リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

11. フォルカッハを歩く

2015年06月07日 | 旅行

旅日記 No. 9

 葡萄畑の聖マリア巡礼教会

  残る目的はあと2つ。
 フォルカッハは、ヴュルツブルクの北北西、直線距離で測ると約21kmに位置します。このフォルカッハで、巡礼教会にある「ローゼンクランツのマリア」を見たいのです。この時は作品が天上からぶら下がっているため写真はよく写せませんでしたが、雰囲気だけは少しわかるので旅日記No.1に一応載せておきました。<作品写真3>楕円形の花輪に囲まれたマリア像で、ローゼンクランツのマリアと呼ばれ、花輪にはびっしりとバラの花が彫られているのでした。私をリーメンシュナイダーの世界に誘い込んだ作品の一つです。

 フォルカッハまではヴュルツブルク駅前から13番のバスで8:50出発(※註1)。ユーレイルパスを見せたら運転手さんはしげしげと眺めてから半額にしてくれました。結局1時間ぐらいでフォルカッハに着きました。
 問題はこれから先でした。小さな村で、きっとバスを降りたらすぐに教会がわかるのだろうと思っていたら、ここでは教会の尖塔が2つ見えて、どちらが目指す教会なのかわかりません。近くのベンチにゆったりと座っているおじいさんに話しかけてみたら、
「ローゼンクランツのマリアは、ここをまっすぐ行けば10分ぐらいで着くよ。」
と教えてくれました。言われたとおりにまっすぐ歩いたのですが、10分経っても15分経ってもそれらしき教会が見あたらないのです。街並みが切れた辺りに、
„Maria in Weingarten“(葡萄畑のマリア)
という表示が出てきましたが、何と9kmという矢印がついているではありませんか。歩けば2時間はかかってしまう距離です。胸がドキドキしてきました。ちょうど近くを通った若い二人連れに声をかけてみたところ、
「ここから歩いたら30分はかかるね。タクシーで行った方が良いと思うよ。」
とのことです。え~~~! まるで言うことが違う!! でも9kmを30分というのも考えてみればおかしな話。でもこうはっきり言われてしまったら、表示でも遠そうだし、街に戻ってタクシーを探すしかない。そう決心して3人で戻りました。ところがタクシー乗り場が見つからないのです。娘が、
「ホテルでタクシーを頼めばいいんじゃない? チップをあげればきっと電話してくれるんじゃないのかな。」
と名案を出してくれました。
 何とか近くの小さなホテルを探してフロントで声をかけると、ようやく若い女性が出てきました。彼女は快くタクシー会社に電話をしてくれたのですが、
「10時半まではタクシーはないそうですよ。でも、ここから2kmだから歩いても行けますけれど…。」
とのこと。歩いて20分ぐらいで着くというのです。彼女に電話代を渡して、仕方なくもう一度歩いてみることにしました。

 再度街中を通り抜けてさっき惑わされた矢印の場所へ。その先もう少し行ったら何と見えました<写真下>。美しい葡萄畑の上に可愛らしい教会が建っていたのです。 さっき、もう少しだけ先まで歩いてみたら、この景色が目に入ってほっとしたことでしょう。              


                                     

                                                           葡萄畑のマリア巡礼教会 Wallfahrtskirche St. Maria im Weingarten

 故植田氏の本(172頁)には、雪景色のこの巡礼教会の写真が載っています。夏と冬では、きっと中に入った感じはずいぶん違うことでしょう。この時は道ばたのりんごの木が実をつけ、プルーンが美味しそうになっていました。道に落ちているきれいなプルーンの実を拾って食べてみたら美味しいこと! でも何だか悪いことをしているようで一つだけ食べてすぐにやめたのでしたが。

 憧れのローゼンクランツのマリア像は、以前は壁に掛かっていたそうです。しかし盗難にあったため、見つかってからは簡単には盗られないように空中高くつり下げられたのでした。雰囲気はわかるにしても、その精巧な彫りは近くで見ることができません。また明るいステンドグラスからの光でどうしても逆光になります。せっかくの作品がこんなに遠くて見えにくいというのは大変残念でした。

 このフォルカッハへの小さな旅で、私は地図が必要だとつくづく思いました。もちろん近くの本屋さんで一生懸命探したのですが、これといった地図が見つからなかったのです。バスを降りて見えた尖塔はまったく目的の教会とは違っていたわけですし、3人の人に聞いてみんな言うことが違うのですから。最後の娘さんが一番正しい答えだったとわかりましたけれど、地図が手元にあって、およその距離がわかっていたらこれほどは混乱しなかっただろうと思うのです。

 帰りには予定より遅めのバスに乗ったのですが、行き先にヴュルツブルクと書いていなかったので乗っても良いのかどうか迷っていると、娘が「お母さん、呼ばれているよ」と言います。見てみるとたまたま朝と同じ運転手さんでした。そしてこれに乗れと合図しているのでした。乗り込むと次のSelingenで乗り換えなさいと言うのです。23分ほどして着くと、みんな鉄道の駅に向かって歩いていくので「電車なんですか?」と聞くとそうだとのこと。約30分ほどで次の列車が来るからそれに乗りなさいということだったのです。今ならインターネットで予め把握できていたでしょうけれど、当時はいきあたりばったりでしたから、バスがいきなり列車と接続したりしていると本当にドキドキでした。列車に乗って、フォルカッハから約1時間後にヴュルツブルクに到着。すでに午後2時37分!

 ※註1 現在ネット検索をすると、ヴュルツブルク中央駅からSeligenstadt(b Würzburg)までRBで11分。Seligenstadt, Prosselsheim 駅からフォルカ

      ッハ駅(鉄道は通っていない)まで8105番のバスで19分。駅からHauptstraße、Kirchbergwegを通って北上し、丘の上の教会まで約1.7km歩く。

     と出てきます。また2014年にフォルカッハを訪ねた島宏子さんによると、乗換駅(Seligenstadt駅)のバス停が建物の裏でわかりにくかったそうですが、黄色い建物の裏で、バスはベンツの

      小型乗り合いバスだったとのことです。私たちは真夏に行ったので大きな通常のバスでしたが、季節が違うと乗り物も時刻表も変わってくるのですね。


 次回は、ヴュルツブルクから訪ねる最後の目的地、マイトブロンへの旅について書きます。 

 ※ このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA                 


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