習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

D3(ディーキューブ)『さくらぼし』

2009-04-19 20:23:39 | 演劇
 決して上手い芝居ではない。と、いうか下手である。でも、この芝居を作りたいという作者(作、演出は高木啓介さん)の気持ちはしっかり伝わってくる。この作品を通して見せたかったものがある。それを全力で伝えようとする。相変わらず(昨年彼らの芝居を初めて見たのだが、長いし、しつこいしたまらなかった)くどいシーンも多いし、説明過多だし、段取りは悪い。見せ方も拙い。見なくてもわかるシーンとか、あまりにわかりきっ . . . 本文を読む
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ゲキバコ!『ねことけんじゅう』

2009-04-19 19:41:07 | 演劇
 閉ざされた空間の中に2人の男女。1匹の猫。雨の夜。戦争の足音。このシチュエーションの中で、緊張感をどこまで持続できるのか。それが今回の課題だ。お話を見せるのではなく、状況を提示し、そこで生じる緊迫したドラマを見せる。2人の関係性を説明しない。不要だ。ちょっと考えればそんなこといくらでも察することは充分可能だからだ。  身分違いの男と女。女は1匹の猫のために男に身を任そうとする。男はギリギリのと . . . 本文を読む
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『ジェリー・フィッシュ』

2009-04-19 18:33:05 | 映画
 見終えたとき、あまりのあっけなさにちょっと呆然とした。82分という短い上映時間のなかで、3つのお話が微妙に交錯したりしなかったり。しかも3つの話の主人公の周辺の人物のエピソードも重要な要素として語られるから、いったいどれだけの人々の群像劇やら、混乱しそうになる。壮大なお話ではないから、あっけないくらいにたよりない。様々なエピソードが形作るもののはかなさが、この映画の魅力なのだが、あまりの淡さにや . . . 本文を読む
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万城目学『鴨川ホルモー』

2009-04-17 21:53:29 | その他
 来週くらいに映画を見るから、それから書こうと思ったけど、別に映画と小説は別個だし、映画の印象と絡めるつもりもないからさっさと書いておこう。初めて万城目さんの小説を読む。『鹿男あおによし』や『プリンセストヨトミ』とか避けていたわけではない。なんとなく【森見登美彦の偽者】みたいな印象が僕にはあって、あまり食指がそそられなかったのだ。  森見氏の新刊『恋文の技術』を読んだ後、偶然読む本がなくなった瞬 . . . 本文を読む
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東直子『ゆずゆずり』

2009-04-17 21:35:02 | その他
 東直子さんの小説は淡い。輪郭さえおぼろだ。この小説だってそうだ。主人公の作家が同居している3人との関係が見えない。説明しないからだ。彼女はそんなんなことどうでもいいことだ、と思ってる。たぶん。  仮の家での生活が続き、でもいつまでもこのままではいけないと、新しい家を購入するのだが、その辺の事情もわからない。これも説明がないからだ。  なんでもない時間の積み重ねがここにはある。エッセイのような . . . 本文を読む
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西牟田靖『誰も国境を知らない』

2009-04-17 19:52:18 | その他
 日本は海に囲まれた国だ。国内に国境線はない。だから、普段は隣接する国を意識することはない。西牟田靖さんが旅したこの国境の島のレポートは、普段は考えもしない外国と日本というものを考えさせられる。と、言っても自分が住んでいる大阪は国境の島とはほど遠い。あくまでもイメージでしか見えないものを西牟田さんが自分の目と足で体験してきてくれるのを書物を通して追体験するのだが。竹島や小笠原諸島、北方領土を描いた . . . 本文を読む
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『グラン・トリノ』

2009-04-17 18:54:56 | 映画
 単純な話だと思う。ことさら凄いと、これを持ち上げるつもりはない。それどころか、あっけなさ過ぎて拍子抜けしたくらいだ。盛り上げるような手続きは一切しない。淡白すぎるくらいだ。だが、老境に達したイーストウッドが人生の最期の映画としてこの作品を選んだ(かもしれない)気持ちはなんだかとてもよくわかる。気がする。彼のことだから、まだ主役を張ってしまうかもしれない。もうすぐ80歳になるというのに、どうしてこ . . . 本文を読む
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Axle『BANANA FISH』

2009-04-15 20:58:10 | 演劇
3時間に及ぶ大作である。だが、話の展開させ方がまずくて乗り切れない。こういう中劇場(シアタードラマシティ)での公演は見せ方が難しい。客席の遠さが作品を、しいてはドラマ自体をも遠いものにしてしまう。この空間を作品の力にしなくては成立しないのだが出来ていない。ここでは今回のように動きのあまりないお話主体の芝居はしんどい。それを無理して派手に見せようとしたのだが、アクションシーンも単調になり、徐々に退 . . . 本文を読む
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『GOEMON』

2009-04-14 22:57:31 | 映画
 『CASSHERN』を見た時は、映画の出来にがっかりさせられたが、彼の遣り方は決して間違ってはいなかった。あれだけのビジュアルを駆使して奇跡の映像体験を観客に提示することが出来たのだ。なのに玉砕してしまったのは、ストーリーの展開させ方にある。オリジナルストーリーは問題ない。あの世界観を見事に映像化した手腕は買う。だがあの世界を突き動かしていくだけの台本のまとまりに欠いたということが失敗の原因だ。 . . . 本文を読む
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『クローズZERO Ⅱ』

2009-04-13 21:32:19 | 映画
 前作を見た時、ただひたすら喧嘩ばかりしている映画に呆れた。なんだこれ、話ないじゃん、と思った。同時期公開の同じようなタイプの映画である『ワルボロ』のほうが面白いんじゃないか、なんて思ったのが、あの時の正直な感想だ。  だが、見終えたときの清々しさがなんだか気になった。こんな内容で、あんな映画なのに、である。暗い話で、血が吹き出て、殴り合うばかりで、ありえない、と思った。ここは無法地帯かよ、と思 . . . 本文を読む
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『草原の女』

2009-04-11 09:07:13 | 映画
 『胡同の理髪師』のハスチョロー監督のデビュー作。冬のモンゴルの草原は見渡す限りの雪景色である。そんな中で、羊の世話をして暮らす母と息子。彼女たちのところにある日、ひとりの男がやってくる。男は羊番として雇ってもらえないかと言う。氏素性のわからない流れ者を雇おうとするものは誰もいない。彼はここのパオを建てて、生活する。母子は徐々に彼に心を開いていく。山田洋次の『遥かなる山の呼び声』を想起させるなつか . . . 本文を読む
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森見登美彦『恋文の技術』

2009-04-11 08:40:28 | その他
 このおちょくったような手法は森見さんのテレなのか、それともこの人はこういう遣り方でしか、物事を見つめることが出来ないのか。本気なのかふざけているのか。(まぁ、そんなこと、どうでもいいことなのだが)よくわからない。ただ、いつもながら、一気に読ませてしまう。全く退屈させない。おもしろい。あきれることはあっても、あきることはない。スタイリッシュと呼ぶのはなんだかはばかられるが、実に憎たらしいまでものう . . . 本文を読む
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劇団 太陽族『足跡の中から明日を』

2009-04-11 07:46:13 | 演劇
 これには驚いた。こんなにもストレートな作品に仕上がっているなんて思いもしなかったからだ。作、演出の岩崎正裕さんは中島陸郎さんに対して直球勝負を試みる。見ていて気持ちのいい作品だ。中島さんを象徴的に描き、ドラマ自体も韜晦させながら、彼の精神の一番ピュアな部分を切り取って見せたキタモトさん(DIVEプロデュース『中島陸郎を演劇する』)とは対局をいく見せ方で中島さんの生き方に迫る。彼が何を為し、あるい . . . 本文を読む
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『雲南の花嫁』

2009-04-09 22:42:10 | 映画
 『ルオマの初恋』のチアン・チアルイ監督の新作。前作にひき続いて雲南を舞台にした作品だが前作とは全くタッチが違うのに驚く。今回はコメディータッチで雲南の風習である帰家を描く。雲南では結婚した男女は3年間同居しないで別々に暮らす。その間接触も禁止だ。せっかく結婚したのに酷な話だが、そうすることでお互いの愛情を確かめ合うのだろうか。  本編の主人公のおてんば娘は、そんな風習がお気に召さない。彼女は婚 . . . 本文を読む
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『鑑識 米沢守の事件簿』

2009-04-06 21:36:17 | 映画
 こういうプログラム・ピクチャーが作られなくなって久しい。昨年の大ヒット作『相棒』もTV局製作による鳴り物入り大作というよりも昔、東映が安易に作ってきたTVのヒット作の安直映画化作品という印象が強い。わかりやすく言うと『あぶない刑事』シリーズのようなものだ。昔は本当にこういうのがたくさん作られていた。そして、それは本当につまらない凡作で、2本立で、何の期待もしないで見る消化試合のような映画だった。 . . . 本文を読む
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