純米燗オヤジの戯言 佐用の酒屋 地酒のDON

「完全発酵の純米酒を燗で呑む文化を普及させたい」そんな純米燗伝道師を自負する酒屋のオヤジ奮闘記。

熟成古酒・・・熟成の過程は千差万別、深いねぇ!

2018年02月21日 | 純米酒
当店では取り扱いが無いので

ひょんなことから興味を惹かれて

思わず衝動買いで

「ポチッ」としちゃったのがこれだぁ!


「純米吟醸 太陽 熟成古酒」

太陽酒造様のホームページでは

5年以上の熟成酒という表記であったが

蔵元さまに尋ねると「17年熟成」ということであった



この熟成古酒を購入に至ったのには理由がある


実は・・・

以前から当店でお買い上げいただいている関東のお客様が

数日前に兵庫県明石市を訪れ、そこのとある「すし屋」で食事をした際に

「赤石泊(あかしどまり) 特別純米 本生原酒無濾過純米」
 (明石市・太陽酒造)

という「生酒」を板さんに薦められて呑んだ

これが実に美味しかったとのことで・・・

このお酒を引けないかという問い合わせがあったのだ


ただ私の頭は

「????????」

疑問符だらけになった


このお客様は、熟成古酒の濃く深みのある旨味がお好みで

そのうえ、太い酸が主張するような

インパクトのある原酒を好まれる


例えば・・・「梅津のきもと原酒」のようなタイプだ
(酒質は、分かる人には分かると思う・笑)


そんなお客様が

「良い香りで、コクのある濃い味わい」

と表現された


吟醸香は得意でないお客様が

「生酒」であるのに

「良い香り」と表現され

「濃い味わい」とは・・・???

と・・・大いに疑問が沸き

早速、2~3の取引のある問屋に当たったが

全く取引がないとのことだった


そういえば

兵庫県の清酒を一堂に集めている姫路の

日本酒Bar 試(こころみ)」
フェイスブックページはこちら

においても、

奥播磨の「下村酒造」と、

この「太陽酒造」の2蔵だけは

置くことができなかったとおっしゃっていたのを思い出した



そこで直接、太陽酒造様に電話で確かめると・・・

「赤石泊」は、そのお寿司屋さんのPB商品であり

そのお寿司屋さん以外に卸せないことが分かった


おそらくH27BYの生熟成酒だと思う、とのことを

蔵のかたがおっしゃっていた


ちなみに太陽酒造様は

「無濾過生原酒」以外は、出荷していない
(1種類を除いてだが・・)

そして醸造量が少ないので

新たな取引先はとらないとのこと・・・

凄く明確な経営姿勢だ



そして話をうかがうなかで

だいぶ謎が解けた・・・


「良い香り」という表現は、

「生熟成酒特有の香り」だったのだろう

また「濃い味わい」というのは、

太めの酸味がある「無濾過生原酒」だったからだね


そして、もうひとつ・・・

太陽酒造様のホームページで気になっていたのが

最初の画像の「太陽 熟成純米原酒」であった


これは、蔵唯一の火入れ酒であり

「17年古酒」とのこと


太陽酒造様の酒質を味わうためにも

これは買って味わうしかないでしょう(笑)


こんないきさつで先日届いたので

早速味わった


熟成古酒特有の黒糖・カラメルといった「熟成香」は、想像したより強くない。
それよりもバニラのような柔らかく上品な含み香に支配されていく
旨味も凝縮されてはいるが、思ったよりも上品である。
酸は、思っていたほどに感じないが、余韻で結構主張する。
私が想像した常温熟成古酒とは、熟成の仕方、味の組成の表現がかなり相違する
柔らかく、優しく、上品な熟成過程を経ている。
燗につけると、優しい旨味とともに、一気に酸もたち、キレも良い。

この熟成の味わいだが・・・思い出した・・これだ!



この姫路の名城酒造様に醸していただいている当店PB(酒屋仲間数店のみの取り扱い銘柄)の

「鷺誉(さぎほまれ)上撰酒」

を画像のようにセットに組んで

見本として展示すること10年・・・

瓶詰日付は「2007年9月」

昨年の暮れに怖いもの見たさの想いで

セットを崩して呑んでみたときの衝撃の味わいの組成と重なった


「アル添酒」ではあるが、熟成香や老ね香もほとんど感じられず、バニラの様な上品な含み香に仰天!
旨味も上品で、スッキリとした凝縮感!
なんでやねん、「醸造用アルコール添加」してても、こんな熟成のしかたするんや・・・


そう、2つの熟成古酒は、熟成の個性が似ている・・・


そこで・・・

私の頭のなかで整理してみた

今まで味わった熟成古酒の熟成過程と酒質の分類であるが・・・


1.日本酒度「+10」以上の「完全発酵」させた熟成古酒

 ・黒糖やカラメルのような熟成香が強いが、その香りほどに旨味の凝縮感はなく、酸もたってスッキリしたタイプ。
   例えば「睡龍きもと純米H22BY

 ・熟成香が強く、旨味も凝縮して濃く、太くて複雑な酸の存在感もある「コク」と「キレ」が同居するタイプ。
   例えば「梅津のきもと8割H26BY

 ・比較的熟成香が薄く、旨味の凝縮感は少なく上品で、酸もたってスッキリとしており、熟成年数ほどに熟成を感じないタイプ。
   例えば「武蔵の里純米大吟醸H10BY」「日置桜きもと玉栄H26BY」「辨天娘きもと強力H26BY
 



2.日本酒度「+5」近辺の熟成古酒

 ・黒糖やカラメルのような熟成香が強いが、その香りほどに旨味の凝縮感はなく、酸もたってスッキリしたタイプ。
   例えば「妙の華H27BY」

 ・熟成香が強く、旨味も凝縮して濃く、太くて複雑な酸の存在感もある「コク」と「キレ」が同居するタイプ。
   例えば「奥播磨 白影泉 山廃純米」「秋鹿 奥鹿 きもと無濾過純米原酒H22BY

 ・熟成香が強く、それに呼応するように旨味も濃いが、酸はおとなしいので、古酒らしい凝縮した旨味が前面に出てくるタイプ
   例えば「神亀 純米酒」「武蔵の里純米原酒」「諏訪泉 特別純米

 ・熟成香は薄く、バニラ、バナナ様の含み香があり、上品で優しい旨味で、酸は比較的おとなしい柔和で優しい熟成タイプ
   例えば「北島きもと純米H24BY」「太陽熟成17年古酒」「鷺誉上撰(たまたま熟成10年酒)」
 
 ・熟成香は薄く、バニラ、バナナ様の含み香があり、旨味は比較的濃く、太くて複雑な酸の存在感もある「優しさ」と「コク」と「キレ」が同居するタイプ。
   例えば「丹沢山 足柄若水山廃純米H23BY




3.日本酒度「0」近辺、あるいは「日本酒度マイナス」の甘口表示の熟成古酒。

 ・熟成香が強く、旨味も凝縮して濃く、太くて複雑な酸の存在感もある「コク」と「キレ」が同居するタイプ。
   例えば「山陰東郷オレンジラベルH28BY甘口
 
 ・熟成香が強く、それに呼応するように旨味も濃いが、酸はおとなしいので、古酒らしい凝縮した旨味が前面に出てくるタイプ
   例えば「龍力熟成純米古酒H11BY」」 
 
 ・熟成したというには、おこがましい老ねたタイプ


   ・・・等々、


色々な熟成過程を辿る日本酒の味わいを体験してきたなかで

上記の様な熟成の分類が私の頭の中で

指標として残っているように感じる





「熟成古酒」の世界

つくづく

深いなぁ

と思うし

魅了される


「魅惑の熟成古酒の世界」はこちらからどうぞ!
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