうと期待されたのだが。
答:私たちがオバマに期待をかけたのは、彼が「核兵器のない世界」を作ると演説したからだ。ノーベル平和賞の受賞もその構想のおかげだった。しかし実際に「核兵器のない世界」に寄与したことはなかった。ノーベル賞を前借りしたようなものだ。結果としてオバマ政権は、核兵器のない世界ではなく海外における米国の軍事的介入を拡大し、北朝鮮核問題の優先順位を下げた。そして、「戦略的忍耐」という言葉でそれを正当化したのだ。
問:前回の「情勢トーク」で春になると“北朝鮮威嚇論”が提起される理由として、米国の予算審議日程を関連させて説明されたが。
答:1983年か84年だったと思う。4月頃に某日刊紙にコラムを一つ書いた。「春になれば毎年、北朝鮮軍の前線陣地配置説が出てくる」で始まるコラムだった。1980年代は、1961年から始まった韓国の軍事政権が“北朝鮮の対南脅威のために安保強化が必要だ”との論理で、軍事政権の存在理由を国民に説得して認識させた時代だ。
何をするにも北朝鮮を口実にしていた時代だ。挑発の可能性、北朝鮮軍の前線陣地配置などは、国内政治的な必要生もあったが、米国の国防予算を審議する頃になると常に米国発で出てくる情報だった。 1970年代からほとんど毎年、春になると前線陣地配置説が出てくるが「そのような前線陣地配置をすべて合算すれば今頃、北朝鮮軍は済州道(チェジュド)の南にまで到達していなければならない」と書いたことがあった。
朴槿恵政府の初期から、北朝鮮の挑発と威嚇をメディアは執拗に強調してきた。他の見方をすれば、保守的な論調が政府の『韓半島信頼プロセス』を推進できない状況にした側面もあった。そうなった原因を説明しないで、北朝鮮の行動だけを報道すれば「あんな連中を相手に何の対話や信頼か!」という反応が出てくるしかない。そのような主張が大勢になれば、信頼プロセスは開始すらできない。
今年のフォール・イーグル韓米合同軍事演習(3月1日~4月30日)は、例年に比べて強度が増大したものだった。B-52戦略爆撃機、B-2ステルス爆撃機、核潜水艦、駆逐艦などが動員されて高強度の訓練を展開した。わが方では通常の防御的な訓練というが、北の立場では毎年繰り返される威嚇と感じるしかないだろう。北としては「南の新政府と米国の2期オバマ政府がスタートした時点でこのように強く出てくるのは、連携して北を崩壊させようとするからではないか」と判断をしただろう。それで猛烈な抵抗を展開したのだろう。 わが方から見れば挑発と威嚇だが、北の立場では抵抗であり反発なのだ。
では、米国はなぜこれほどの高強度訓練をしたのか? 米国の予算制度では、毎年5月15日から下院で歳出予算審議が始まる。それに先立ち2月の第一月曜日までに大統領が連邦政府予算案を議会に提出しなければならない。上下院各委員会はそれを受け、6週間の期限で各予算委員会に予算評価報告書を提出する。政府案を受けて実務者が1次的なコメントを付けて委員会に提出するわけだ。
4月15日までに上下院で予算審議の内容を決める措置を取り、5月15日から下院で予算審議書を細部にわたって検討する。6月30日までに下院で13個の歳出予算案を通過させなければならない。そして7月には下院で通過させた歳出予算案を上院で審議することになる。7月15日に大統領が修正予算案を提出して、9月30日に大統領が最終署名し予算案は確定する。そして10月1日から新しい会計年度が始まるのだ。
重要なのは3月中旬から5月15日までの二ヶ月間、予算審議に関連した各種の評価報告書が出されるという点だ。米国防総省では既存の予算を削減されないために、必要なら米軍が駐屯する地域で緊張を高めることになる。今年、とりわけフォール・イーグル訓練の度合いを高めたのは、今回の2期オバマ政府が「財政の崖」状態でスタートしたためだと見れる。北が猛烈に抵抗、反発するように仕向て“北朝鮮脅威論”を名分にし、駐韓米軍と駐日米軍の予算削減を阻止しようとする計算が作用したと思う。
問:だが、フォール・イーグル訓練が強化されたのは、今年2月に北朝鮮が敢行した第3回核実験への対応だったのではないか?
答:北朝鮮が訓練の日程を想定していたとは思えない。それとは別途に動いたのだろう。訓練は北朝鮮が核実験を敢行する以前の、昨年秋から計画されていたことだ。核実験への米国の対応は、国連安保理の決議案を通じて決定された。3月から対応がより強化したのは、「財政の崖」状況で予算編成する際に、国防予算を削減されないための根拠資料だと言える。米国政府各部署の利害関係や議会内における予算削減派と維持派間の競争の渦中で、私たちは事情も知らずに対北朝鮮強硬派の論理を代弁し続けたわけだ。
開城(ケソン)工業団地の件は、東北アジアの緊張を高める米国に韓国政府が協力するのを防止する目的で北が切ったカードだと思う。ところが、私たちがそれに対してさらに強硬な手段を行使したので、北朝鮮の退路がなくなってしまった。李明博政権の時も同じように北が通行を制限したことがあるが、しばらくして解除された。だが、李明博政権の時はフォール・イーグル訓練がこんなに膨大な規模ではなかった。また、李明博政府の時に開城工業団地が問題となったのも軍事訓練の時期ではなかった。
今年、北朝鮮の猛烈な反発は高強度な訓練に対してのものだったのに、私たちはそれを開城工業団地と関連させてさらに強硬な対処をするしかなかった。朴槿恵政府としては不運な側面もある。
問:それなら北朝鮮への、そして南北関係に対する朴槿恵大統領の立場が変わる契機になったのは開城工業団地の問題なのか?
答:そうだと思う。本来なら、開城工業団地の問題を契機に南北対話を始めていなければならなかった。当時、南北当局間の接触が必要な状況は作られていた。北が開城工業団地で従業員撤収などの強硬措置を取ることになったのは、キム・グァンジン国防長官の“人質救出”の談話や、「北はお金のために開城工業団地を閉鎖できない」という保守メディアの“ドル箱論”などが原因だった。
北は、それに抗議して従業員撤収という強度な対処をすれば南側で会談をしようと出てくるのではないか、朴槿恵政府と南北関係の新しい枠組みを作れるのではないか、と期待したようだ。そうすれば開城工業団地への投資も増やし、金剛山観光も再開できると期待して事を大きく構えたのだが、南はバサッと切り捨てた。朴槿恵政権が強硬対処した背景には、フォール・イーグル訓練に伴う韓半島の軍事状況、訓練に対する北の激烈な抵抗と反発には断固たる姿勢を見せなければならないとの意識があったからだろう。その時点ですでに『韓半島信頼プロセス』を放棄していた状態だったと思う。
問:だとすれば、米国が韓半島で追求する戦略的目標は何か?
答:不拡散とMDだと言える。このような状況がしばらく維持されることになるだろう。私たちは戦争でも平和でもない状態に置かれ、分断の克服は思いもよらないこととなる。韓半島状況の安定的管理も期待できないだろう。
問:北朝鮮核問題が解決されず南北がずっと対峙状態にあるなら、このような状況が米中関係をより一層の葛藤へ推し進める要因にならないか。
答:北朝鮮核問題は米国が中国を牽制できる名分になってしまった。米日同盟強化ないしは日本の防衛力増強、韓米同盟強化による安保協力、(共同宣言にあるように) MD配置などを推進することで中国を牽制すれば、中国も対処するために国防予算をより一層増加させるだろう。わが国の立場では、安保を60年以上米国に依存してきたので簡単に抜け出すことはできないが、経済発展を持続するには韓中関係を円満に発展させていくべきなのだ。ところが、米国に一方的に傾いた状況で経済だけは中国と上手くやっていくことなどできるだろうか?
米国の対中国圧迫に参加しながら、どのような“裏ワザ”で韓中関係を発展させていくことができるのか? 中国がそれも見通していないと思うのか? 翌月に予定されている朴大統領の訪中が、形式的には韓米関係と韓中関係のバランスを取るものと見えるかもしれないが、内容的には、今回の韓米首脳会談が原因でバランスを取るのも容易ではない状況になってしまった。米国が韓国を有無をいわさず味方に引き寄せてしまったのだ。今後も米中関係における米国の戦略は、北朝鮮核問題を活用し軍事的に中国への圧迫を加えて包囲する方向に展開されるだろう(終)。