さいかち亭雑記

短歌を中心に文芸、その他

雑感 真鍋さんの言葉から

2021年10月09日 | 大学入試改革
 「私は調和のなかで生きることができません。それが、日本に帰りたくない理由の一つなんです。」
 真鍋淑郎さんはノーベル賞受賞の知らせを受けた後の日本人ジャーナリスト向けの記者会見でこう語ったという。

 この間の事情を、ずいぶん前に吉本隆明と沢木耕太郎とが話題にしていたことがある。

「吉本  
ぼくはこう思います。日本の一般的な学問のレベルがあるとしますね。そのレベルというのは、一種の場なんですね。その場というのが、学者なら学者を育てるわけです。だから、その場自体のレベルから、個々の人はどうしても逃げられないところがありますよね。その場が、もうまるで違うんだと思います。

沢木 
そうしますと、場というのは、たとえばどうしたら変化しうるんですか。

吉本
それは、こうするより仕方がないんです。つまり、個々人の問題となると、超人的にやるほか方法がないわけですよ。(略)」

 『達人、かく語りき 沢木耕太郎セッションズⅠ』(2020年 岩波書店刊)

 ここで、私はここでの沢木の「そうしますと、場というのは、たとえばどうしたら変化しうるんですか。」という問いに対しては、ひとつだけ私なりに実感として思い浮かぶ答がある。

 こうした特殊日本的弊害をなくして、「日本がうまれかわる」ためには、そうした日本の悪しき「場」の在り様を助長している有害な政府組織の改革が必須である。

つまり、認可と予算配分の権限を持っているがゆえに、自分たちは現場の人間よりも立場が上で、上意下達の指示を出す権利があるのだと勘違いしている官僚がとぐろを巻いているような組織、文科省を抜本的に改革しないかぎり、日本の学術分野における沈没は続くだろうということだ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿