迷宮映画館

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愛についてのキンゼイ・レポート

2005年08月29日 | あ行 外国映画
インディアナ大学の昆虫学の教授、アルフレッド・キンゼイ。タマバチの研究の第一人者。タマバチにかけては誰にも負けないが、女性にはちょっとオクテ。いや、私にはタマバチがある。何も憂う事などない。
 彼の講義を熱心に聞く女子学生がいた。クララ。女性から敬遠されがちな教授の言葉に情熱を持って聞き入る。タマバチしか目に入らなかったキンゼイ教授だったが、クララが気になってしようがない。子供のように迫るキンゼイ、そう、そうなのだ。彼はでっかい子供。昆虫学ならば誰にも負けない権威だが、こと恋愛にかけては、さらにはその次の段階などは、完全にド素人。どうするキンゼイ?

 クララと結婚を果たしたキンゼイだったが、初夜は惨憺たるもの。失敗に終る。しかし、そこからが常人と一線を画するところ。臆することなくキンゼイは専門家に聞きに行く。どうしたらメイク・ラブを完遂する事が出来るのか。その助言どおり、合体成功。この体験が元になり、彼のもとに性生活の悩みを打ち明けに来る人が訪れるようになる。変な慣習にとらわれている人。妙な噂を信じている人。実は皆悩みを抱えているんだ。

 そうだ!みんなの悩みを解消してあげようじゃないか。誰でも送る性生活。しかし、その性生活は間違ってはいないのか?自分はノーマルなのか?他人はどうなのか?よし、タマバチと何ら変わる事はない。より多くの被験者を集めて、統計をとろうではないか。これぞ、人々が求めているものだ。

 まさしく、アメリカ。あまりにアメリカらしすぎて、苦笑してしまった。他人がどんなセックスしようがいいじゃないですか。自分と相方がよきゃいいんです。まずかったら、相手ととことん考えたらいい。話し合えないような相手なら、そりゃ相手の選択の間違い。セックス何ざ、習うもんじゃござんせん。おまけに他人がどんなセックスしてようが、かまねでけろ(山形弁)!といいたい。

 いや、彼は彼で素晴らしい。彼の純粋な探究心は多くの人に救いをもたらした。救いは、同性愛者によりもたらされたような気がしないでもないが。個性を認め、個々の能力を存分に伸ばすアメリカの教育!などといいながら、実はアメリカという国は、それこそ異なものを排除してきたのではないか。キンゼイ教授が映画の中で、アメリカに最初に渡ってきたのがプロテスタントでなかったら?と、問い掛けるのだが、まさにそこだ。彼は文字通りWASP。そしてWASPの定義に合わなかった。いつまでも純粋な心をもち、彼が信じる道義で動いた。それは衝撃であり、一部に共感され、猛烈に排除される。まさにアメリカだ。伝家の宝刀、「彼は共産主義者だ」を持ち出せばよい。本当にアメリカのいい部分も悪い部分もすべて出ているような映画だった。

 リアルな描写に、どこか抜けたようなユーモアに、さまざまなものがない交ぜになった感のあるつくりだった。はっきし言って一貫性がない。何に焦点を絞りたかったのかあやふやになってしまった。いろんなことを盛り込み過ぎたかったような。面白い題材だけに、残念だった。徹底的に伝記的タッチにした方が淡々と、より内面に伝わりそうな気がするのだが。

『愛についてのキンゼイ・レポート』

監督 ビル・コンドン 
出演 リーアム・ニーソン ローラ・リニィ ピーター・サースガード クリス・オドネル ティモシー・ハットン


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