終生を旭川で過ごした三浦綾子氏は、北海道を代表する作家の一人である。
懸賞小説で『氷点』が入選して作家デビュー、以後『塩狩峠』や『泥流地帯』など、雄大な北の大地を背景に多彩な作品を数多く残してきた。
キリスト教徒である氏の作品は、一貫して聖書の教える人間観に基づいたテーマで書かれているのが特徴である。
罪のない、真面目に生きる庶民が、過酷な苦難と運命に襲われる物語を通して、不条理と思われる苦難の意味を問い、かつ、苦難に耐えて生きる庶民に大いなる「光」を当てる作品を描いている。
『天北原野』では、ハマベツ海岸に咲くエゾカンゾウの花について交わす孝介と貴乃の対話から物語が始まり、そしてエゾカンゾウが咲きほこるサロベツ原野で二人が語ることで閉じられる。
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一方のパンケ沼は、下サロベツ原野を見渡す名山台展望台の西2kmにある沼で、明治時代まではペライ・サル・トー(釣りをするヨシ原の沼)と呼ばれていた。標高0mにあるため、海水がやや混じり、ヤマトシジミ、イトウなども棲息する。沼を一周する道はないが、沼の東岸にパンケ沼園地があり、一周388m所要10分の木道、野鳥観察舎、沼に突き出た立見台などがある。立見台からは岸辺の泥炭層も観察できる。