せっかく読んだので、書き残しておこうと思います。
田澤晴子『吉野作造 人世に逆境はない』(ミネルヴァ書房、2006年7月)
大正デモクラシー期の「民本主義」提唱、社会事業や明治文化研究など、多彩な活動を展開した政治学者の新たな人物像。
個人的に そこそこ知ってる 人物ということで、サラッと読めました。
研究論文や資料紹介などといった、先行の諸業績にも目を配りつつも、吉野の活動や思想をわかりやすく紹介しており、入門書としては適切な一冊だと思います。
特に、革新的な政治思想家と位置づけられたため、その地元において複雑な評価を受けてきたことに触れた箇所などは、歴史から何を汲み上げるべきかという現代的な課題を提示しており、非常に興味深く読み進めることができました。
まあ、評伝ですので ないものねだり をすればいろいろと出てくるのでしょうが、大正デモクラシーに興味のある方は必読の書でしょう。
また、その人生をあらためて概観することによって、学者として抱かれるイメージからは意外なくらい数多くの苦労を抱え込んで生きていた先人に対して、昔以上の親しみを感じてしまいました。そしてそれは、自分が年齢を重ねたからかも知れません。
がんばれ>自分も。
<今日のマメ知識>
吉野作造記念館近くの食堂「竹乃や」では、作造ハンバーグ という斬新な名前のメニューがあります。
以前訪れた際にその由来を聞いてみたところ、店員さんが 口ごもってしまった ことも、今となっては良い思い出です。
気合いの入った地図 でも参考にして足を運び、メニューの謎を解いてみるのも一興かと思われます。