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「同盟」と「平和」の距離-米韓首脳会談への断想-

2013年05月09日 | 韓米関係
「同盟」と「平和」の距離-米韓首脳会談への断想-

 歴代の韓国大統領が就任後、最初に訪問する国はアメリカです。朴槿恵大統領も例外ではありません。5月7日、オバマ大統領との首脳会談を終え共同記者会見に臨んだ朴大統領は、対北朝鮮政策における韓米同盟の強い絆をアピールしました。

 両首脳の対北メッセージは単純明快でした。オバマ大統領は「北朝鮮が危機を作り出し譲歩を引き出す時代は終わった。...北朝鮮が先ず約束と義務を果たし非核化への意思を見せるなら、米韓両国は対話する用意がある」と述べ、既存路線(戦略的忍耐)の堅持を強調しました。朴大統領はさらに「北の変化を待つのではなく、変化せざるを得ないように国際社会が一貫した姿勢で臨むことが重要であり効果的だ」とし、対話よりも制裁圧力の優先を主張しています。

 今回の首脳会談には内外の注目が寄せられていました。米韓合同軍事演習が4月末で終了し、戦争危機が叫ばれていた朝鮮半島の緊張も収束に向かうと予測されるなかで開催されたからです。核問題を解決し朝鮮戦争の停戦体制という不安定要因を取り除くために、対話と交渉に向けた何らかの対北メッセージが公表されるのではと、期待する向きも少なくありませんでした。

 しかし、両首脳は朝鮮半島の平和体制に向けたメッセージを語らず、対話への意思すら垣間見ることができませんでした。
「対話への窓口は閉ざしていない」と言いつつも、「北朝鮮の非核化」が前提であり、その前提条件を北が決して受容しないことが明確である以上、それを対話のメッセージと見なすことはできないからです。

 どうやら、朴大統領の対北政策は、核放棄を南北関係改善の前提条件にした李明博前大統領の「非核・開放・3000」政策と大差がないようです。オバマ大統領も「この数年間、両国が歩調を合わせてきたアプローチに似ている」と満足気です。だとすれば、前政権の5年間に朝鮮半島の軍事緊張が極度に高まり、南北関係が最悪の状況まで後退した現実から、両首脳は全く教訓を得ていないことになります。

 今年は、朝鮮戦争の停戦協定締結から60年になります。一日も早く終戦を宣言し平和協定を結ぶ時だと思いますが、米韓首脳会談では「米韓同盟の60周年共同宣言」が採択されました。
 その一節には「米国は拡大抑止と、通常および核戦力など全ての軍事的能力の使用を含む確固たる対韓防衛公約を再確認する」と書かれています。北への核使用もあり得ると明言しているのです。また、「両国は...民主主義と自由市場経済の原則に立脚した平和統一を実現する」という、吸収統一への露骨な意思も記されています。この勇ましい文面からは、両体制の平和共存に基づく漸進的な統一を誓った「南北合意書」や「6.15南北共同宣言」の精神を見出すことはできません。。

 70年に及ばんとする民族分断の痛史から、私たちが学ぶべきことは何でしょうか。
 同族を制圧するために結ぶ大国との「同盟」によっては、「平和」も「統一」も決して達成されないという真理ではないでしょうか。

 最後に、冒頭のオバマ大統領の言葉をもじって、両首脳に返したいと思います。
 「軍事的圧力と経済制裁で北に譲歩を強要する時代は終わった。米韓両国が北の体制保全と平和協定への意思を表明するなら、朝鮮半島非核化への道は再び開かれるだろう。」 

2013年5月9日 J.H.K.