今回の洪水の原因の一つとして、タイ北部ダムの放水のタイミングの悪さが指摘されている。
通常、雨季に溜まったダム水を乾期に放水していくが、今年は例年以上の降雨量があったことから、雨季があける前に限界貯水率を上回り、放水を余儀なくされた。
しかし原因はこれだけではなさそうである。
タイ北部に降った雨水は、1ヶ月ほどかけて中部から南部へとゆっくりとタイを南北に貫く大河チャオプラヤ川を移動する。アユタヤ付近で大量の水が溢れ出すが、一帯にひろがる水田に一旦溜められるために、この水が一気に下流に流れ下ることはなかった。
つまり、かつてのアユタヤに広がっていた広大な水田は、豊かなタイ米を育むだけではなく、天然の貯水池の役割を果たしていたのだ。アユタヤの工業団地は、本来、水を貯める遊水地であるべき所を埋め立てて造成されてしまったことになる。
タイでは、洪水は今まで毎年繰り返されていた。タイの稲作は、水と調和していた。稲は洪水と共にあったのだ。