今日はジュエリー・デザインのつれづれな雑文です。
プロのデザイナーで、『パクられるのがいやだから』という理由で、ネットに作品を公開しない人がたまにいます。”私はジュエリーデザイナー”、とわざわざブログで職業を名乗りながら、その作品は一切見せないっていうのもどうなんでしょうかね。
確かに、ジュエリー業界というのはコピー天国。音楽、絵画、建築デザインなどと違い、”盗作”という言葉はこの業界に存在しえないほど、デザインの”借用”、”流用”はデフォルト化していて、犯罪や訴訟沙汰とはなりません。
有名ブランドは、当然ながら真似され放題。刻印もパッケージもそっくりなニセモノ商品が中国あたりで大量生産されて街中に出回っていますが、いちいち訴えていたらキリがないのです。だから、最近は一流ブランドでも新作が出るサイクルがものすごく短くなってきました。デザインも大量生産、の時代でしょうか。
私は?というと、まったくパクってないといったらそれは嘘になるでしょう。私も、頭で思い描いたデザインというのは、実はどこかで既存の商品を見かけて、”いいな♪”と思った(=インスピレーションを受けた)デザインの記憶が、フォルムの一部あるいはパーツ単位で自分の作品の中に無意識にリフレインしただけ、ということがあります。
本人には他の人のデザインを真似したという意識がないだけに、人から、『このデザインさぁ、どっかで見たことがある!。』などとと言われたりすると、かなりショックだったりします。
山口遼さんという宝飾史研究家の方が、ジュエリー雑誌で、なるほどなー、ということをおっしゃっていたので、抜粋引用させていただきます。
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■ジュエリー・デザインは繰り返しが98%
いつも思うことですが、ジュエリー・デザインには決定的な宿命があるような気がします。それは新しいものがほとんど無いということです。つまりですね、古い国では数千年も、新しい国でも数百年も、ジュエリーを使ったという歴史があります。・・・・中略・・・
しかも、ジュエリーは小さい、せいぜい十センチ角の大きさでしょ。そこでできるデザインには限界がありますよ。建築のように、数百メートルにデザインが出来る訳じゃないです。
そうでなければ出来るデザインには限度があるわけで、デザイナー本人は素晴らしいアイデアだと思って「私のデザイン」といいますが、ほとんどの場合、過去の歴史を子細に見ればどこかに存在していたもの、というのが普通です。中には、「誰も知らんだろう」とパクって知らん顔という方もいますが。
ですからジュエリー・デザインのほとんどは、多かれ少なかれ繰り返しでして、それをどう換骨奪胎するか組み合わせるかで、今のデザインが出来ているとも言えます。
(後略)
双葉社 Brand JEWELRY 2008 AUTUMN
山口遼氏「ジュエリー・デザインの常識」より
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今でも、ジュエリーの人気モチーフといえば、ハート、クロス、フラワー、クローバー、星、リボン、鍵、蝶、ティアラ・・・といったものが思い浮かびますが、いずれも昔から定番デザインでした。女性が、ジュエリーとして身に着けたいと思う形は何千年、何百年も変わっていないということが、あらためて凄いことだと思います。
古今東西、みんなに愛される人気のモチーフは、つまり商品として売れるということでもあります。あまりに個性的なデザインに偏りすぎると好みが分かれてしまいますし、かといってありきたりなものは作りたくないし。ジュエリーはアートでもあり、同時に商品でもあるために、普遍性と個性の両立のさじ加減が難しいところです。
さて、ジュエリーCADでデザインをするようになると、今まで手作りでは出来なかった芸当ができるために、複雑な、あるいは懲りすぎた過剰なデザインに走り勝ちな自分がいることに最近気づきました。
”せっかくなら、CADじゃなきゃ絶対できないデザインにしてやろう”と、ついつい余計な力が入ってしまい、手作りでも出来そうなデザインはCADでは自然に避けていたりします。
しかし、実際に人気アクセサリーショップで売れている路線は、シンプルなものばかりです。たとえそれがCADで作られていたとしても・・・・。街中を観察していても、皆さんが普段使いにつけているジュエリーは非常にシンプルなありきたりのデザインばかりです。
自分の路線は、”シンプルで自然”、だったはず。それは今でも変わっていません。今、再び自分のデザインの原点に立ち返らねば!という思いがしています。
プロのデザイナーで、『パクられるのがいやだから』という理由で、ネットに作品を公開しない人がたまにいます。”私はジュエリーデザイナー”、とわざわざブログで職業を名乗りながら、その作品は一切見せないっていうのもどうなんでしょうかね。
確かに、ジュエリー業界というのはコピー天国。音楽、絵画、建築デザインなどと違い、”盗作”という言葉はこの業界に存在しえないほど、デザインの”借用”、”流用”はデフォルト化していて、犯罪や訴訟沙汰とはなりません。
有名ブランドは、当然ながら真似され放題。刻印もパッケージもそっくりなニセモノ商品が中国あたりで大量生産されて街中に出回っていますが、いちいち訴えていたらキリがないのです。だから、最近は一流ブランドでも新作が出るサイクルがものすごく短くなってきました。デザインも大量生産、の時代でしょうか。
私は?というと、まったくパクってないといったらそれは嘘になるでしょう。私も、頭で思い描いたデザインというのは、実はどこかで既存の商品を見かけて、”いいな♪”と思った(=インスピレーションを受けた)デザインの記憶が、フォルムの一部あるいはパーツ単位で自分の作品の中に無意識にリフレインしただけ、ということがあります。
本人には他の人のデザインを真似したという意識がないだけに、人から、『このデザインさぁ、どっかで見たことがある!。』などとと言われたりすると、かなりショックだったりします。
山口遼さんという宝飾史研究家の方が、ジュエリー雑誌で、なるほどなー、ということをおっしゃっていたので、抜粋引用させていただきます。
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■ジュエリー・デザインは繰り返しが98%
いつも思うことですが、ジュエリー・デザインには決定的な宿命があるような気がします。それは新しいものがほとんど無いということです。つまりですね、古い国では数千年も、新しい国でも数百年も、ジュエリーを使ったという歴史があります。・・・・中略・・・
しかも、ジュエリーは小さい、せいぜい十センチ角の大きさでしょ。そこでできるデザインには限界がありますよ。建築のように、数百メートルにデザインが出来る訳じゃないです。
そうでなければ出来るデザインには限度があるわけで、デザイナー本人は素晴らしいアイデアだと思って「私のデザイン」といいますが、ほとんどの場合、過去の歴史を子細に見ればどこかに存在していたもの、というのが普通です。中には、「誰も知らんだろう」とパクって知らん顔という方もいますが。
ですからジュエリー・デザインのほとんどは、多かれ少なかれ繰り返しでして、それをどう換骨奪胎するか組み合わせるかで、今のデザインが出来ているとも言えます。
(後略)
双葉社 Brand JEWELRY 2008 AUTUMN
山口遼氏「ジュエリー・デザインの常識」より
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今でも、ジュエリーの人気モチーフといえば、ハート、クロス、フラワー、クローバー、星、リボン、鍵、蝶、ティアラ・・・といったものが思い浮かびますが、いずれも昔から定番デザインでした。女性が、ジュエリーとして身に着けたいと思う形は何千年、何百年も変わっていないということが、あらためて凄いことだと思います。
古今東西、みんなに愛される人気のモチーフは、つまり商品として売れるということでもあります。あまりに個性的なデザインに偏りすぎると好みが分かれてしまいますし、かといってありきたりなものは作りたくないし。ジュエリーはアートでもあり、同時に商品でもあるために、普遍性と個性の両立のさじ加減が難しいところです。
さて、ジュエリーCADでデザインをするようになると、今まで手作りでは出来なかった芸当ができるために、複雑な、あるいは懲りすぎた過剰なデザインに走り勝ちな自分がいることに最近気づきました。
”せっかくなら、CADじゃなきゃ絶対できないデザインにしてやろう”と、ついつい余計な力が入ってしまい、手作りでも出来そうなデザインはCADでは自然に避けていたりします。
しかし、実際に人気アクセサリーショップで売れている路線は、シンプルなものばかりです。たとえそれがCADで作られていたとしても・・・・。街中を観察していても、皆さんが普段使いにつけているジュエリーは非常にシンプルなありきたりのデザインばかりです。
自分の路線は、”シンプルで自然”、だったはず。それは今でも変わっていません。今、再び自分のデザインの原点に立ち返らねば!という思いがしています。
コメントの1行1行にうなずけました。
目立たず、人並み、ってまさにそのとおりですよね。売れるものはこちらの意に反してありきたりのデザイン・・・。安心感があるのでしょうね。
一方、日本も個の時代になりつつあると感じています。非常にゆっくりゆっくりですが。
アパレル(服)に関しては、皆が右にならえの同じ格好をしていた70~90年代に比べると、21世紀に入って、堂々と個性的なファッションを楽しむ人が増えてきたので、ジュエリーや装飾品に関してもいずれこの流れができるだろうと勝手に期待しております。
私はコーディネーターなので、デザインはしませんが(デザインセンスがないと・・・)昨日も展示会で日本のデザイナーの接客は苦手だという話をしていました。
何かコンセプトが?? 似たり寄ったり。
日本人のDNAには「目立たず、人並み」って組み込まれているようで、ジュエリーの使い方は今からかな・・・
でも、この不景気感でジュエリー業界は下降気味で、明るい将来が見えないのが悲しいです・・・