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晴れ渡る皐月の空を飛ぶ (10) - 霧ヶ峰

2010-05-19 | 中部


沢渡りを越えたところの斜面はレンゲツツジに覆われていた。冬の姿がそのまま残されている枯草を下敷きにして、赤い花は空に向かって開いていた。高原の春の花がすべてそうであるように、レンゲツツジも花がまず咲き、葉はそのあとを追いかけるように緑の面積を拡げて行くように見えた。ここでは花の存在が大きく、その葉はすべて隠れて見えた。斜面を覆い尽くしている強烈な赤い色は平面的なつながりを持って、稜線を乗り越えようとしている一方、赤い色のなだれが音を立てて、沢を埋め尽くそうとしているようであった。
沢には清冽な水の囁きがあり、沢を形成する背の低い樹叢は萌黄色に包まれていた。

(新田次郎著『霧の子孫たち』より)





「霧ヶ峰」は、フォッサマグナ地溝帯の中に、八ヶ岳連峰とほぼ同時代に噴出した霧ヶ峰火山の溶岩流によって形成された。その後さらに火山灰をかぶり、現在のような主峰・車山(1925m)を中心とする標高1500~1900m、東西10km、南北15kmに広がる緩やか高原状台地を形成した。

なだらかな稜線の美しさは、植物の豊かさとともに霧ヶ峰の魅力のひとつとなっている。

霧ヶ峰台地には、ニッコウキスゲで有名な草原が広がり、その中に天然記念物に指定されている「八島ヶ原湿原」「車山湿原」「踊場湿原」の三つの高層湿原がある。

霧ヶ峰の高層湿原は、本州の南限に当り、特に八島ヶ原湿原は尾瀬ヶ原よりも泥炭層が発達しており、約8.1m、およそ1万年以上かかり現在のような湿原になったといわれている。


霧ヶ峰には、踊場湿原近くの「ジャコッパラ遺跡」、「池のくるみ遺跡」、旧御射山神社近くの「八島遺跡」、その他、「物見岩遺跡」や「雪不知遺跡」など、今から約3万年~1万年前の旧石器時代の遺跡が点在しており、全国屈指の黒曜石産地としても有名である。

また、八島ヶ原湿原のそばにある「旧御射山(もとみさやま)遺跡」は、中世に諏訪神社下社の狩猟神事が行われた祭祀遺跡で、中央の祭場と競技場を取り囲んで階段状の桟敷が設けられており、鎌倉時代には全国の武士達が集まり盛大に流鏑馬などの奉納射技が行われたという。




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