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つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

吟遊歌人の名調子。

2022年01月15日 23時23分23秒 | 手すさびにて候。
                         
祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理を現す
おごれる人も久からず ただ春の夜の夢の如し
猛き者も遂には滅びぬ 偏に風の前の塵に同じ

天竺の寺院の鐘の音色は 万物流転の節回しだ
朝に咲き夕べに散る沙羅の花は 非情の定めよ
どれほど栄えようと 所詮は短い春のまどろみ
いつか終わる隆盛は 風に舞う塵のように儚い


思へばこの世は常の住み家に非ず
草葉に置く白露 水に宿る月より尚怪し
金谷に花を詠じ 榮花は先立つて無常の風に誘はるる
南楼の月を弄ぶ輩も 月に先立つて有為の雲に隠れり
人間五十年 化天のうちを比ぶれば 夢幻の如くなり
一度生を享け 滅せぬもののあるべきか
これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ


現世はまったく無常なものだ
例えるなら草の滴や 水面に映る月より空しい
かつて栄華を極めた王朝も 風の彼方に立ち消え
南楼で月を愛でていた友も いなくなってしまった
人間界の50年など天上の時に比べれば 夢幻も同然
生れ出て滅びを免れるものなどあるはずもないのが道理
それは世の常と知りながら 時折無念に思えてしまうのだ


(※黒太字:原典/赤太字:りくすけ現代意訳)

冒頭は名文と言っていい。
また「織田信長」が好んだとされる「敦盛(あつもり)」の一節は有名だ。

『平家物語』に描かれているのは、歴史が織り成す人間模様。
保元の乱・平治の乱の勝者「平氏」と、敗者「源氏」の明暗。
治承の乱・寿永の乱で主客転倒する有様。
没落の道を辿る貴族階級。
台頭する新興勢力、武士。
それら栄枯盛衰の故事来歴を広めたのは、日本のトルバトールだった。

ほんの手すさび 手慰み。
不定期イラスト連載 第百九十一弾は「女琵琶法師」。



琵琶法師の種類は大きく2つに分類される。
楽器演奏のみの「器楽」。
琵琶を伴奏に経文や語りを交えた「声楽」。
平安・鎌倉時代に成立したとされる後者は、
諸国を巡り、辻々で『平家物語』を吟じた。

その多くは盲目の遊行僧「座頭」だが、
「瞽女(ごぜ)」と呼ばれた盲目の女旅芸人もいた。
各地を旅しながら語り物や歌い物を披露する様子は絵巻物に描かれ、
江戸時代まではほぼ全国的に活躍。
農閑期の娯楽として歓迎された一方、
現代の倫理観からすれば「暗部」も内包している。
彼女たちは「芸能に従事する遊女」でもあった。

反面、来訪すると縁起が良いとされたともいう。
身分制度が厳しく、定住を基本とする農村などの共同体では、
自由に行動する旅芸人は、異端。
人々は、稀人に生業・産育・治病などの吉兆を見た。
「瞽女さん」は畏敬と侮蔑がない交ぜとなった存在、
清濁併せ持つ不思議な存在だったのではないだろうか。

いずれ今は昔である。

平家物語より「祇園精舎」 / 筑前琵琶 川村旭芳

                 
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賭けたり、競ったり、旅したり。~ 令和四年 睦月そのニ。

2022年01月10日 15時23分00秒 | 旅行
                        
前回投稿の旅打ち続編。

愛知県・常滑市は「焼き物の町」である。
街中を散策すれば、其処ここでオブジェを目にすることは珍しくない。
「招き猫」の大産地でもあり、猫モチーフが多いのが特徴だ。



その歴史は古く、5世紀頃、大陸~朝鮮半島を経て「窯」の技術が伝えられ、
平安末期には、常滑を中心に知多半島各地で焼物が盛んになった。
当時の主な窯元は、瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前・越前。
「日本六古窯(こよう)」と呼ばれる。
中でも、中世常滑窯は大規模な生産地だったという。



やがて、鎌倉・室町期には、大きな瓶(かめ)や壼など大型貯蔵具が中心に。
江戸時代になると、茶の湯や生け花、普段使いの器まで幅広く製造。
鉄分含有量の多い「朱泥(しゅでい)」が発見され、
常滑焼を代表する赤い急須が作られるようになった。

明治に入ると頑丈で硬く引き締まり気密性の高い常滑焼は、
土管をはじめ工業製品としての需要が拡大。
大正期には建物用のタイルで、一世を風靡。
機械化大量生産時代の後、今ではハンドメイドも増え、
種類・質・用途は多岐に及ぶ。
僕も、ある作家のマグカップ、飯碗、湯飲みなどを購入し、
日ごろから愛用している。



今回、手土産を求め、やや郊外の「常滑焼セラモール」に立ち寄る。
軒を連ねる12店舗の専門店では、
テーブルウェアから縁起物、屋外用の大型陶器などを販売。
あれこれ物色して回り、なかなか楽しい時間を過ごした。



中心部へ戻る道すがら「大野城址」に立ち寄る。
そこは「浅井長政」と「お市の方」の三女「江姫」最初の嫁ぎ先。
11年前、NHK大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」放映時に脚光浴び、
現在は公園として整備されているとのこと。



破れた幟が哀愁を誘う。
土地勘のない者には、大変分かりにくい場所。
車一台が通れる程度の道幅しかない住宅街の高台に、
天守を模した展望台が建っていた。
一昔前のしょぼい観光スポットだろうと高を括った訪問。
しかし---。



何と展望台前には50人余りの列。
皆さん、城の名前が印刷された半紙「御城印(ごじょういん)」が目当て。
令和4年1月限定版の販売会が行われていた。
「御城印」は、長野県の国宝「松本城」天守登閣記念で発行されたのが皮切り。
以来、各地で出回るようになり、その収集が流行っているらしい。
知らなかった---。



さて、肝心のレースである。
3日間の短期決戦で、トーナメント勝ち上がり方式の企画レース、
「ボートレース バトルトーナメント ファン感謝3デイズ」2日目。

僕の成績は7つのレースに賭けて、的中3。
収支は、マイナス。
呵々大笑(かかたいしょう)を夢見たが叶わず。
やや肩を落として津幡町に帰ってきた。

性懲りもなく、今日(2022/1/10)の優勝戦で逆転を狙うつもりだ。


                      
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賭けたり、競ったり、旅したり。~ 令和四年 睦月。

2022年01月09日 06時06分06秒 | 旅行
                      
どうやら第六波が襲来したようだ。
新型コロナが、またもや感染拡大。
「オミクロン株」とやらの特徴・特性については諸説ある。
色んな人が、色んな発言をしている。
このウイルスとの付き合いは長くなったが、まだ手探りだ。
一体、蜜月はいつまで続くのか?
果たして、未来はどうなるのか?
明確な答えは見つかっていない。
おそらく程なく忍従を強いられるのは間違いないだろう。

そうなる前にと考えた僕は、逡巡の末、
今年最初の--もしかしたら最後になるかもしれない「旅打ち」に踏み切った。



目的地は、愛知県・常滑競艇場。
前々から、お色直しをした施設を見てみたいと考えていた。



新レース観戦スタンドは、機能的でコンパクトな仕上がり。
キッズ遊具施設や、屋外フィットネス施設。
イベントや集会で使える小ホールなどが新設。
およそ2年に亘る工事を経たエリアは印象が変わった。
過去の様子と比較してみると分かりやすい。



好みの問題だが、昭和の趣が消えたことに一抹の寂しさを覚えたりもする。
最も残念なのは、旧スタンド内で営業していた飲食店の撤退。
取り分け長年愛されてきた「とり伊」の「どて丼」が食べられないのは残念。



オシャレなフードコートでも「どて丼」をいただいた。
旨かった。
だが、あの味ではない。
山盛りネギと甘辛いモツ煮込みをぶっかけたそれは、
間違いなく“とこなめ名物”の博打飯だった。
同じ感慨を抱くファンは少なくないはず。
時の流れゆえ致し方ないが、重ね重ね残念無念である。



さて、レースである。
今節は僅か3日間の短期決戦。
トーナメント勝ち上がり方式で、走る枠番はガラポン抽選。
最もグレードの低い一般戦ながら、なかなか面白みの多い企画レース
「ボートレース バトルトーナメント ファン感謝3デイズ」という。

初日は、配当的にもレース的にも波乱が相次いだ。
上位陣の敗退あり。
3連単配当、8万円あり。
女子レーサーたちが揃って勝ち上がり気炎を上げた。
見応えのある1日だった。
本日(2022/1/9)も楽しみだ。

僕の舟券成績は9つのレースに賭けて、的中5。
収支は、まったくのイーブン。

2日目こそ、呵々大笑(かかたいしょう)を得たい。
もちろん本当に声を上げて大笑いはしない。
マスクの内側でニンマリ。
密を避け、誰ともしゃべらず、ひたすら沈思黙考。
独りギャンブルの浅瀬で、舟券のさざ波と戯れようと考えている。
では、行ってまいります。


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耐性と知恵。

2022年01月03日 13時33分33秒 | 自然
                     
今投稿は正月三日。
北陸・津幡町に目立った降雪はない。
このまま小康状態が続けば誠に幸いだが、未来は分からない。
              
--- さて、僕には冬になる度に感心することがある。
「驚嘆」と言っていいかもしれないそれは「植物の強さ」だ。



幹線沿いに植えられた背の低い街路樹は、散々な目に合う。
空からは雪と寒気。
路面からは自動車の飛沫(しぶき)。
何度も同じ受難が続くうち、凍てついた表面に立派な氷柱(つらら)ができる。
それでも、植物は生きている。

彼らは「細胞外凍結」で身を守る。
晩秋から低温に馴らしてきたお陰で、糖類やアミノ酸などが溶け込んだ細胞の中は、
乱暴に言えば「濃い」状態。
ゆえに、温度が下がり体内の水分が凍り始める時、
まず細胞間のすき間や、細胞壁など、細胞の外側に氷の結晶ができる。
やがて、細胞内の水分も外にできた氷の結晶へと移動してゆく。
細胞内は「脱水」状態となり、ますます凍りにくくなる。
植物の環境の変化に対し適応する能力--- 「耐性」には舌を巻くばかりだ。



しかし、脅威は他にもある。
水分量の多い北陸の雪は、重い。
上掲画像、街路樹の枝が垂れ下がっているのが見て取れるだろうか。
このまま降り積もれば、やがて限界を超え、ポッキリ折れてしまう。
その被害を防ぐのが、人の「知恵」。
雪吊りだ。



木よりもやや高い心柱を立て、その先端から張り出した枝へ放射状に縄を張る。
雪の重みから枝を守る工夫だ。
半開きの傘ですっぽりと覆うようなシルエットは、冬の風物詩である。



足元に目を移すと、階段に滑り止めの「筵(むしろ)」。
水を含んだ雪は足を取られやすく、濡れて凍結するかもしれない。
転倒の危険を緩和するための敷物だ。
藁製だからワンシーズン使えばボロボロ。
春になれば、肥料や燃料に転用。
これもまた、雪国の知恵なのである。
                
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津幡短信vol.97 ~ 令和四年 元日。

2022年01月01日 21時00分00秒 | 津幡短信。
                    
新年おめでとうございます。
どうぞ今年も拙ブログとのお付き合い、よろしくお願い申し上げます。

津幡町で見聞した、よしなしごとを簡潔にお届けする不定期通信。
今回の話題は以下の2本。

【雪の元日。】



ここ北陸・津幡町は、雪中の年明けとなった。
寒いか、寒くないかと言われれば「寒い」。
しかし「まだ序の口」との思いもある。
あと2ヶ月は雪の季節が続くだろう。



雪に縁のない土地の方の目には「雪害」と映るかもしれないが、
僕たちにとっては冬の日常だ。
少し以前から、何度か書いている通り「自然には勝てない」。
凹まず、焦らず、粘り強く向き合い、
春到来まで、時間切れ引き分けを狙うしかないのである。
             
【正月風景。】



家々の玄関に下がる「正月飾り」。
降雪曇天の薄暗い中では、小さな橙の鮮やかな色が嬉しかったりする。



加賀地方の鏡餅は「紅白」が常識だったりする。
前田家の祖「菅原道真」の故事、梅の花の色にちなんだとか。
津幡町・倶利伽羅峠の源平合戦(平氏の赤旗・源氏の白旗)が始まりとか。
五穀豊穣を願い餅に雑穀を混ぜたのが起こりとか。
由来には諸説アリだ。



加賀の正月料理の一つが「かぶら寿司」だったりする。
塩漬けした蕪に、塩漬けの鰤を挟んで、米糀で漬け込み発酵させた熟れ鮨の一種。
鰤はそれなりにお高いから、家庭では代用として〆鯖を用いるケースもある。
ほのかに甘く、酸味が効いた冬の味。
散らした柚子皮の香りと苦みもアクセント。
寒さが厳しいと美味しく漬かる。
こいつと燗酒は、すこぶる相性がいいのだ。

<津幡短信 vol.97>
              
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