習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ローマの教室で』

2015-10-21 21:13:56 | 映画
3人の高校の先生のお話だ。学校は荒れている。そんな高校に臨時教師として赴任した熱血漢の青年(たぶん、まだ20代)と、定年間際(60過ぎか)でやる気のない老教師との話。ふたりを対比させながら描くのではない。それぞれの、別々のお話を並行して描く。そこに、無力感にさいなまされている校長(50前後の女性校長)の話も描かれる。この3人。 彼らがそれぞれある生徒とのお話を通して、変わっていく姿が描かれる。 . . . 本文を読む
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彩瀬まる『桜の下で待っている』

2015-10-21 21:11:31 | その他
来月修学旅行で東北に行く。今回の修学旅行は僕にとって初めての観光型の旅行だ。今まで、修学旅行には10回は行ってるけど、こんなふうな観光を主体にしたものは一度もなかった。融合型や、定住型なら、あるけど、全部観光なんて、なかった。そういえば、僕が高校生だった時、修学旅行は完全観光型だったから、それ以来ということになる。 しかも、今回の目的は震災学習だ。結構プランとしてポピュラーになっているのかもし . . . 本文を読む
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吉野万里子『空色バウムクーヘン』

2015-10-21 21:09:55 | その他
とうとうこういうのが出てきたか、と感心する。ありとあらゆるスポーツもの小説を読んできたけど(うそ、です。でも、かなりの小説を読んだ)これはないわ、と思う。思わず偏見から読むのをやめようか、と思ったくらいだ。でも、読んでよかった。作者の意図通りだ。女子がウエイトリフティングなんて、そんな差別と偏見をきっと誰もが抱く。だが、どんなスポーツでも同じだ。一生懸命している女の子たちはキラキラしている。(とい . . . 本文を読む
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遊劇体『鳥笛、公孫樹下』

2015-10-20 23:01:57 | 演劇
キタモトさんによる〈泉鏡花オリジナル戯曲全作品上演シリーズ〉の第10作。なんと10作なのだ。最初は本当に全戯曲上演なんて、可能なのかと信じられなかったけど、今では、もうあとわずかなのか、とそちらが、信じられない。確信を持ってキタモトさんは本当にやってしまう。カウントダウンに入ったのだ。不勉強にも、こんなにもたくさんの戯曲を鏡花が書いていたなんて、知らなかった。毎回驚かされる。それは、どちらかとい . . . 本文を読む
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『屍者の帝国』

2015-10-20 23:01:16 | 映画
これはすごいスケールの映画だ。アニメーションだからできる、というと、それまでだが、こんなにも志の高いアニメ映画はなかなかない。だいたい、この企画自身が凄すぎた。伊藤計劃の3作品を一挙に映画化するという企画を知ったとき、これはオムニバスなのか、と思った。でも、短編として作れるような小説じゃないし、と手にしたチラシをじっくり見た。そうなのだ、3作品を同時に紹介する豪華なチラシが、確か、この夏くらいに . . . 本文を読む
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『バクマン。』

2015-10-20 22:57:42 | 映画
生まれてこのかた、ジャンプを読んだことがない。というか、ジャンプだけではなく、週刊マンガ誌というものを手にしたことはない。いや、手にしたくらいのことはあるけど、1冊まるごとを読んだことがない。(少女マンガ誌も含めて)僕はあまり、マンガは好きではない。しかも、こま切れを読むなんて、面倒なことはしたくはないし。つげ義春や林静一は好きだった。高校のころはガロは読んでいたけど、その後、マンガはほとんど読 . . . 本文を読む
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『リトル・フォレスト 冬・春』

2015-10-15 20:00:56 | 映画
いちばん見たかった映画だ。2月に劇場公開された。DVDは6月にレンタルされた。すぐにでも見たかったけど、待つことにした。最近は2部作ばやりの映画界で、この作品もまた2部作仕立である。だが、ほかの作品とは少し違う。お話を引き延ばして興行を考えた作品ではない。2部作としてでなくては、成立しない作品なのだ。もともと、これは4部作である。ちゃんと4本は独立した作品として作られてある。しかし、上映形態を考 . . . 本文を読む
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劇団ショウダウン『月下人魚 ‘15』

2015-10-15 19:59:31 | 演劇
初演から4年振りくらいになるのか、と思ったが、なんと3年半だという。この作品を見たのが、僕がショウダウンとの出会いで、それ以降、ほぼすべての作品を見せてもらっている。林遊眠の一人芝居をベースとする今のスタイルが確立したのもこの作品からである。 久しぶりにこれを見て、こんなにもシンプルな作品だったことに、驚きを禁じ得ない。上演時間なんて80分である。その後、連打された作品はどんどん進化していった . . . 本文を読む
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空の驛舎『一握の夢』

2015-10-15 19:52:25 | 演劇
3話からなるオムニバスだ。「北村想が深津篤史に贈った短編戯曲」の上演というのがきっかけになった時点でこの作品の方向性が決まったのだろう。演出を依頼された空ノ驛舎はこの『human lost』という作品を核に据えて、深津氏追悼作品としてこの短編集を上演する。 冒頭の中村賢司作品『朝顔』はその方向性を明確にした。あまりにストレートすぎて、胸に痛い。これは深津さんのことにしか、見えない。最初にこれを . . . 本文を読む
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『罪の余白』

2015-10-15 19:47:40 | 映画
「映画史上最も危険な対決」というコピー通りに映画を作って欲しかった。期待させた分がっかりは大きい。心理学者が悪魔のような女子高生に弄ばれる、という図式は面白い。だが、あまりに内野聖陽がバカすぎて、途中からついていけなくなる。女子高生である吉本実憂も、あまり賢そうには描かれてない。それなら、それでいいのだ。そういう映画として作ればいい。だが、そうはならないからまずい。だいたいそれならこの映画に「心 . . . 本文を読む
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『ドロ-ン・オブ・ウォー』

2015-10-15 19:42:55 | 映画
これは従来のよくある戦争映画ではない。戦場は一切出てこない。21世紀の戦争は戦場に行かなくても出来る。ドローンを使い遠隔操作でアメリカにいながら、スィッチひとつでアフガンを攻撃できる。そういう恐怖を描いた映画なのだが、攻撃される側のドラマは一切ない。TVゲーム感覚で殺戮する米兵の心の闇を描く。アメリカ映画のパターンだ。いつも、自分たちが被害者顔する。70年代から80年代にかけてたくさん作られた「ベ . . . 本文を読む
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青年団『この生は受け入れがたし』

2015-10-15 19:41:59 | 演劇
96年の作品なのだが、今回で3度目の再演となる(らしい)。「平田オリザ演劇展 vol.5」の1作として上演された。いつもながらの平田オリザの世界で、安心して見ていられる。70分の中編作品なのだが、いつもの長編と変わりない。寄生虫の研究をする大学の研究室を舞台にして、東京からここにやってきた研究者とその妻。彼らがこの研究室のメンバーと過ごすほんの一時が描かれる。 ある日の朝、研究室を訪れた妻。夫 . . . 本文を読む
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伏兵コード『遠浅』

2015-10-12 22:09:59 | 演劇
今回の伏兵コードは今までの作品とはまるで肌触りが違う。主人公は真理。主人公の名前が自分の名前で、自分をモデルにしているのは、今までだって同じだけど、そこにとどまらない覚悟がここにはある。彼女と父親との確執が描かれるのも、今までの彼女の作品と同じだ。しかし、今回の父親は優しい。真理もまた、父親に対して優しい。それはいつもの激しいドラマとの大きな違いになる。 父親役として蟷螂襲を持ってきたからには、 . . . 本文を読む
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劇団ショウダウン『メビウス ’15』

2015-10-12 21:50:42 | 演劇
今回の『メビウス』は、Aプロは小野村優×小出太一、Bプロは宮島めぐみ×佐竹仁、という2ヴァージョンで上演された。初演はもちろん林遊眠(と、成瀬トモヒロ)。彼女が演じなくても、ちゃんと『メビウス』になる、という当然のことを証明するための公演だ。少し、ドキドキする。ほんとうに、そうなっているのか。林遊眠じゃなくても、ショウダウンなのか、と。 もちろん、演出はナツメクニオだし、安心して見ていられる作品 . . . 本文を読む
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コンブリ団『ブラックホールのそこ』

2015-10-07 19:38:21 | 演劇
「そこ」は指示語としての「そこ」でもあるが、「底」でもある。この作品はそういう二重構造が随所に描かれる。いや、その繰り返しである。いたるところ、そればかり。なんでもない母と娘の会話。会社の上司と部下の会話。同じ場所で、同じ時間にかわされたとりとめもない会話が2つ。同時進行であるはずのそれらが、順に描かれる。吹き抜けとなった巨大ショッピングモールの共有スペース。今では、どこにでも見られる場所だ。明る . . . 本文を読む
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