ずっと男の子になりたかった。性同一性障害のひとりの女の子(エル・ファニング)が、本来の自分を取り戻すための戦い。自分が自分であるための戦い。そのためには、まず両親の承認が必要で、でも、親はそれを認めたくない。父の不在。母親と、祖母に育てられた。幸せだった。でも、自分はずっと男だと、思って生きてきた。だから、苦しかった。
映画は一切不要なものは描かないから92分とい . . . 本文を読む
こんなとんでもない映画が密かに公開されているのだ。しかも、見た目はお正月向けの大作SF冒険アクション映画か、と思わせる。だって劇場で宣材を見た時、ロボットが出てくるし、こんな映画だとは思いもしなかった。(原作のことはまるで知らなかった)
何の予備知識もなく、山下敦弘監督がとうとうSF大作に挑むのか、というノリで見たので、始まってしばらくして、えっ!、と思うことにな . . . 本文を読む
これはホラーではない。そこを期待したら肩すかしを食う。だが、そうじゃないところでは、これはとんでもなく怖い映画なのだ。描かれるのは、どこにでもあるような日常のスケッチである。ある夫婦の出会いから結婚、出産、育児の数年間が描かれる。イクメン・パパは他者からは素敵な旦那さん、と見られる。ブログの育児日記も好調だ。だが、現実はそうではない。妻夫木聡演じるこの夫が最初の主人公だ。妻は黒木華 . . . 本文を読む
今回もとても胸に痛い話ばかりで、息苦しい。ここにいる人たちはみんなギリギリで生きている。高校生だけではなく、大人もいる。みんな同じだ。どこにいても、何をしていても、幸福なことばかりではない。どこかに幸せな場所があって、そこで何不自由なく暮らしている、わけではない。どこにいても、誰といても、不安と孤独はすぐそこにあるから、それに気付かないふりして、やりすごすだけ。
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なんと4週間のロングランである。12月1日からクリスマスイヴの24日まで上演が続く。大阪の小劇場では、ほとんどあり得ないことだろう。しかも、タイトルにあるように3人芝居だ。だけど、3人がそれぞれ9役を演じる。同時進行で9組の男女が、クライマックスであるイヴの夜に向かって突き進んでいく。とてもよく出来た作為的な台本である。複雑に絡み合った異質なものも多々ある様々なドラマが、同じ3人に . . . 本文を読む
このタイトルには少し抵抗がある。内容にマッチしない気がするのだ。大阪弁のこの言葉は確かにこの芝居全体を象徴するわけだが、お話全体の中でこの言葉が生きていないから、浮ついた言葉に思える。いろんなことがあるけれど、彼女の(もちろん、主人公である与謝野晶子)想いをそこに集約するだけのものとして、この言葉が芝居の中で描き切れてない。彼女のわがままで個人的な想いが作品全体を覆うのならばこれで . . . 本文を読む
久々にホラー映画を見た。昔は劇場公開されるホラー映画ならすべて見ていたほどのマニアだったのだが、(というか、劇場公開されるホラー映画の数が知れていたから、見ることが出来たのだろう)今では、当時よりもさらに少ないにも関わらず、見ない。だって、見てもつまらないからだ。時間の無駄はしたくない。それに劇場公開は少ないけど、DVDでならすさまじい量の凡百のホラー映画が公開されている。その棚の前に立つだけでげ . . . 本文を読む
1909年。今のソウル。京城。ある日本人一家の1日。何でもない会話の中から彼らの置かれている今が見えてくる。そして、日韓併合直前の朝鮮の気分も、ほんの少し見え隠れしてくる。平田オリザの傑作シリーズの第1作。今まで何度か見ているけれども、久しぶりの再演を見て、改めてその完成度の高さに驚く。今から30年近く前に書かれた作品なのである。
二十代の若い作家がこういう広い視野か . . . 本文を読む
寺田夢酔7年ぶりの新作。満を持しての新作のはずなのだが、そこには気負いはない。それどころかとても軽やかなタッチでこのミステリーに挑んでいる。前作『オー・マイ・リョーマ』も前回の再演(何度となく再演を繰り返している)より軽めの作品に仕上げていたけど、今回の新作はそれ以上にフットワークは軽い。主人公は寺田自らが演じる柳田国男なのだが、竜馬の時と同じように、演出を兼ねる彼は舞台にはほとんど登場しない。要 . . . 本文を読む
この冬一番大作映画で、唯一お正月映画らしい作品を見た。今年の12月公開の映画で、この映画以外に「お正月映画」だと思わせる作品はない。今の時代、お正月映画という概念がなくなってしまったのか、と改めて思わされる。いろんなものへの価値観が変貌していく。世の中がどんどんつまらなくなる。みんなが楽しめるイベントがなくなり、マニアのためのものだけが、突出する。わかる人だけわかればいい、そんなふうな時代になって . . . 本文を読む
2014年に上演した作品を4年ぶりに再演した作品。前回は見ていないので、今回初めて接したのだがこれは衝撃的な秀作。3人の女の子たちの痛みと向き合う。彼女たちがウリをしながら、何を手にしたのか。ファンタジーのようなお話の展開の中から悪夢のようなお話が顔を出す。いつもの場所に突然現れた建物の中に導かれた彼女たちはそこで何を見つめることになるのか。
ここにあるのは、これまでの自分の痛みと向き合い、そこ . . . 本文を読む